STAGE EX-4 第三種接近早漏

「──ではこれより、問題児共の取り調べを行う」


「りょ、今日のパンツは水色のサテン。はい次、オナ子の番」


「へ? あ、アタシはフリルが付いた白……いやこれ必要か?」


 聞いた覚えはないのですが……でもアラヤくんポインツは加点しておきましょう。まあ一応ね、一応。


 Q:はい、まずはニーニャさん。そもそもの話、いつから気付いていたんですか?


「最初はこちらも半信半疑だった……けれど私は"絶対性感"の持ち主。ひとり遊び中のアラヤ氏と肉声交姦して確証を得た」


 Q:つまり独り言に勝手に入って来た時ですね。まるで俺が屋外で自家発電をしていたかのような言い方は止めなさい。それと雑談はおせっせに含まれません。……じゃあ何でその時すぐ言わなかったの?


「……男性がひとりでいるのは目立つ。アラヤ氏の貞操の安全の為にも、固有名詞を出す前にそちらから気付くようにしたかった。そのために『ゆっくりお互いを理解すべき』と言葉も選んだ。私は悪くない」

 

 Q:ではあの「秘密を盾に何らかの関係を要求するエロ淑女」ムーブは、こちらへの配慮あってのことだと?


「会話を続ける内に自然と気付いてくれると思った。……しかしこれは私のミス。男性は声紋を使った腟内認証が出来ないことを、うっかり失念していた……」


「女のアタシにも出来ねーよアホか」


 Q:……ところで俺の肩を撫で回す必要はありましたか?


「私も年頃のヒトメス。性癖の拘りを捨てる気はないが、それはそれとして男性のエロい身体は別膣。隙あらばお触りするのが人情というもの」


 Q:っていうか君たち、そもそも何でここに居るの?


「この場所に関しての話なら、事務所のスタッフが監視しているGPSをチラ見して覚えた」


「おい待て、そんな便利なモンがあるとかアタシ聞いてねーぞ!? 最初から抜け駆けする気満々じゃねーか!」


 Q:つまりどういうことだってばよ。


「……事務所で待ってても男の姿が見えないから、どっかでナンパされてるんじゃねーの? って話になったんだよ。そしたらトイレから戻ったニーニャの奴が、急にお前のこと迎えに行くって言って飛び出した」


 Q:なるほど。……ところで記憶が確かなら、今日の配信で事務所のスタジオを使うよう言い出したのはニーニャさんでしたよね。計画通りですか?


「……アラヤ氏が確定で事務所を訪れるタイミングに乗じれば合法的にオフコラボが可能だなんて、そんなこと思ってない。しかしこうして"偶然"出会った以上、今から我々だけ帰宅してのコラボ配信というのは、盛り上がりに欠けると言わざるを得ない」


 Q:ということは、イオナさんも?


「あ、アタシはちょっと事務所に急用を思い付いたっつーか……。し、仕方ねーだろ!? 男が来るって知ったら、気になるに決まってるだろ普通!」


 Q:まあそれはそう。それではあらためて元凶のニーニャさん、最後に何か言うことは?


「この尋問はまるでなっていない。古来より、捕らえた将やスパイは男性を使って寝返らせるのが最も上策。本物の鬼公方氏がいながらお肉棒ビンタのひとつも披露しないとは、一体如何なる了見か」


 そんなエロゲみたいな歴史の闇は知らん。


「……ホットドッグ食べる?」


「「わーい」」


 ────。

 ──。


「ところで絶対性感って何さ」


「男性に対して極めて優秀な感度の良さを持つ能力のこと。アラヤ氏が本人であると断定出来たのも、膣内振動数による声紋の一致から。私ほど敏感な女はそういないから、普段は安心していい。どやぁ」


 とりあえずは五感や第六感が鋭い人と同じ扱いでいいらしい。セブンセンシズは性透視の類であったか……。

 なお、欠点は能力の優位性を発揮出来るほどヒトオスの数がおらず、また知り合う機会が皆無なこと。そして快楽にとても弱いこと。


「なにその能力、えっちじゃん」


 でもこの世界だとほぼ死にスキルなのでは……?


「ってか、お前そのナリで敏感体質なのかよ」


 イオナが割と失礼なことを言っている気がするが……確かにこうして直接会ったニーニャの印象的にも、彼女はどちらかと言えば──。


「……今、こいつ見た目はむしろマグロっぽいのにな、って思った?」


 いや、全然そんなことないっすよ?(震え声)


 威嚇するソーセージの如くブンブンと首を横に振って否定する俺たちであったが、時既に手遅れ。彼女は体勢を前のめりにしつつ、そのジトっとした瞳を初めてカッと見開き、


「──ベッドワークに消極的なヒトオスを差すスラングとして用いられる『マグロ』は、あくまで市場に揚がった冷凍モノ。現役のマグロは死ぬまで泳ぎ続けることで有名。……つまりこれをヒトメスにアヘハメた場合、その気になれば朝から晩まで終わることなく腰を振り続け、お腹の大トロがとろとろに──」


 なんて悍ましい魚類なんだ、今すぐ絶滅させなきゃ……!(冤罪)

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