第23話 前へ

ヴェルカ達の目の前に、神龍が降り立った。

「嘘だろ…」とジャンは言葉を漏らした。

ヴェルカ達の前に災厄級の敵、神龍がヴェルカ達の前に立ち塞がる…


水色と金色が交互に光り輝く鱗を纏った災厄級の神龍は、ヴェルカ達の前に立ち塞がった。そして、ガリアに向かって神龍が巨大な炎のブレスを吐き出した。

「っ。私狙いかよ⁉︎」

ガリアは俊敏に右に避けた。

「戦うぞ‼︎」

ジャンは檄を飛ばし、神龍の意識がガリアに向いていると見抜いて神龍に突撃し、切り掛かった。

「よくもリーシアをやりやがったな‼︎ 喰らえ‼︎ 蛇剣、流刺‼︎」

カン‼︎という甲高い音と共に、ジャンは弾き飛ばされた。

「嘘だろ…硬すぎる…」

ジャンの剣が当たった場所には、傷一つ付いていなかった。それどころか、剣と共に弾き飛ばされる始末だった。

「ジャンの剣が駄目ならこれならどうだ‼︎」

ヴェルカが杖を構えた。

「火炎、炎槍‼︎」

炎の槍が神龍に向かって飛んでいった。

だが、神龍のすぐ側まで近づいたところで炎の槍が一瞬で消し飛んだ。

そして、神龍から水のブレスが飛んできた。

ジャンとヴェルカは素早く避けたが、後方にいたソルトとセルカが被弾してしまった。

「ソルト、セルカ‼︎ くっそ。うそだろ…わての炎槍も効かないんか…」

「ったく、どうすりゃいいってんだ。」

「ジャン、ヴェルカ。前からどいて‼︎」

後ろからガリアが走ってきた。

「ガリア‼︎ どうする気だ⁉︎ 」

「んなもんこいつを倒すんだよ‼︎」

ガリアは神龍の前で飛び上がった。

「零雹、散れ、零散華‼︎」

ガリアの手のひらから、小さな氷の粒子と共に強烈な冷気が放たれて、それが神龍に突き当たり、神龍とそのの周囲を空気中の水分に至るまで凍りつかせた。そして5秒程経過すると、一瞬にして全ての氷が粒子状まで砕け散った。

神龍は、ガリア達の体が吹き飛ばす程の鳴き声を出した。

氷の粒子の煙から、神龍が姿を現した。

全ての氷が砕け散ったが、神龍は氷に覆われていただけで体の芯まで凍ってはいなかった為に、形を保っていた。だが、氷に覆われた際に表面の鱗が凍りつき、氷と共に砕け散った。

神龍はすぐに鱗を再生すると、滅茶苦茶に炎のブレスを吐き出し、ガリア達がそれに怯んだのを見て何処かへ飛び立って行った。

「なんとか勝った…のか?」

ジャンの言葉で、全員の緊張がすっと解け、へたっ…とその場で腰が抜け、座り込んだ。




ジパングの西方の山の中…


「ん…このアザはまだ消えてないな。だけど、次第に色が消えてきてるからもうしばらくすれば消えるさ。昨日2日分の塗り薬を渡しておくから、夜また塗ってくれ。」

「ありがとうございます。」

コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「カイ様、お時間が近づいてまいりました。」

「あぁ、もうそんな時間か。分かった、今行く。レノア、行こうか。」

「はい」

カイとレノアは、部屋を出て建物の外に出た。目の前には、ステージが用意されていた。

あんまりスピーチするのは好きではないんだが…まぁ、やるか…。カイはステージに立った。

ステージの前には沢山の亜人や獣人がいた。

カイが出てくると、歓声が起こった。

カイが腕を上げると、歓声が最高潮になり、ステージの真ん中にカイが着くと、歓声が静まった。

「ありがとう。ここは東の果ての島国、ジパングだ。あの忌まわしき土地の遥果てにある場所だ。奴らの生き残りが辿り着くことはない。もう君達は奴隷ではない。君達は自由だ。ルールを守って生活してくれ。」


スピーチを終えたカイは、宴のどんちゃん騒ぎの中、亜人や獣人達と飲み食いをし、夜が更けて酒に酔ってその場で眠りにつく人々が増え、宴で賑やかさがまだ少し残っている中、人知れずレノアと共にイシスに向かって旅立った…

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