#03 許さない

 やつを憎み続ける不毛で苦しくも長い刑務所生活。


 そんな中、重要な事を思い出した。あのタイムマシンが完成間近だった事を。そうだ。マシンは完成間近で、あとは実験を繰り返し、時間旅行の精度を上げていくばかりだったんだ。そんな折、3年という月日を、刑務所で過ごす事となった。


 つまり、


 やつが、タイムマシンを完成させるだけの時間が充分に在るという事だ。クソッ!


 カネを出してくれた共同研究者のやつが。利権の折半に難色を示した、やつがだ。


 そうだ。


 敢えて言うまでもないが、


 やはり、


 やつは裏切っていたのだ。


 そう確信した瞬間だった。


 もう今頃、自分でマシンを完成させ、企業なり、富裕層の個人なりへと売りつけているのではとさえ邪推する。もちろん自分一人でタイムマシンを作った事にしてだ。僕が監獄にいるから口を出せない事をいい事にだ。殺してやる。とさえ恨んだ。


 絶対に許さない。地獄へ落としてやる、お前はと。


 そして、


 お返しにお礼参りだと奮起して刑期を勤め上げる。


 苦しくも辛いソレは終わる。終わりが来る。雪がちらつく寒い日に出所する僕。誰も迎えに来ない。いや、迎えに来る人間などいない。結婚もしてないし、唯一、仲が良かったやつは裏切ったのだからだ。許さない、絶対にと、再び……。


 兎に角、


 共同研究者であったやつに会うべき時が来たのだ。


 対決するべき時が、だッ!


 お返しとしてのお礼参りするのを生きがいにも刑期を見事に務めきったのだから。


 当然の権利だと意気込み。


 そして、……僕は実に3年ぶりに自分の研究室に帰還した。


 やつはタイムマシンの利権を守る為、そこにいると踏んで。


 いや、いなかったら、それこそ、やつの自宅に押しかければいいだけの話だから。


 静かに玄関を開ける。殺してやる。


 と……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る