第63話 なんでそんな選択肢しかないんだよ!

前回のあらすじっ!

 執事のコスプレしたけど、どうやら似合ってないようです。はやく着替えたいです。以上っ!




 俺は現在、執事キャラのコスプレをしながら…


(美羽よ、はやく復活してくれ!)


 と、すごく願っていた。


 すると…


「り、凛、その……と、とてもよく似合ってる。か、カッコいい……」


 と、復活した美羽が顔を赤くして目を逸らしながら言うので…


「あ、あぁ、お世辞ありがとう。どうやら、似合ってなさすぎて、周りの人から奇妙な目で見られてるから、着替えてくるわ」


 そう思ったので急いで着替えようとすると…


「ちょっと待ってください!」


 と、いきなり店長からストップがかかる。


「えーっと………なんでしょうか?」


「ちょっと待ってください!」


 そう言って、美羽の耳元で何やら話す。


 すると…


「り、凛、私はさっき怒ってた」


(ん?なんか始まったぞ?)


「ホントは家に帰って、説教をしようと思ってた」


「俺、このコスプレで十分、罰を受けたよ!」


「でも、今から私の言う通りにしてくれれば許す」


「今から!?この服を着た状態で!?」


「ん」


(勘弁してくれぇ。……まぁ、聞くだけ聞いてみよう)


「ちなみに何をすればいいんだ?」


「してほしいことは二つある。1つ目は店長に写真を取られること」


「嫌なんですけど!」


(俺、似合ってないのに、なんでそれを永久保存されないといけないんだよ!)


「ちなみに選択肢は帰ったら土下座24時間か、ここで写真を撮られるか。どっちがいい?」


「なんでそんな選択肢しかないんだよ!」


(おかしいな?ここで写真を撮られる方が圧倒的に正解な気がしてきたんだけど!)


「どっちがいい?」


「じゃ、じゃあ……今から写真を撮られるでお願いします」


「ん!」


 そう言って、美羽は店長のもとへ移動して耳元で何やら話すと…


「なるほど!それでは、了承も得られたので、さっそく写真を撮らせていただきます!」


 そう言って俺を壁際へ移動させて、何枚か写真を撮る。


 すると…


「あ!せっかくなんで、お連れの女性の方も是非、一緒に入ってください!」


 そう言いながら、美羽の背中を押す店長。


「えっ!べ、別にそんなことしなくても……」


「そ、そう。せ、せっかくだから、一緒……撮る」


 と、遠慮しようとしたが、美羽の反応を見てやめる。


(まぁ、一枚くらいなら美羽と写ってもいいかな)


 そんなことを思いながら、美羽とのツーショット写真を撮る凛であった。




「ありがとうございます!」


 そう言いながら、店長はカメラを片付ける。


「じゃあ、俺は着替えてくるから」


 そう言って試着室へ向かうが……


「待って、凛」


「グヘッ」


 美羽に服の襟を掴まれる。


「なんだよ!今度は!?」


「まだ一つしか、お願いを聞いてない」


「あー、二つとか言ってたなぁ」


 一刻も早く着替えたいが、美羽のお願いを無視するわけにはいかないので…


「で、もう一つはなんだ?」


「ん、店長が用意したプラカードを持ってアウトレット一周」


「絶対嫌なんだが!!」


 なんだよ!その罰ゲームは!しかも、ここのお店の名前を書いたプラカードを店長持ってるし!


「ちなみに選択肢は、私が凛を隠し撮りした写真の流出プラス土下座24時間か、アウトレット一周。どっちがいい?」


「どっちも嫌なんだが!!」


(なんで、土下座24時間と写真流出がワンセットになってんだよ!それされるなら、アウトレット一周の方がいいような気がするし!)


 そんなことを思っていると店長が…


「なんで、私が君にこの店の名前が書かれたプラカードを渡すと思いますか?」


「えーっと………」


(全然似合ってない俺がこの店の衣装を着て歩き回ると、誰の店で買ったんだ?ってなる。そうなるとこの店の評判が落ちる。よって客が減る)


「良いことなくて、むしろ迷惑しかかけないような気がするんですけど…」


「あ、やっぱり私の想像通りの返答が返ってきた。えー!つまり!君は今まで店長として迷惑をかけてきたので、ここの名誉を下げる義務がある!」


「ん?そうなのか?」


「だから!君には“この店の服を着たら、俺みたいにカッコ良くはなれないから、この店はやめた方がいいよ!”っと宣伝できます!」


「俺の悪口もついでに言ってますね!」


 なかなか辛辣な言葉を言われた。


(まぁ、店長が“評判を下げてきて良いよ”って言ってるから何か作戦があるのかも。それで、評判を下げるのに適した人が目の前に現れたって感じなのかな)


「どうでしょうか?」


 と、店長がお願いをしてくるので……


(ホントはコスプレした格好でアウトレット一周とかしたくはないが、土下座と写真流出は勘弁してほしい。それに店長が評判を下げていいのなら…)


「店長が評判を下げてほしいって言ってるなら、評判を下げたい理由があるんだと思います。だからこの俺に任せてください!一所懸命、この店の評判を下げてきます!」


「うん!お願いします!あ、でも、店長が評判を下げたいって言ってたことは言わないでね。自然とお客様が減るようにしたいから」


「任せてください!」


 そう言って、俺はプラカードを持って勢い飛び出す。店の中では美羽と店長が笑っていることに気付かずに……


(そういえば、どうやら俺は服を着ると、その服屋の評判を下げることができるらしい。……ホント嬉しくねぇ)


 そんなことを思いながら店を出る凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る