第40話 偉大な言葉なのに、全然偉大さを感じない

前回のあらすじっ!

 山野とショッピングへ行く。疲れた。以上っ!




 山野を家の近くまで送った後、俺は疲れた足にムチを入れて、家まで辿り着く。家の玄関を開けて、帰った合図を送る。


「ただい…………ま?」


 すると、そこには美羽が立っていた。鬼のような顔で。


(いやなんで!?なんか俺、悪いことしたっけ!?)


 全く心当たりはないが、怒っているということは何かしらの原因はあるということ。必死になって記憶を辿るが……


(わからぬ!わからぬぞ!俺は何をしたんだ!)


「おかえり、凛。ご飯にする?お風呂にする?それとも……………土下座?」


「お風呂でお願いします!」


 全力で考える時間を稼ごう!俺は逃げるように脱衣所へと移動した。




 お風呂から上がるが一向にわからない。そして、お風呂から上がると美羽が…


「お風呂上がったんだ。じゃあ、ご飯にする?土下座にする?それとも…………………土下座?」


「ご飯でお願いします!」


 おいぃぃぃぃ!ご飯終わったら俺の未来、土下座しか待ってないんだが!?そして再度、全力で考える時間を稼ごう。




 ご飯を食べている間も一所懸命に考えるが全くわからない。しかも、ご飯を食べている時は舞からものすごく睨まれるし。


 舞の原因はわかってる。おそらくアウトレットに遊びに行ったことだろう。多分、舞は「お兄だけずるいっ!」って言ってくると思う。なので、俺は甘いお菓子を買ってきた!これで舞の件は解決できる!そのため、一番の危険人物は美羽になるが……


「凛、ご飯食べ終わったんだ。じゃあ……」


 と、美羽が言っているが、俺はその言葉を最後まで聞かず、自分の部屋へとダッシュする。部屋の前まで行き、素早く部屋の中へ入る。そして、鍵を掛ける。


「ふぅ、もうこれで一安心だろう」


 さすがに部屋の鍵を開けることはできないだろう。明日になれば、なんで怒ってたのか忘れている可能性はあるからな。それに賭ける!そして部屋のベッドに腰掛ける。


 すると……


「凛、ここに居るのはわかってる。入るよ」


 (ん?なんかおかしな言葉が聞こえたな?鍵が掛かってるのに「入るよ」って言葉おかしくね?)


 そんな疑問をよそに、美羽は部屋へ入ってくる。何やら鍵のようなものを持って……


「いや、どーやって入ってきたんだよ!鍵掛かってただろ!?」


 と、1番の疑問を美羽に問いかける。すると…


「凛の部屋の合鍵を持ってる。だから入れた」


「いや、なんでだよ!」


 どうやら俺のプライベート空間はないらしい。こいつ、だから俺のエッチな本の場所やパソコンのフォルダを漁ることができたのか!


 …いや、よくよく考えたら、いつも部屋から出る時、鍵かけてないから侵入し放題だわ………。


「こんなことがあると思った。備えあれば憂いなし。先人はいい言葉を残した」


「その言葉の重要性を実感するの、絶対、今じゃないから!先人も“部屋へ逃げられた時のために合鍵を備えとけよ?”って意味でこの言葉を残したわけじゃないから!」


 偉大な言葉なのに、全然偉大さを感じない。むしろ今は“なんでそんな言葉を残したんだよ!”って叫びたいんだが!!


「そんなことはどうでもいい。私がなんで怒ってるかわかる?」


「いや!美羽が俺の部屋の合鍵を持っていることをそんなことで片付けるな!俺のプライバシーに関わる問題なんだけど!」


「そんなことはどうでもいい。私がなんで怒って………」


「それはさっき聞いたわ!」


 ゲームのNPCか!って叫びたいんだが、多分、話の主導権を美羽に渡さない限りは同じことばっか喋り続けそうだ。


(俺も合鍵の件は引けないので、俺も同じことを喋ってやるぜ!)


そう心に決めた時…


「ねぇお兄、私がなんで怒ってると思う?」


 と、そこで舞が乱入してきた。いや、このタイミングで乱入すんの!?


「お、おう、舞か。今ちょっと立て込んでてな。悪いが後に………」


「ねぇお兄、私がなんで怒ってると思う?」


「お前もかよ!」


 なんでみんな同じことしか言わないの!?あ、もしかして、二人ともNPCになったとか?俺がゲームの世界に迷い込んで!


 …いや、ゲーム開始時にNPCが怒っている理由を聞いてくるゲームとか嫌なんだが…。


「あ、あのぉ二人とも?俺は今、何故、美羽が俺の部屋の合鍵を持っているかを聞きたいんだが……」


 (俺のプライバシーを守るために、合鍵の存在はあってはならない!その、あれだよ。俺も覗かれちゃまずい時は部屋に鍵かけてるからな)


 ※内容はご想像にお任せします。


 なので、今すぐこの話題に転換しないといけないのだが……


「それなら大丈夫だよ、お兄。私もお兄の部屋の合鍵を持ってるから」


「いや、どの辺が大丈夫なんだよ!」


 なんで俺の部屋の合鍵が大量生産されているか、ホントに考える凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る