―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟 その異世界を巡る叙事詩――
EPIC
―ウェーヴ1―
チャプター-
---:「異質」
「――あぁ?」
〝
その空間は全方位が、見ていて気分の悪くなりそうな、不気味な色で覆われている。そして不気味な色合いの背景に支配された空間は、他に何もなかった。
地面も、壁も、天井も、それ以外の物も、本当に一切の物が存在しなかった。
そんな異質な空間に置かれた制刻の前に、突如、一人の人物が現れる。
作業服の上から研究衣を羽織るという、おかしな格好をした人物は、音も、気配も、何の前触れも無く、本当に突然そこに現れた。
「自由さん、久しぶり。元気にしてた?いきなりな話で申し訳ないんだけど、自由さんにお願いしたい事があるんだ」
突然現れたその人物は、制刻に向けて唐突に話し始める。
「一から全部を話すと長くなるから、要点だけ言うね。〝私達の世界〟に、〝別世界のヤツ等〟が殴り込みを企ててる。ふざけた話だと思うかもしれないけど、これは確かな事なんだ。で、そんな面白くない話が判明した以上、ただボケッと待ってる訳にはいかない」
その人物は異質な空間で、静かに発しながら背を向ける。
かと思いきや、次の瞬間に白衣を翻しながらくるりと身を回転させ、制刻の方を向いて、人差し指を突き立てた。
「そう、先手を打つ。自由さんには、先んじてその〝別世界〟に行ってもらいたい。そこで、その面白くない事を企ててる奴らを、そして企みそのものを潰して欲しいんだ」
薄気味悪い笑みを浮かべながら、その人物は話を続ける。
「ただ困った話、〝やつ等〟が具体的どう出るかはまだ不明瞭なんだ。こっちでも色々調べてるんだけど、尻尾はまだ掴めてない。だから最初、自由さんにはその世界の探索から始めてもらう事になるかな。向こうも広い世界だし、時間もまだ無いわけじゃない。自身で探索して、その眼で見つつ理解してもらった方がいいと思うしね」
人物は一人で勝手に合点がいったように頷く。
「その世界で活動を始めるのに適当な場所は、目星を付けてある。自由さんにはそこにまず降り立ってもらう。心配しないで、自由さん一人じゃない。周辺に居る方の中から、幾らかの人等を一緒に送り込ませてもらう。あ、選抜の基準は私の好みも入ってるけど。当面を凌ぐ分の必要品も一緒だよ。その人たちと一緒に、まずは色々探ってみて。具体的に何をすればいいか、糸口はその間に見えてくるはずだから。あ、私もそろそろ作業に戻らないと。じゃあ、頃合いを見てまた連絡させてもらうよ。くれぐれもお体には気をつけて――」
漠然とし過ぎていて全く要領の得ない、説明になっていない説明を終えた人物は、笑顔で別れの挨拶を述べる。
そして後ろ向きに歩き出し、不安定な空間の背景に、水に溶け込むように姿を消した。
やがて制刻の意識も遠退いてゆく――
― Heterogeneous ―
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