第1話 高校1年生、春

私は今年の4月から渋谷駅が最寄り駅の私立鶴ヶ峰学園に通う高校1年生の清水凛しみずりん。電車通学である。この学校を選んだ理由はシンプルに家から近くて偏差値がそこそこ高かったから。改札を出てから幼馴染みである斎藤奏さいとうかなで君が来るのを待っている間に手鏡を使って前髪のチェックをしていると、


「おはよう凛、待たせてごめん。」


「全然待ってないですよ、おはようございます奏君。それでは学校へ行きましょう。」


奏君が挨拶をしてくれました。学校へ向かいながら話している最中私が新入生代表の挨拶をすることについての話題になりました。


「そういえば凛は、入学式の新入生代表のあいさつを任されたんだよね。中学の時から勉強できてたけどやっぱすごいわ~」


「そ、そんなことないですよ。それを言うと3年の模試の判定がCだったのに合格出来た奏君の方がすごいですよ。」


(そうなのです。奏君はC判定だったのに1年勉強を頑張って合格したのです。私よりすごいです。)


「それは凛と同じ学校に行きたかったから頑張っただけだよ。」


「えっ!!それって」


(わ、私のことがす、好きだから!?)


「だって凜は抜けてる所あって不安だったからなw」


(そうですよね。奏君は好きな人にははっきりと告白するような方ですよね。)


「ぬ、抜けてないよ、しっかり者だよ~」


そんな話を奏君としてたら学園の校門につきました。


「同じ出身校の人少ないから奏君と同じクラスになれるといいなぁ」


「そうだな、凛はあまり初対面の人と話すのあまり得意じゃないからな~」


 そういいながら靴箱前に貼ってあるクラス表から自分の名前を探していると


「えーと、あった3組だ。俺と凜は同じクラスみたいだぜ。」


「ほ、ほんとですか!?嬉しいです。」


(奏君と同じクラスになれました。席も前後で近いですしありがたいです。)


「じゃあ体育館行くか~」


「先に行ってて下さい、お手洗い行ってきますね。」


「じゃあここで待ってるわ。」


クラスが一緒で席も近いことが分かったことでだらしない顔になっていないか不安だったので確認するため、一度お手洗いに行くことにしました。

 お手洗いから戻り、奏君と一緒に体育館へ行った。席はクラスごとに分けられている場所なら自由に座ってもいいみたいなので奏君と一緒に座りました。奏君の肩を突いて奏君を起こしました。(もう少し奏君の寝顔を見たかったですが残念です。)

「奏君、起きてください。入学式終わってこれから教室に移動だそうです。」


「凛、助かったありがとう。」


「どういたしまして。気持ちよさそうに寝てましたね。」


教室へ移動し担任から明日の説明を聞いた後、自己紹介が始まりました。


「初めまして、斎藤奏です。鴨川中出身です。趣味は読書とゲームで本は漫画から小説、ラノベなどなんでも読みます。これから1年間お願いします。」


奏君の自己紹介が終わると次に私の自己紹介が始まりました。


「始めまして清水凛です。鴨川中出身です。趣味は読書です。これからよろしくお願いします。」


 特に問題が起こることなく、自己紹介が終わり、午前中で入学初日が終わった。奏君と帰ろうと鞄を持つと左の席から根戸君が声を掛けてきました。


「やっほー、さっきも自己紹介したけど俺は根戸雄二ねとゆうじ。隣の席だからよろしく奏。清水さんと仲良さそうだけど彼女?」


「雄二よろしく、凛は彼女じゃないよ。彼女の保護者として同じ学園にしただけ。」


「保護者じゃないです。そんなこといって誰のおかげでこの学園に入れたと思ってますか?」


「すまんすまん。冗談だ。小学校からの幼馴染で同じ中学校出身なだけだよ。」


「奏はこんなかわいい幼馴染がいて羨ましいよ。てことで清水さんもよろしく。」


「根戸君よろしくお願いします。」


(根戸君もかっこいいとは思いますが奏君には及びませんね。)

そんなことを考えていると教室内で話しているとギャルの小林さんと文学少女秋山さんという不思議な組み合わせの2人が話しかけてきました。


「ウチは小林ゆうか。んでこっちが秋元沙也加。なんか面白い話してたから声かけさせてもらったわ。よろしく」


「あ、秋元沙也加です。ゆうちゃんとは幼稚園からの幼馴染です、よ、よろしくお願いします。」


「「「よろしく(お願いします)。」」」


 ギャルは怖いものと思っていましたが小林さんは優しそうな感じがしてホッとしました。奏君、根戸君、小林さん、秋元さんの5人で帰ることにした。駅に向かっていると小林さんが


「近くのファミレスで昼飯ついでにカラオケいかね?」


「俺はいいぜ。」


「俺も大丈夫。」


「私も大丈夫です。」


「わ、私も」


ということでみんなで昼飯を食べてカラオケに行き、3時間ほど遊び帰ることにしました。奏君と小林さんが根戸君に、


「それにしても雄二が音痴なの意外だったわ。」


「確かに爽やかイケメンなのに音痴なのは面白かった。」


根戸君は、


「この世のイケメン全てが歌うまだと思うなよ。それを言ったら小林がアニソン歌ってたのは意外だったかも、なんかジャ〇ーズとかのアイドルの歌とか歌いそうだけど」


「沙也加の影響でアニメ見るようになったからな~」


カラオケの感想などを話してると駅に着いたので解散することになりました。

別れ際に私が


「5人のLI〇Eグループ作るから連絡先交換しませんか?」


「「「「オーケー(わかりました)。」」」」


連絡先交換して別れました。これをきっかけによく5人で行動をすることが多くなったと思います。

 ゆうかさんと沙也加さんと仲良くなってから、時々奏君について相談を行っていました。


 ゆうかさんたちと仲良くなって数日たったある日私はゆうかさんと沙也加さんに奏君について相談を行っていた。


「奏君のことが好きなのですが、どうやって告白をすればいいでしょうか?奏君は私のことを女性として好きだと思ってなさそうなのですが。」


ゆうかさんと沙也加さんは後ろを振り向いて何か話し合っていたが私には聞こえなった。二人して私のほうを見て、


「うーん、まぁ私たちも誰かを好きになって告白したことは無いからなぁ。どう思う沙也加」


「そうですね、よくアニメなどではヒロインが主人公を自分の部屋に誘って刺激的なボディタッチをしてドキドキしている時に、軽く『好き♥』って言って主人公の心を掴みに行くことがありますよね。」


「そ、そんなハレンチなこと出来ません!!」


「それが無理なら、いつもの昼休憩の時の席を斎藤の隣に座って肩がぶつかる位の距離で座って話したり上目遣いにするとか」


「そ、それなら出来そうです。」


「後は私モテますアピールして斎藤に嫉妬してもらうとか。」


「自分からモテますっていうのは流石にイタくないですか?」


「まぁ、とりあえずは隣の席に座って距離を縮めることからだな。」


もらったアドバイスを実行してみたが、今までとあまり変化が見られなかった。トホホ

 しかし、1か月ほどたったある昼ご飯を食べてる時、根戸君が


「そういえば清水さんって入学してから結構な数、告白されてたよね。この間も中庭で告白されてるの見たし、ぶっちゃけどうなの?」


(奏君以外からの告白は正直迷惑です。)

「新入生代表のあいさつして有名だしね。それにこんなにかわいくておっぱい大きいからね~」


そういって小林さんが私の胸を揉んでいた。


(恋人は奏君以外いらないです。)


「ちょ、ちょっとゆうかさんやめてください!告白自体は嬉しいですが、あまり恋人は欲しいとは思ってないですね。」


「私はいろんな人に告白されるほどかわいい凛さんは羨ましいです。」


「良かったな、奏」


「はぁ!俺は関係ないだろ!」


そんな話をしていると昼休憩終了のチャイムが鳴った。私たちも下校の準備をしていると根戸君、ゆうかさん、沙也加さんが

「俺たち部活あるからまた明日」

と教室を出て行った。ちなみに根戸君はサッカー部、ゆうかさん、沙也加さんは文芸部に入っており私と奏君は帰宅部である。ということで奏君と2人で下校している時、奏君が私に


「凛、ちょっと話したいことがあるからそこの公園に寄らない?」


近くの公園に誘うと私は

「いいですよ」と言ってくれた。

公園に着き、奏君が自販機でお茶を買ってベンチに座ると話始めた。

「今日の昼休憩から考えてたんだけど、このままでは良くないかなって思ったんだ。だから言わせてくれ。俺は、凛のことが好きだ、付き合ってくれ。」

すると私は嬉しさのあまり泣き崩れたので、奏君がとても焦っていた。急いで


「急にこんなこと言ってもごめんな。昼も言ってたけど今は彼氏はいらないもんな。」


「ち、違います、嬉しくて泣いただけです。私も奏君のことを小学校のころから好きでした。私の方こそよろしくお願いします。」


「彼氏がいらないって言ったのは、奏君以外の彼氏はいらないと思ってましたので」


「良かった~何で俺のこと好きになったか聞いてもいい?」と聞かれたので私は鞄の中から、1つのストラップを出して話し始めた。


「このストラップ覚えていますか?」


「確か、小学校の頃に無くしたって言って一緒に探したやつだよね。」


「そうです。あの時見つかるまでドロドロになりながらも一緒に探してくれた時から好きになりました。ちなみに奏君は何で好きになってくれましたか?」


「俺は一目惚れで誰にでも優しくてかわいいところだったんだけど一番は受験勉強かな。下心だけで同じ学校に行こうとしてる俺に教えてくれるなんてどれだけ優しいんだって思った。」


「それは私の方こそありがたかったです。好きな人と一緒に勉強出来、同じ高校に通えたらって思ってましたので」


奏君が私のことを抱きしめた。嬉しくなり私も奏君の背中に手を回した。恥ずかしくなってきたので、


「そ、そろそろ帰るか」


「そ、そうですね、帰りますか」


ということで一緒に手を繋いで駅に向かった。少し恥ずかしくはあったがそれよりも嬉しくて頬がゆるんで変な顔を見られないように奏君から視線を外した。

 次の日、私は駅に着くといつも以上に手鏡で髪を気にしているいると「凛、おはよう」と奏君に声を掛けられた。奏君に気づいた私も


「お、おはようございます、奏君。眠たそうですが、寝不足ですか?」


「昨日のことで少し眠れなかっただけ、本当に凛が俺の彼女になったのが嬉しすぎて」


「わ、私も同じ気持ちですが、こんなところでそんなこと言わないでください、恥ずかしいです。」


お互い顔を赤くして学園に向かおうとしていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「お、遂にお二人さん付き合い始めたのか、良かったな凛。こっちも相談にのった甲斐があったよ」


「おはようございます。清水さん、凛さん」


ゆうかさんと沙也加さんがあいさつしてきた。奏君は、「相談?」と疑問を聞いてみると歩きながらゆうかさんが


「よく、『どうやったら奏に振り向いてもらえるかな』って相談を受けてたんだよ」


と教えていた。ちなみに私は顔を真っ赤にして俯いていた。


「まぁ、案外アピールす必要もなかったみたいだけどな」と小林がからかってきた。

すると奏君の顔も赤くなっていた。


「ち、ちょっとゆうちゃんからかいすぎだよ。でもお二人はお似合いだと思います。」


恥ずかしい思いをしながら4人で学園へ向かった。

教室へ行くと朝練が終わり先に教室にいた根戸君がいた。ゆうかさんは沙也加さんを連れて根戸君のところに行き、耳打ちすると2人ともニヤニヤしながら沙也加さんを引っ張りながらこっちへ来た。


「おはようさん、2人とも朝から手を繋いでくるなんてお熱いね~」


根戸君に言われてから無意識に奏君と手を繋いでいることに気づいた。からかっているが普通に祝福してくれているのが分かった。奏君が気になったことをあったらしく根戸君にこっそり聞いていた。しかし奏君の声はしっかりと聞こえていた。


「雄二は凛のこと好きじゃなかったのか?てっきり最初話しかけてきたとき凛のことがきになってると思ってたわ。」


「確かに清水さんはかわいいけど、普通に奏のこと好きってわかってたし俺には彼女いるから」


「....えっ?ええええええええええ」


(えっ!?えええええええええええ!私が奏君のこと好きだったことばれてるの知らなかったの私だけ!?)

と奏君と私は驚いていた。奏君の驚きの声とともにチャイムが鳴り、担任が入ってきた。

昼休憩になると唐突にゆうかさんが奏君に質問していた。


「斎藤は、朝あんなに大きな声で何に驚いてたんだ?」


「雄二が凛は俺のこと好きだってことを最初から知っていたことと彼女がいることを教えてくれたから。全然彼女いる感じしなかったけど」


「それはびっくりです。それよりも、私ってそんなに分かりやすかったですか?」


とまたしても私は赤くなっていた。


「雄二の彼女さんは、よくサッカー部の練習を見に来てて雄二と一緒に帰ってるのを見るぜ。まぁ凛の好き好きオーラは多分奏と凛以外は皆知ってるんじゃねって位分かりやすかったけどな。」


「そうですね、結構サッカー部の間では有名な話ですよ。まぁ凛さんの斎藤さんへの好意はすごく分かりやすかったです」


といった感じで私と奏君以外は知っていたみたいだった。奏君は何かショックを受けているような顔をしていた。私は驚愕の事実を聞かされ、顔が真っ赤になり机に伏せた。

 話を変えるために奏君は


「そ、そういえば今週の連休なんだけど休みのどっかで遊びに行かないか」


「いいですね、私も根戸君の彼女さんを見てみたいです。」


「いいな、それ。でもダブルデート中にうちと沙也加が邪魔してるみたいじゃないか」とゆうかさんがからかっていたので奏君は


「じゃあ小林は、秋元と付き合えばトリプルデートだな」


言った瞬間場の空気が凍った。


(奏君!?何言ってるの!)


ゆうかさんが怒りそうで内心怖くなったがゆうかさんは予想外の反応をした。


「う、ウチが沙也加と付き合う?ないだろ、そもそも同性なんだし」


「そ、そうですよ。流石にお二人に失礼ですよ、奏君」


「す、すまん」


「まぁ、ダブルやトリプルは置いといて6人で遊ぶのはいいな」


奏君の発言を窘めつつ

(おやっ?もしかしてゆうかさんは沙也加さんのことが好きなのでは?)

と思っていると


根戸君がスマホをいじりながら言った。


「ウチは日曜日なら大丈夫。」


「私も日曜日は大丈夫です。」


「私も日曜日がいいです。」


「沙羅も月曜日か日曜日がいいらしい」


根戸君が


「じゃあ日曜日のファミレスで昼ご飯食べてその後ボーリングいかないか?」


「それでいいと思います。」


「私もいいですよ。」


「日曜日の11時ころに駅に集合ということでよろしく。」


 遊びは日曜日に決まった所で昼休憩が終わった。

放課後奏君と帰っている最中、奏君が私に


「なぁ今週の土曜日、遊びに行くための服買いに行きませんか?」


「デートかぁいいな。11時に駅前に集合でいいか?」


「分かりました、奏君さようなら」


「それじゃあまた明日なバイバイ」


奏君との初めてのデートが決まり、その夜はなかなか眠ることができませんでした。

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