【長編】魔法使いの孫と終焉戦争-ラグナロク-【連載中】

椰子カナタ

第一部:終焉りの再誕り

Chapter1 鬼の少年

第一部:プロローグ

 町外れの廃工場は、その存在が廃れて久しい。


 トタンの壁は剥がれ、外から屋内を覗けるほどまで古びてしまっている。無人の工場内は、今では町の不良たちの溜まり場となっていた。


 今日も建物内には数人の若者の姿があった。彼らは『からす』と名乗る不良グループだ。辺り一帯を牛耳るようになった巨大グループだが、今ここに集まっているのは幹部以上のメンバーだけだった。

 そのボス、吉田轟棋よしだ ごうきは一番奥の廃車のボンネットに腰かけていた。恵まれた大柄な肉体は他を完全に圧倒しており、風格すらにじみ出る存在感を放っていた。


 ――潮時か。


「吉田!」


 ボロボロの鉄扉が大きな音を立てて開く。

 轟棋の右腕である山下健司やました けんじが、大声を上げて入ってきた。


「に、逃げ――ぐはっ!!」


 健司が宙を舞って倒れる。

 程なくして、扉を潜ってきたのは一人の少年だった。髪を整髪料で固めた長身。学ランに身を包んだ姿は普通の学生のようだが、しかし彼の登場にこの場の全員が息を呑んだ。


「てめぇらか? ウチのもんに手ぇ出してくれたのは」


 少年が口を開く。


「済まねぇが、身の程をわきまえねぇ奴らには灸を据えなきゃならねぇ。――覚悟は、できてんだろうな?」


 少年の後に続き、強面の男たちがなだれ込んでくる。

 轟棋たちにはもう、逃げ場はない。


 何故こうなった。轟棋の脳裏をそんな思いがかすめる。今考えても詮なきことではある。だが、そう考えずにはいられない。


「往生しな」


 この日、彼らの目の前には鬼がいた。

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