第15話 緊急依頼

 その後、カミーラ達はダンジョンに向かったみたいで、会うことはなく。

 俺も、再びギルドの依頼を受ける日々がしばらく続いた。


 新しいスキルの使い方にも慣れたし、他のスキルや魔法との組み合わせも問題なく連携付けられるようになってきたかな。そろそろ新しいスキルの習得を検討してもいいか。

 そんなことを考えながら、早めに常設依頼の魔物を仕留められたため、冒険者ギルドに依頼達成の報告に向かうと、俺はギルド長に再び呼び出された。


 「レオ、いいとこに来たな。ちょっといいか?」


 ギルド長の所には、見かけない女性の冒険者2名が居た。

 ギルド長に呼ばれた俺は、ギルド長らを追いかけるように付いて行き、ギルドの一室に入っていった。

 そこには、カミーラ達と一緒に居たパルが、ギルドの女性職員になだめられながら、座っていた。


 「待たせたな。パルの嬢ちゃん。こいつらは、Bランク冒険者パーティー暁の戦姫の盾使いのリサと回復者のアン・ギルフォードだ。それとCランク冒険者のレオだ。」


 「レオ、大変なのカミーラ達を助けて!」


 パルは、俺の顔を見るなり、そう言ってきた。


 「おい、ちょっとどういう事だ?」


 俺は、訳が分からず、パルとギルド長を交互に見てこう言った。


 「そうそう、仲間が大変なのは分かるが、もう少し落ち着いて説明して欲しいね。こっちもギルド長の顔を立てて来てるんだし。それにレオ君とは、見たところ知り合いなのだろ、なおさら、事情はきちんと話すべきだろ。」


 ギルド長から紹介された暁の戦姫のリサも、パルの慌てた様子を見て、そう言った。


 「すまんなレオ。訳も話さず呼び込んで。実は、お前も依然組んだことのあるカミーラ達がダンジョンに怪我をして取り残されてな。」


 「あいつら、いきなりあたい達を裏切って、別の仲間と一緒に襲い掛かってきた。」


 「ちょっと落ち着け。何があったんだ?」


 ギルド長とパルの話を要約すると、カミーラ達は、黒翼の剣の連中とダンジョンに潜ったが、中層下部で、以前の黒翼の剣のメンバーが待ち構えていて、そいつらとともにカミーラ達に襲い掛かって来たらしい。カミーラ達は、カミーラのスキル危険探知に反応があったこともあり、何とかそいつらを撃退したが、カミーラがジェイミーを庇い、動けない程の怪我を負ってしまったらしい。

 そこで、パルが、敵を倒したり、躱したりしながら、なんとか戻って来てそのことを連絡してきたということらしい。

 ギルド長もギルドの冒険者が裏切り行為をしたのが原因と言うこともあり、ちょうどこの件でこのリーンの町に来ていた暁の戦姫に余剰戦力ということで、この二人を借り受けたが、アタッカーが居ないということで、カミーラ達とも面識のあった俺が、丁度ギルドに現れたため、今回声を掛けてきたという事だった。


 「カミーラ達の怪我は、酷いのか?」


 「うぐ、ジェイミーは、大したことない。けどカミーラが足が折れて動けない。それで、ジェイミーも残っている。」


 「骨折か。アン、治せるか?」


 「んー、応急処置を正しくしていれば、大丈夫だと思うよ。」


 「なら、さっさと行くか。レオ君も手伝ってくれるという事でいいんだよな?」


 「ああ、構わないが、俺とあんたら、パルの4人だけで潜るのか?見張りの問題とかあるが?」


 「それは、問題ないうちのリーダーから魔術具の野営道具一式預かって来た。それで、見張りは最小限で大丈夫だ。それに食料や必要な道具とかも揃っている。君の武器とか問題なければすぐにも向かいたいが?」


 「ああ、狩りの帰りだ。問題ない。」


 「それとパル君も、道案内を頼みたいが、すぐに潜れるかい?」


 「うん、問題ない。行ける。」


 「では、すぐに出発するとしよう。ギルド長もいいな。」


 「報酬は、ギルド既定のBランク冒険者は、一日5,000シリング、Cランク冒険者は一日2,000シリングだが構わんな。」


 「あいよ。」「ええ、構いません。」「ああ、いいとも。」


 それぞれが、ギルド長に示された救助の報酬に合意する。


 「依頼の受領書類は、戻ってくるまでに作っておく、行ってこい。」


 ギルド長は、そう言って俺達を送り出した。



 俺達は、ダンジョンに向かう道すがら、お互いの紹介やダンジョンでの役割を決めることとした、


 「レオ君に、パル君、ダンジョンに着くまでに改めて、自己紹介と打ち合わせをしておこう。私は、暁の戦姫で第2列の盾役を受け持っているリサと言う。よろしく。一応、風の魔法アタッカーの真似事もできる。」


 「あたしは、同じく暁の戦姫のヒーラー兼土の魔法アタッカーのアン・ギルフォードです。よろしくね。」


 「俺は、主にソロで活動しているレオと言う、一応一通りこなせるが、メインは剣術だ。」


 「どうも、パルです。斥候や後衛の警護ができる。」


 「なら、あたいとパルが前衛。アンが中央。レオが後衛というか殿でいく。戦闘になったら、パルは中衛に回ってアンの護衛を頼む。前方からの敵はあたいが、後方からの敵はレオが受け持つ形でいく。それと一度の戦闘での敵数は多くないダンジョンだ。敵から後方になったあたいやレオは、加勢に動かず後方警戒をするという動きでいいな?」


 「うん。」「ええ、わかりました。」「ああ、構わない。」


 そうして、フォーメーションや、戦闘時の対応を決めたりしているうちに、街の外にある目的のダンジョンに着いた。


 「よし、時間も結構遅いし、第2層まで潜って、どこかで休息を取るととしよう。パル君も疲れてるだろうしね。」


 「平気。」


 パルは、カミーラ達が、待っている手前、そう強がるが、アンに肩を抱えられ、落ち着くようにこう諭される


 「無理しても良い結果にはならないわよ。ちゃんと休んで、素早く進みましょう。」


 そうして、ダンジョンに潜り、数度戦闘を行い、お互いの戦い方、連携を確認して進む。

 リサとアンはBランク冒険者パーティーの仲間と言うだけあって、攻防の連携は実に鮮やかで、Cランク向けダンジョンと言うこともあり、殆ど無駄なく相手お屠っていく。

 パルも、相手より早く確実に敵を補足し、ルートも正確に指示を出し、進んでいった。

 俺は、後ろから襲ってきた敵が現れたのは、一回だけだったので、それを可もなく不可もなくと言った感じで倒しただけだった。


 「思ったより、順調に進めてるな。」


 「そうね。」


 「よし、当初の予定より進んで、第3層手前で当たりで、本日の休息を取る。いいな。」


 「わかった。」 「そうしましょう。」 「了解。」


 そうして、再度、3回ほど戦闘を行いながら、無事俺達は、無事に第3層に繋がる坂の前までたどり着いた。


 「では、この辺りの比較的安全そうな場所をキャンプ地としようか。」


 「ん、こっち。」


 そうパルは言うと、少し離れた場所に広くなった行き止まり場所に案内された。

 ここなら、背後からの奇襲は防げるので、入り口側だけ警戒すれば良いし、こちら側は広くなっているため、複数人でも武器を振り回せるから、襲われても優位に立てそうだ。


 「うん、いいね。ここをキャンプ地としよう。」


 「じゃぁ、私達の自慢のマジックテントを展開しますわよ。刮目しなさい。」


 リサが、ここを見て、キャンプ地としてすることに了承したのを聞いて、アンは、そう言って背負い袋から、何やら取り出すと、地面に展開させた。

 一瞬で、テントが張られ、周りに何やら魔法陣が展開された。


 「おお、すごい。」


 「なんだこれは。」

 

 「驚きましたでしょ。中に入ってごらんなさい。もっと驚きますわよ。」


 テントが一瞬で張られた光景に驚く俺達に、アンはそう言って中に入るよう促す。

 俺達は、言われるままテントを開き、中に入る。


 「わぁ。」


 「中に魔法が展開されているのか?これは?」


 中の広さは、見た目の5倍以上はある空間になっていた。


 「すごいだろ。外の魔法陣は範囲結界と警報が施されているので、見張りもいらない。レオはすまないが適当な場所にテントを張ってくれ。私達とパルはあそこで休ませてもらう。」


 そう言って、リサが指さした方向を見ると、既に天幕が張られている場所があった。暁の戦姫の休憩スペースになっているようだ。

 まぁ、男の俺があそこに入るのは確かに少し憚れるので、素直に了承することにした。

 

 「ああ、わかった。」


 そうして、テントをテントな中で張り終え、みなで食事を済ませると、また翌日からの救出のための行軍に備えて、身を休めることにした。

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