第54話 ねぇ、凛。こんな女ほっといて私と食べに行こ

前回のあらすじっ!

 教室で理央に挨拶をしただけで驚かれてる俺がいます。そんなに陰キャが挨拶したら悪いかっ!以上っ!




 理央に挨拶をして、自分の席へ移動する。


「お、おはよう!汐留さん」


「おはよう、火口さん」


 と、火口さんに挨拶をして席に座る。すると…


「あ、あの!涼風さんとは何かあったの?」


(うん?なんでわかったんだ?………あ、名前呼びか!だからクラスメイトたちは驚いてたのか!てっきり、陰キャが挨拶してることにビックリしてるかと)


「うーん、そうだなぁ。“何かあったか”と言われたら、お互いの関係性が先週よりも良くなったってことかな?」


(昔、出会ったことを共有することができ、俺も涼風さんもお互いのことを名前で呼ぶことになったからな。先週と比べたら関係性が良くなったのではないか?)


 そう思って火口さんに説明したら……


「えっ!も、もしかして汐留さんと涼風さんって、つ、付き合ってる……とか?」


 そんな的外れなことを言われたので、


「そ、そんなことないよ!俺ごときが理央と付き合えるわけないよ!俺と付き合ってるとか噂されたら、理央に迷惑がかかってしまうからな」


 全力で否定する。それを聞いた火口さんは…


「そ、そうだよね………よかったぁ……」


 と、安堵した表情で言う。


(最後の方は聞こえなかったが、どうやら俺の言葉を全肯定してくれたらしい。優しい火口さんからも陰キャの俺ではつり合わないって思ってるんだな。まぁ、俺もそう思ってるからいいけどさ!)


 そう思う凛であった。




 午前中の最後の授業が終わり、昼休憩となる。


 すると…


「凛くん!一緒に昼ごはん食べよ!」


「そうだな、前回もいろいろあったが楽しかったから、今日も一緒に……」


 と、理央に話していると、教室の入り口が騒がしくなった。見てみると、幼馴染の美羽がこの教室に入ってきた。


(珍しいな。美羽が他クラスに入ってくるなんて)


 そう思っていると、こちらに向かって歩いてきた。


 俺の前に移動すると…


「凛、今日は私と一緒に二人きりでご飯を食べる。いい?」


 そんなことを言い出した。


「えっ!な、なんで?」


「凛、今日は私と一緒に二人きりでご飯を食べる。いい?」


「それは今、聞いたわ!俺の質問に答えろよ!」


 俺と美羽は幼馴染で同じ学校に通っているが、学校でも人気のある美羽と陰キャである俺が幼馴染って周りが知ると、美羽に迷惑がかかると思い、出来るだけ、学校内での接触は避けてきた。美羽は幼馴染とバレても気にしないとは言ってくれていたが……


「私と凛は幼馴染。小さい頃からの付き合い。だからご飯を一緒に食べることは問題ない」


 美羽がそう言うと…


「えぇぇぇ!あ、あの、紅林さんが喋ってる!……だと!」


「えぇぇぇ!あ、あの、紅林さんが男子に話しかけてる!……だと!」


「えぇぇぇ!あ、あの、紅林さんが“ん”、“いや”、“人がゴミのようね”以外の言葉を喋ってる!……だと!」


「“人がゴミのようね”って言葉をいつ使うんだよ!」


というか、誰一人として“幼馴染”という点に触れてない。


(いや、美羽よ……あなた、どーやって今まで学校生活送ってたんだよ)


 美羽の学校生活が気になってきた凛であった。




「凛、聞いてる?」


 と、美羽が俺に詰め寄ってくるが、間に理央が入ってきた。


「ねぇ!あなた名前はなんて言うの?」


 と、理央が美羽に聞く。美羽は…


「名前を聞くときは、まず自分が名乗る。これ、お約束」


(なんのお約束事なのかは知らないが、確かにお互い初対面だからな)


「あ!ご、ごめんなさい!私の名前は“涼風理……」


「ねぇ、凛。こんな女ほっといて私と食べに行こ」


「ちょっと!最後まで聞いてよ!」


 美羽が理央の言葉をガン無視して俺に言ってくる。


(名乗れって美羽が言ったんだから、最後まで聞いてやれよ…)


 そう思ったが美羽の気迫がすごく、口に出せなかった。


 そのため…


「あー、ごめん美羽。今日は俺、理央と食べる約束を今、したところなんだよ……」


 俺が申し訳なく、そのように言うと……


「ん?理央?それはだれ?」


「私のことだよ!最後まで名前を聞いてないからわからないんだよ!」


 一所懸命、美羽へアピールをしている。


(さっきから視界には入ってるだろ。なんか、ここまでくると、理央が不憫だな…)


 そんなことを思いながら、“理央と美羽が睨み合っている状況をどうしようかな?”(美羽が圧倒的に悪いと思う)と考える凛であった。

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