第21話 アラクネさんと僕②
「ロボさんすごい音がしましたけど、何かあったんですか?」
「はい、魔物の襲撃がありましたので撃退しました」
ロボさんは6本の筒から煙を出している大きな銃を異次元ポッケにしまいながら言った。
そう言えばロボさん、こんなの持ってたなと懐かしく思っていると。
「マスター、魔物は死んでません。事情も聴かずに殺すのはさすがにどうかと思ったので、脚を数本落として無力化させました」
なら、とりあえず家まで運んで事情を聞いてみようということになった。
どうやら。魔物は蜘蛛のようだった。ようだったというのは足が4本しかないからだ。
「ロボさんやりすぎじゃないかな……」
「……私も少し反省しているところです。あれは思ったより強力でしたね。弾も一瞬でなくなってしまいましたし」
あれ、1000発くらいあったような気がしたんだけど、そんなに少なかったっけ……。
まあ、いいか。それよりも今は蜘蛛さんを助けないと。
幸い、蜘蛛さんは命に別状はなく。目を覚ますと自身を糸でぐるぐる巻きにした。
どうやら次の脱皮で脚は元通りになるそうだ。
「先ほどは失礼しました。でももの凄い勢いでこちらに襲い掛かってきましたね。あれでは反撃されても仕方がないですよ」
「そ、そうだったかしら、うっかりしてたわ」
(おのれ、小娘、覚えてなさい。傷が治ったら皆殺しにしてやる)
こうしてロボさんと僕は蜘蛛さんの看病を始めた。
看病と言っても蜘蛛さんは糸で繭のような状態になっており顔だけ出している状態なので。口に食事を運ぶだけだった。
「あら、これおいしい、何の食材かしら」
蜘蛛さんは一口食べると僕に聞いてきた。
「さあ、何でしょうか、ロボさんは魔物の料理も得意だそうで、魔力的な栄養がいっぱいの素材を煮込んだと言ってました」
僕は特に何の材料かは聞かなかった。聞かない方がいいですよと言ってたので僕も聞かないことにしたのだ。
「そう、ありがとう」
(馬鹿なやつら、こんな魔力が充実したものを私に与えるとは。今に見てなさい、いずれあなた達も食べてあげるわ)
そうして蜘蛛さんは、残さずに食事を済ますと眠りについた。
そうして僕たちは、あくる日もあくる日も蜘蛛さんに食事を与え続けた。
――ある日のこと。
「ちょっと、あなた、いつも同じ服着てるじゃない。女として恥ずかしいと思わないの?」
「蜘蛛に言われてもなにか? といった感想しかないですね。そもそもあなたは何も着てないじゃないですか」
「私はこれでいいのよ、それに蜘蛛が服着たらおかしいじゃない」
「その理屈なら私はメイド型ロボットなので他の服をきたらおかしいでしょう」
なにやらすっかり仲良しになっているようで安心した。あと蜘蛛さんは女性だったみたいだ。
彼女はどうやら魔力のある人間を食べるために僕たちを襲ったらしく。僕たちについて話したあとはそのことを謝罪しており、すっかり仲良くなったのだ。
蜘蛛さんはすっかり回復し無事に外へ出たのですが。しばらくすると必ずここに帰ってくるようになりました。
すっかり居ついてしまいましたが。僕たちとしてもそれは嬉しいので特に問題ではなかったのですが。
ある日。彼女は僕たちに言いました。
子供ができたらしいのです。
それで出来ればここで産卵したいとのことでした。
僕は悩みました。なんせ子供の世話なんかしたことがないし迷惑にならないかなと。
しかしロボさんは了承しました。そうかロボさんはそういう知識もあるだろうし、なら大丈夫かなと受け入れました。
それでもやはり僕たちは蜘蛛の魔物の産卵については無知だったので改めて聞いて驚きました。
曰く、生まれてすぐに子供どおしで共食いをするらしいのです。
ちなみにそれはまだ知性が劣っている子供の間だけとのことで、蜘蛛さんも物心ついたときはそうしていたらしいのです。
知性を獲得した後はそのようなことはないそうですが。その頃には個体数も減って同族に遭うことは滅多にないそうです。
僕はそれを聞くと可哀そうな気もしましたが。それが当たり前の世界だってあるんだろうなと思うことにしました。
他人の常識を僕の常識で否定してはいけないのでは、とか考えていると。
「共食いは必ず必要なのですか? 種族として必ず行わないといけない理由でもあるのでしょうか」
ロボさんも同じ疑問があったのか蜘蛛さんに質問しました。
「いえ、そういう理由は聞いたことがないの。でも我々はもう魔王様の庇護下にない。人間に狩られるだけの種族になってしまった。
だから口減らしの意味でもあり。生存競争に勝つためでもある。
そうね、言ってしまえば単純に食料がないのが問題なだけなのよ」
すこし、しんとしてしまった。
「なら、食べ物を用意すればいいのですね。マスターこれから私たちはしばらく外で狩りをします」
ロボさんはこう言った。産卵から孵化するまでの間に蜘蛛さんとロボさんが協力して狩りをしてくるとのことだった。
僕はその間にできるだけ洞窟を広げて子育てに必要な空間を確保することにした。蜘蛛さんは子だくさんなのだ。
そうして僕たちは蜘蛛さんの子育てを手伝うことになった。
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