デマという名の殺人鬼
あがつま ゆい
第1話 享年21歳の女性の部屋
都内某所……大学にほど近いアパートの一室。
部屋の中にはわずか21歳の若さで亡くなった女子大生の遺体があった。警察官が彼女のサークルメンバーだと名乗る女性からの通報を受けやってきて、捜査が始まった。
「
死体が発見された時はまず「事件性」があるか無いかを確認する。
要は「他殺か否か、殺人事件か否か」を判定するのだが彼女の部屋には荒らされた形跡が一切なく、現金の入ったサイフや通帳など金目の物は全てそのまま置かれていた。
また死体にも目立った外傷や自殺及び他殺とみられる痕跡もないし何者かと争った形跡もなく、
さらには数日前から「風邪をひいた」として学校を休んでおり昨今の事情からして病死、特にコロナウイルスによるものという線が濃厚だ。
捜査に当たった警官たちもパッと見ておそらくは病死それもコロナ関連死だと思っていたが、彼女の部屋の中にあった大量の薬と謎の緑茶らしき飲料があったのが気がかりだった。
「この薬は何だ……? 英語で書かれてて海外用のものらしいけど」
「ああ、こいつはイベルメクチンだな。コロナに効くとかいうデマの代表格だよ。
いろんな論文や臨床試験では効果があると確認出来てはいない。って発表してるそうだが、いまだにコロナの特効薬だと信じてる奴は多いらしいよ。
本当は寄生虫用の薬なのにさ」
博識な警察官が同僚にそう説明する。いかにも「横流し品」を思わせるイベルメクチンの山だ。さらには……。
「何だこりゃ? KATEKIN緑茶? 見ないパッケージだなぁ」
明らかにパッケージデザインに金がかかってなさそうな、普通の人間は見ない「高カテキン」をうたい文句にした小規模製造業者のオリジナルの緑茶らしきペットボトルの山があった。
「ふーん。緑茶カテキンを濃縮、ねえ」
「ちょっと気になるがそれよりも事件性の有無を探すのが優先だな」
警察官は同僚にそう言って本来の仕事である事件性の有無にかかわる仕事に戻させる。
その後の調査で死亡した女子大生は新型コロナウイルスに感染していたこと、それに「ワクチンは『未接種』」であった事が分かった。
警察は「コロナウイルスによる肺炎およびそれによる呼吸不全」が原因で、そして医療現場の崩壊による「自宅療養という名の放置」により死亡したと結論づけて捜査を終えた。
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