幕間

第七章 終

「さて、幕間は少し久しぶりだね。アメリカ核攻撃と本土空襲は一続きの話だと思ったからなんだが。


 さて、今回の豆知識は原子爆弾についてだ。原子爆弾の歴史についてちょっと説明しよう。


 世界で最初に原子爆弾の実用化に向けた研究を進めていたのはアメリカだ。オッペンハイマー博士が代表的だが、他にも多数の科学者がマンハッタン計画の名の下に集められ、かなり実現に近づいていた。だけどそれらの科学者は船魄の研究に駆り出されて、マンハッタン計画は事実上凍結され、実用化には至らなかった。


 マンハッタン計画では実用化に必要な相当なデータは既に得られていたので、アメリカの敗戦の後、日本、ソ連、ドイツがそれぞれデータと科学者を回収し、各自で核開発を進めることになる。アメリカにはデータだけは残されたものの、研究員の大半を失い、原子爆弾開発は大幅に遅延した。


 世界最初に原子爆弾を開発したのはドイツだった。どうやら第二次世界大戦の最中から親衛隊が極秘裏に原子爆弾に関する研究を行っていたらしくて、戦争が終わって物資の余裕ができたのと、アメリカの豊富な実験データを活かして、フォン・ヴァイツゼッカー博士率いるチームが1947年4月に世界初の原子爆弾を完成させたんだ。


 続いて原子爆弾を実用化したのはソ連だ。ドイツに遅れること僅か1年で、クルチャトフ博士率いるチームが初の核実験を成功させた。これはどうやらドイツに諜報員を送り込んで情報を盗んでいたらしいね。


 日本は遅れて1949年7月、陸海軍合同の支援の下に理化学研究所の仁科芳雄博士が中心となってようやく最初の核実験を成功させた。これには明治章を受章した湯川秀樹博士が大きく貢献したことも有名だね。ああ、明治賞っていうのは、人種差別の温床ということで廃止されたノーベル賞の後を継いだ賞だ。


 そしてアメリカは1950年になってようやく初の核実験を成功させた。なおオッペンハイマー博士はこの時点で反核に転じていて、計画を主導したのはフォン・ノイマン博士だった。


 かくして四大勢力はいずれも原子爆弾を保有することになった訳だけど、宇宙開発競争で首位を独走するドイツが大陸間弾道弾を大量に製造して原子爆弾を搭載しているせいで、核兵器の均衡はドイツに大きく傾いていると言われているね。


 もっとも、だからと言ってドイツが一方的に核攻撃ができるかというとそうでもなく、ソ連の戦略爆撃機ならドイツ全土を核攻撃することができるから、核抑止は機能しているとされている。


 さて、ではそろそろ次の話を始めよう。次の話は瑞鶴のちょっとしたわがままに付き合う話だ」

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