15 約束を果たす時

 俺は記憶を取り戻した。俺の名前はユーイチ。だけど、ハンス・ハイルナーも俺の名前だ。だが、魔族に追い詰められている今はそのことばかり考えてはいられない。


 よし、考えろ! ツリーポイントは残り31pある。今やるべきなのはリルをこの町の外へ連れ出すこと。魔族やお父さん、いや、大賢者ライオットの目を盗んで逃げ出すには、やはりあれしかない!


 確か、あったはずだ。【知恵の樹】の《その他》で。


 31p

 1その他

 2空間把握(未解放︙解放2p)


 これ、空間系の魔法を解放するツリーなのではないか? 俺は空間把握を解放する。これは、自身の周りの空間にある存在や物を把握するというスキルのようだ。接近戦で役に立ちそうだ。


 29p

 1その他

 2空間把握

 3アイテムボックス小(未解放︙解放3p)[知力50以上]

 3空間移動[視界](未解放︙解放3p)[知力50以上]


 やっぱり出てきた。空間移動系スキル。ライオットが以前使っていたからあるとは思っていたけど。それにしてもアイテムボックスも空間移動も知力50以上が条件としてあるな。今の俺は知力63だから大丈夫だ。アイテムボックスも気になるが、今は空間移動だけを解放する。


 26p

 1その他

 2空間把握

 3アイテムボックス小(未解放︙解放3p)[知力50以上]

 3空間移動[視界]

 4空間移動[記憶](未解放︙解放5p)[知力100以上]


 空間移動[視界]は見えるところにワープする魔法のようだ。対して[記憶]の方は記憶にある場所にワープする魔法らしい。どっちも凄いな。そして、今とても役に立ちそうだ。


 早速俺は空間移動[視]を使って、フォゼット家の二階にあるリルの部屋へと、窓を通してワープする。


「えっ! は、ハンス?」

「リル。ここを出よう」


 俺はリルの手をとる。空間移動は体に触れる者で、行使者がワープさせる意思のある者も一緒に運べると説明書きがある。俺はリルの手を取って、窓から見える町の城壁へと再びワープする。


 景色が変わると同時に俺は頭が痛くなった。吐き気もする。なんだ?


「ここは? えっ、ハンス。大丈夫?」


 俺はステータスを確認する。毒にはなっていなかったが、魔力が枯渇していた。あと一回、この城壁の上から外の地面にワープしなければならない。どうする?


 俺は【生命の樹】を確認する。


 ツリーポイント26p

【生命の樹】

 1体力+3(未解放︙解放1p)

 1魔力+3

 2魔力+6

 3魔力+9

 4魔力+15

 5魔力+24(未解放︙解放5p)

 1攻撃力+1(未解放︙解放1p)

 1防御力+1(未解放︙解放1p)

 1知力+1(未解放︙解放1p)

 1精神力+1(未解放︙解放1p)

 1敏捷性+1(未解放︙解放1p)

 1幸運+1(未解放︙解放1p)

 1その他(未解放︙解放1p)


 今のままだと、ルナに乗って逃げれても、いずれライオットか魔族に追いつかれてしまう可能性がある。なら、いっそのこと。いや、待てよ。もしかしてあれができるのではないか? うん。できるな。よし。そうするか。


 魔力はエイコーンを倒して手に入れた魔力回復効果のある木の実もある。俺は頭痛に耐えながら、赤い実を食べつつステータスを操作していく。


「先ずは……魔力枯渇を、回復させなきゃだ……」


 俺は【生命の樹】の魔力を順次解放していく。


 ツリーポイント8p

【生命の樹】

 1魔力+3

 2魔力+6

 3魔力+9

 4魔力+15

 5魔力+24

 6魔力+39

 7魔力+63

 8魔力+102(未解放︙解放8p)


 木の実は食べ終えて、だいぶ魔力も回復したし、魔力の上限も増やしたので、これで足りるだろう。


 俺はルナを再度召喚した。リルは驚いているが気にしている余裕はない。俺は首を傾げて座っているルナに向かって告げる。


「強化! 知力、魔力、精神力!」


 これで、残り一分間は知力126になるから行けるはず。俺は空間移動[記憶]を解放する。


 3p

 1その他

 2空間把握

 3アイテムボックス小(未解放︙解放3p)

 3空間移動[視界]

 4空間移動[記憶](解放済み︙使用期限残り52秒)


 よし。時間もない。俺はルナを送還してから、戸惑うリルを抱き寄せた。そして唱える。


「空間移動!」








 目覚めると、キーンと頭痛がした。ここは? 目を開くと、見慣れた天井が視界に映る。ここは俺の、ハンス・ハイルナーの部屋だ。


 魔族とライオットから逃げてきたんだよな。あれからどうなったんだっけ。


 起きようとすると、何かが邪魔をした。温かくて柔らかく、そしてとても甘い香りのする何かが。


「ハン、ス?」


 可憐な声は凛々しかった。お姉ちゃん、いや、リルだった。そっか。俺、リルとの約束果たせたんだ。リルを囚えていたあの町から、あの家族から救えたんだ。


 俺はリルの晴れた日の空のように美しい瞳を見つめながら、その真っ白な髪を撫でてから、また微睡むのだった。





【第一章 始まりの町、囚われの姫】 ー完ー


 次章

【第二章 無能からの目覚め】




 ◆作者より◆


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