第6話

 幾度となく殺され、復活し終えた私は今までとは違う世界を感じていた。

 自分から感じられる力がまるで違う。なんだろう筋繊維の一本一本を感じる。


「すごい…」


 試しに近くの木に近づき殴る。

 木はメシッと音を立てて折れた。


「「………………」」


 力を使い果たし地面に突っ伏しているリディアが絶句しているが、有守は自分でも驚いていた。もはや筋肉の範疇では無い。


「やったー?これで多分戦える。えっと、あとは『ステータスオープン』」


 気になることがある。痛覚無効と体型維持だ。これらを取得したと聞いた途端、急に楽になったのを覚えている。



《痛覚無効》

 ・一定以上感じる痛覚を無効化する。


《体型維持》

 ・体の成長または、質量の増減、肉体構造の変化に伴う外形の変化が起こらなくなる。


 

 ほほう。私は自分の頬をつねってみる。すると若干いたい。ということはある程度の感覚は変わらず、強い痛みに対してのみ発動するといったところか。

 中々便利ではないか。


 けれど体型維持の欄を見て私は絶望した。


「これは…身長が伸びないっっ…」


 きっとゴリゴリのマッチョになっても、豚のように太っても体型が変わらないのだろう。それはいい。


「私の身長を伸ばせっ」


 おぉ神よ。哀れな子羊を見放すのですか?私は良い子です。どうにかしてください。


 私は強く強く祈ったが何も起こらなかった。


「アリス、どうしたの」


 リディアは未だ地面に転がっている。


「神に見放されたのさ」


 リディアの頭に?が浮かぶ。


「リディアは大丈夫?」


「ご覧の通り。誰かさんのせいでしばらく動けないよ」


「あはは。ごめん。」


「で、強くなったんだよね。まさか本当に筋肉ついたの?」


「体感ではめちゃくちゃ」


 私は自信を持って答える。

 そう言うとリディアは少し考える素振りを見せ、筋肉、とつぶやくと


「じゃあアリス。僕を背負ってあの山の麓まで走って。荷物もよろしく」


 そう言って彼女は進行方向の山を指さした。


 そこに何があるのだろうか。

 以前の私だったら、10キロはありそうなところなんか行こうともしなかっただろうが、今はそんなことは朝飯前と思えたので2つ返事で了承した。もう体を動かしたくてしょうがなかった。


「もう出発していい?」


「ん?いいけどなんでそんなに目が輝いてるの?」


 と、言っているリディアを私は担ぎ、荷物をまとめ始めた。


「ちょちょちょちょ」


 なんかリディアが騒がしいが無視して全力で荷造りする。


 荷物は数分でまとまった。担がれたままのリディアがまだ何か言っているがこれも無視して私は地面を強く蹴った。



 タッ  タッ タッタッタッタッタッタッタ




 ー気持ちいいーー


 それは今まで感じたことのない自由だった。その自由はジャンプすれば太陽に届きそうな可能性に満ち溢れていて、私の胸を高鳴らせた。思わず笑みが溢れる。


 のどかな自然を尻目に私は風になって走った。


 丘を超え、木々の間を駆け抜ける。そこらの動物もみんなのろまに見えた。




 気がつけばもう山の麓についていて辺りを見渡すとレンガ造りの家が見えた。


「リディアー、あれー?」


「う゛? う゛んん」


「ついたよ」


 一見、三匹の子ぶたにでてきそうな家。変わった所も特に無いが、庭の空いたスペースがやけに広い気がした。

 扉の前で私はリディアを下ろす。


「ここは誰の家なの?リディアの?」


 私が聞くと彼女は息も絶え絶えに答えた。


「はぁ、、違う。 ゴリラのすみか」


「ゴリラ?」


 よくわからない。すると背後に殺気のようなものを感じ、声が聞こえた。


「誰がゴリラですって?人を獣みたいに紹介してくれて。この猫野郎め」


 後ろを振り向くとそこには白いバーニガールのマッチョなおじさんがいた。頭からモフモフした耳が生えている。それは本物のようだった。


 私が驚いているとマッチョが口を開いた。


「私は兎のカイよ。リディアとは腐れ縁よ。やろしくね♡」


 と、ばっちりウインクを決めてきた。キャラ濃いいいいいぃぃぃぃい……。


 私は開いた口と目が閉まらなかった。







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