第一部:エピローグ
あれから一週間が経った。
とてつもない戦いだったが、世間的にはなにかが起きたという認識はなかった。対照的に戦いの爪痕を残す
そのため
「なんだよもうへばったのか? しょうがねぇ、休憩にすっか」
その『螺旋の環』の地下には、広大なトレーニングルームがあった。
そこで竹刀を手にする京太の前には、床に倒れ込み肩で息をする
不良グループ『
当主を失った
しかし悪いことばかりではない。
ただ、なぜか一つ分だけ余ったらしい。余ったそれは『螺旋の環』で保管することになった。保管する環境としては、ここが一番適していたからだ。
それはともかくとして。今回の件を受け、『魔』と戦える力が欲しいと言う轟棋と健司に、京太は剣術を指南していた。ただなんというか、二人とも熱意はあるが向いているようには感じない。
と、そこへトレーニングルームのドアが開き、一人の男が顔を見せた。
「こちらでしたか、若」
「
室内でもサングラスをかけたままのその男は不動だった。その精強な肉体の、左肩から先ではスーツの袖がひらひらと踊っていた。
「ええ。済みません、若。ご迷惑をおかけしちまって」
「謝んなきゃいけねぇのは俺だ。済まねぇ、俺が鬼になっちまったばっかりに」
「いえ、これぐらいで済めば安いもんでさぁ。それより若が無事にもとに戻れて本当によかった」
「……そいつぁ結構。ありがとな」
京太は一度顔を背けると、鼻をこすってすする。再び不動に向き直ると、床に倒れる二人を後ろ手に指す。
「そうだ不動。元気があるなら、こいつらを見てやってくんねぇか? 戦えるようになりてぇって言うから剣を教えてやってたんだが、いまいち覚えがよくねぇ。ステゴロは得意みてぇだし、お前の拳法を教えてみたらどうかと思うんだがよ」
「なるほど。わかりやした。やってみましょう。しごき甲斐もありそうだ」
「ってわけだ。お前ら、こっからは不動が面倒を見てくれるからな。しっかり言うこと聞けよ。ちなみに、不動は俺の万倍は厳しいからなー」
笑いながら、京太はその場をあとにしようとする。
そんな京太の背に、健司と轟棋から非難の声が飛ぶ。
「鬼だ」
「……鬼だな」
「そいつぁ結構。知らなかったっけか? 俺は正真正銘――」
京太は振り返ると、ニヤリと笑みを作った。
「――本物の鬼なんだぜ?」
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