memory.2 最初の現場
「記憶処置の上、退職ですか」
それを聞くと
「あ、それあたしの前担当した事件ね。ケヒャヒャヒャ私こそがデスゲームのゲームマスターとか言い出す異常存在がねぇ……」
事件の詳細は気になるがそこじゃない。
「記憶処置ってなんですか。あとこの脳処置とかいうのは」
「そういう技術があるの。この研究所に」
「いやいやいやそんな。それにこの死んでから生き返ってるのなんです? 生き返ったのってもしかして乙女さんですか? 今、
「うんうん、一度死んだくらいじゃびくともしないのは私が人間じゃないからだねえ。
よろしくない。そんな話信じられるか。
見た目よりずっと年上ってのも正直まだ信じられないんだぞ。
「う、うす。あとこの最初の事件の胎児って」
「“エンジェルさん”の子供たちね。今の
「守り神……」
おそらく、この話の雰囲気でいくと、例え話ではないのだろう。本当に、神や仏の類なのだ。
成る程、理解した。
ありえない事件に、超法規的に対応する場所だ。容疑者を現場で射殺することも認められている。俺が飛ばされた理由もうっすら分かるというものだ。
そんな馬鹿な話、まだ信じないが。
「え、拝みたい? 守り神様拝んじゃう? 縁起良いよお~」
「遠慮しておきます」
「あらそうですか。じゃ、ここまで見て気になることあった?」
「奇怪捜査研究所、
「おおむねその認識で良いよ。幽霊、怪物、怪人、魔術、呪術、神、天使、悪魔、そしてそれ以外」
「それ以外? それは例えば……」
「わかんない」
乙女さんは肩をすくめる。子供みたいな仕草だ。
「わかんない?」
「長生きするとねえ、シワとわかんないことが増えてくるもんなのよ」
シワ一つ無いお肌で抜かしやがる。
「拳銃の携行が認められているんですね」
「もっちのろんよ、撃たなきゃ死ぬもん」
「成る程、いくら撃っても左遷の心配が無いってのは安心だ」
乙女さんはクスクス笑う。そこまで面白いこと言ったつもりはなかったので少し戸惑っていると、彼女は背伸びして俺の頭をぽんぽんと撫でた。もしかしたらこいつ左遷ジョークがツボなのか?
「そーねー、当面は自分の命の心配だけしてね。
まあ、少なくとも良い人ではあるのだろう。
これから組む相手としてはこれ以上望むべくもない。
「
「あっはっは、事件の後でも同じこと言えるか楽しみだ。じゃあそのファイル持って。現場行くよ」
「うっす。初事件だ。一体どんな事件ですか?」
「不法滞在」
「普通っすね、どこの国からですか」
「さあ」
「さあって」
「あいつら日本語しか喋れないんだよ。彼らには言葉が通じる。不思議だよね」
「はぁ? じゃあそれって……」
「不法滞在だよ、いいね?」
乙女さんの目は笑っていなかった。
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