Chapter 7-4
瞬時に距離を詰めてきた男は流れるように上段蹴りを繰り出してくる。
これを
「お前ら、行け!!」
背後の三人に檄を飛ばす。
「行かすかよ!!」
慌てて駆けだした三人が脇を通り抜けようとする。男はそれを阻止するべく彼らの前に立ちはだかろうとするが、足を受け止めた京太がそれを離そうとしなかったため、三人は無事に男の脇を通り抜けていった。
そして京太は両手で彼奴の足を掴み、そのまま投げ飛ばす。
が、男は上手く両手を地面に付けながら跳ねるように受け身を取って、京太から離れる。
それを追って京太は地面を蹴る。距離を取った彼奴が体勢を立て直す前に追撃するためだ。しかし男は冷静にバックステップ。繰り出された京太の拳に蹴脚を合わせ、激突。
打撃が重なる乾いた破裂音が炸裂する。
京太は拳を退き、その反動に乗せて回し蹴りを繰り出す。それに合わせ、彼奴も返す足で回し蹴りを合わせてくる。
「ん……なろぉっ!!」
「ぐぉおおおおっ!!」
力比べとなったこの場面で、京太はそのまま力任せに足を振り抜いた。
これにたまらず男は弾き飛ばされ、地面を転がる。
京太はすぐさま追いすがり、男の鳩尾に膝を入れつつ馬乗りになり、彼奴の胸倉を掴む。
「ぐっ……!!」
「さぁて、てめぇらが捌いてるクスリのこと、洗いざらい吐いてもらおうじゃねぇか」
「そうは……いくかよ……っ!!」
男は奥歯を強く噛む。すると途端に彼奴の身体が大きく跳ねた。これに堪らず跳ね飛ばされる京太だったが、上手く受け身を取りつつ彼奴に視線を向ける。
「ぐ……おおおおおおおおおおおお!!」
男の絶叫がこだまする。彼奴の身体は不自然な膨張と収縮を繰り返し始めた。一瞬で隆起した筋肉が一瞬でしぼむ。その様はまるで煮えたぎるマグマのようだった。
やがて膨張と収縮が収まると、彼奴の身体からはオーバーヒートした機械のように蒸気が沸き立つ。
男は自身の身体の変調など気にした様子もなく立ち上がる。男が動くと、バチバチと大きな音が文字通りスパークした。その手で髪を撫でつけると、怒髪天を体現するかのように逆立つ。
「さぁて……第二ラウンドと行こうぜぇええええっ!!」
彼奴の姿が文字通り京太の眼前から消えた。
「疾風……雷神脚!!」
「ぐあああああああああああああっ!!」
すると次の瞬間には、男の繰り出した蹴脚が京太の目の前にあった。避ける術もなく、京太はその蹴りをまともに受けてしまう。その瞬間、体中を駆け巡ったのは電撃だった。なにをしたのか。彼奴の身体は今、電撃を帯びている――!
身体が焼け焦げそうな衝撃を受け、京太は受け身も取れず地面を転がる。
「お次だ! 旋風……雷神拳!!」
「いちいち……技名なんざ叫んでんじゃねぇ!」
男の追撃の拳に、京太は身体を捻って無理やり蹴脚を繰り出した。刺激的な光が破裂するとともに、電撃が京太を襲う。だが堪らず弾き飛ばされたのは彼奴も同じだった。
「ちぃっ……!! やるじゃあねぇの!」
思いがけず二人の距離は大きく離れたが、京太の身体は大きく痺れており、今の蹴りが正直、なけなしの力で繰り出した最後の一撃だった。謎の力を手にした彼奴には、今のままでは敵わない。次の一撃で――。
「――っ!?」
「そこまでにしておくんだね」
たった一瞬で。男の身体に七つ、突然の裂傷が発生した。彼奴の身体から立ち昇る蒸気の奥に、何者かの姿が垣間見えた。
「そ、ら……!?」
彼奴の首筋にナイフを突き立てていたのは、京太もよく知る少女だった。
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