アホウと呼ばれた子と無銘の観音菩薩像

澄ノ字 蒼

1章 原始界

タヌキ草ぐさの歌

ねずみがちゅうちゅう 

念仏を唱え


ウシがもうもう    

天の頂、目指し


トラが、がおっと   

地の果てまで放浪し


兎がきゅーと

人の世の儚さを知る


竜がごうっと

火の烈しさ、心を燃やし


蛇がシャーと

水の円月、惑わず、を知り


馬がぶおーと

風のごとく自由になり


羊がめえと

土のかぐわしきを、知る


猿がキーキーと

生者の国々を放浪し


鳥がピーチク

死者の都に身を置き 


犬がわんっと

人の不思議を分かち合い


猪がぶーと

生の素晴らしさを唄う

     

タヌキは筆でさらさら 

天地人、創世記を書き記す


タヌキ草ぐさの歌

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