第11話 次作ノンフィクションに

 この事件のルポですが、現在企画中のノンフィクションの一節に取込むことにいたしました。


 今から32年前の事件で、それから10年後に生まれた姪が当時の私と同じ年齢になる前の時の流れがこの間あったわけですが、その間に、不登校に関する社会の意識は大きく変わってしまいました。

 当時まだ、登校拒否というえも言われぬレッテルを張られていたこの事象。

 この事件の少しあとくらいから、徐々に「不登校」という名前に。

 これは単に「学校に行かない(行けない)」という事象にとどまらず、その周辺にある諸問題をも含めて、総合的に解決していかねばならぬ問題だったのです。


 不登校と一口に言っても、個々の事例の背景にある事情は様々です。


 学校への不適合、教師や他の児童・生徒との不調和、さらには貧困や家庭内の不和など家庭の事情、義務教育を過ぎた段階では高校の中退、不本意な進路、そしていわゆる非行・・・。


 これは個々の青少年の個々の事情の問題ではなく、社会全体として対応策を考えていく必要のあるものだったし、今もそうです。

 そのことに当時気付いていた人は、存外少なかった。

 それゆえに、さまざまな悲喜劇があったのも事実です。


 社会が変化を迎えようとしているそんな矢先、その動きに対する「反動」のようなものや、「あだ花」ともいうべき出来事は、多々あった。その中でも社会にセンセーショナルな影響を与えた事件の一つが、この事件でした。


 そういう事情を鑑み、現在企画中のノンフィクションの一節に、この事件の記憶に係る部分を紹介しようと考えている次第です。

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