Chapter 7-2
――アナタのせいで死んだんだから。
「……悪いな。俺には否定も肯定もできねぇんだよ」
つぶやきは虚空に呑まれて消えていった。
祖母が亡くなったのは心不全によるものだと
「若。いらっしゃいやすか」
「おう、入りな」
と、そこへ襖の向こうから低く野太い声が聞こえてきた。
京太が促すと襖が開き、顔を見せたのは
「お待たせいたしやした。失礼しやす」
仏間に入ると、不動はまず仏壇の前に腰を落とした。彼が黙とうを捧げ終わると、京太は口を開く。
「聞いてくれよ。今日の帰り、ウチの学校のヤツらがこの近くの路地裏でカツアゲしてやがった。ぶちのめしてやったら、やってた方もされてた方も逃げちまってよ。その前からイライラしてたもんで、カッチーンきて公園で駄弁ってから帰ってきたんだけどな。そしたら門の前に変な男が突っ立ってた。父さんの知り合いらしいんだが……
「……
「やっぱ同業者か。
京太は懐から草薙に渡された封筒を取り出し、不動の前に置いた。
「こいつぁ……」
「中を見てみな」
不動が中身を改めると、中から出てきたのは札束だった。先に京太が数えたところ、30万ある。
「ヤツぁ、なんのつもりでこれを……!?」
「あいつは俺になら分かんだろっつってた。心当たりといやあ一つしかねぇ。カツアゲで巻き上げられた金だよ」
「なるほど……。いや、しかしカツアゲでこの額……!?」
「ああ。普通の高校生が持ってていい小遣いじゃあねぇな。こいつを草薙が取り返してきて、わざわざ俺に渡してきた。キナ臭ぇ匂いしかしねぇなぁ?」
「……『眼』を付けやすか」
京太は頷いた。不動から封筒を預かる。
「草薙と……ウチの学校の樋野ってヤツだ。この封筒の持ち主のな。
「ウス。男上げさせていただきやす」
「頼む」
不動は頭を下げ、仏間から出ていった。
それを見送ると、京太は再び祖母の遺影を見上げた。
「……今はお前に構ってる暇はねぇよ。アリス」
掘りの深い初老の女性は、確かに今日出会ったばかりの少女に似ていた。
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