威張りん坊将軍

羽弦トリス

第1話江戸城脱出

吉宗は爺と共に、城内を散歩していた。

「上様、最近、近習の者から上様が江戸城を抜け出し城下町を出歩きしていると、この有馬彦左衛門は聞いておりまするぞ。上様は一般ピーポーとは格式が違うのです。二度とお一人で城下町を探索なされぬように」

「のう、爺。そんな、かた苦しい事は申すな」

「いいえ、爺は上様の目付け役。黙ってはおれませぬ」

2人は池の淵に来た。美しい錦鯉が泳いでいる。

吉宗が手をパチパチと鳴らすと、錦鯉は寄って来た。

「のう、爺。今夜は鯉の洗いが食べたい。この池の錦鯉を食ってみたいのだが……」

「上様、錦鯉はお口に合いませぬぞ。厨番くりやばんに、申し付けておりますゆえ」

「爺、あの錦鯉は何じゃ?」

「へ、どれで御座いまするか?」

「あの、頭の黄色い」

爺が池の淵に近付くと、吉宗は爺の背中を押した。


バッシャーン


「う、上様。今、押しませんでしたか?」

「知らぬ。爺、手を掴め!」

爺は吉宗の手首を掴み、引き揚げられようとすると、吉宗は爺の腕を離した。


バッシャーン


「爺、他の者に頼れ!アディダス?否アディオス!」

「上様、上様~っ!」


吉宗は、爺を池に突き落として、城下町へ出向いた。

真っ直ぐ、め組の新門辰五郎の自宅へ向かったのである。

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