第2話 転移?

え…あれ、ここどこだ…?


気が付くと内野は奇妙な空間に居た。

壁と床が石レンガで出来ており、光源が壁の側面にある松のみなので薄暗い。

そして出入口らしき扉は、目の前にある木製の扉だけ。


何が何だか分からん…

取り敢えず…ここから出れば良いのか?


内野が立ち上がり扉に手を掛けようとした瞬間


バンッ!

「…あ、良かった!君たちが今日の新規プレイヤーだね!」


「わ!」


一人の男が妙な事を言いながら、勢い良く扉を開けて入ってきた。内野はいきなり扉が開いた事に驚いて思わず尻餅をつく。


「あ、ごめん!大丈夫!?」


「…は、はい…尻餅ついただけなので大じょ…」


大丈夫と言おうと思った瞬間、男の姿を見た内野は言葉が出なくなった。

扉から現れた男は奇妙な格好をしていたのだ。

茶髪でドラマに出演している俳優並に顔立ちが整っているが、胴には赤色の鎧、下半身は灰色の鎧を纏っている。それに右腕には金の盾の様な物をつけている。


…芸能人かコスプレイヤーか?

あ、もしかしてこの格好は何かの撮影のための衣装なのか。

そうなると…俺は飯の事を考えすぎてて、知らず知らずのうちに映画の撮影場所に迷い込んだって事か?

てか何で鎧の配色はそうなったんだ、まだ全身赤色の鎧の方が良かっただろ。



「あの…ここは…ど、どこですか…?」

「ヒィッ!」


内野がどういう状況なのか男に聞こうと思った瞬間

背後から急にかすれた声が聞こえ、内野はビックリして変な声を出す。


「あ、そ、そんなに驚かなくても…」


後ろを振り向くと、そこには内野以外にも三人いた。


一人は先程かすれた声を出していた、髪の毛が長くて目元が見えない女性。

顔はあまり見えないが、恐らく年齢は20代ぐらいで、髪はボサボサで顔はやつれている。


もう一人はスーツを着ている20代ぐらいの男性。

睡眠不足なのか目の下には隈が出来ている。


最後の一人はギャルっぽく、歳は内野と同じぐらいで金髪美少女。

しかし機嫌が悪そうで近づきにくい雰囲気が出ている。


内野には彼らとの面識は全く無く、それは彼らも同じようだった。

そしてこの三人も、内野と同じように今の状況を理解できていない様子だ。


「多分みんなまだ状況を把握できてないよね、大丈夫だよ、僕が今から説明するからね」


鎧を纏った人が4人にそう優しく語りかける。


「取り敢えずみんなの今の状況について説明するね。

君たちはプレイヤーに選ばれたんだ。今から30分後、僕たちプレイヤーは異世界に行って魔物を狩らなくてはいけない。まず魔物を…」


「ちょっと待ちなさいよ!あんた頭おかしいんじゃないの!?急に魔物とか言い出して!」


鎧の男が話していた途中で、金髪のギャルが男に詰め寄り話を遮る。


確かに今の男の話は意味が分からないし、詰め寄りたくなるのは分かるな。


「まぁまぁ…今この人が説明してるわけだし…」


「うるさい!」


スーツの人がギャルを宥めようとしたが、ギャルは聞く耳を持たない。


「う~ん、やっぱり自分の目で見ないと分からないよね。ま、僕もそうだったから分かるよ。

この部屋の向こうの光景を見れば、少なくとも僕の話を聞く気になってくれるだろうし、皆こっちに来て!」


そう言うと、鎧の男はこの部屋唯一の扉を開けた。




その扉の向こう側には大聖堂の中の様な空間が広がっていた。

学校の体育館よりも全然広く、側面壁にはきれいなステンドグラス、天井には大きなシャンデリアがある。

広間の側面には10個の石像が並んでおり、広間の奥にはとてつもない存在感を放つ巨大な竜の石像があった。


広間には100人以上の人々がおり、皆おかしな格好をしていたり、武器のようなものを持っている。



内野達はこの光景を見て言葉を失った。


俺の住んでいる街にこんな豪華な大聖堂あるわけがない…

って事は、もしかしてあの鎧の人が言ってたのは本当の事なのか?

流石にこの光景を見てしまうと…さっきの話を信用せざる得ないな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る