第117話 見えない二日月

今夜

二日月は見れそうにない

厚い雲に

その姿は隠されて


今夜は月を見上げて

あなたへの想いに浸りたかったのに

浸りきりたかったのに


これで最後にしようと思ったから

切なさに沈み込むことは




離れていった人に想う


悲しさや

淋しさや

どうしようもない切なさ


そして


それらをすべて越えそうなくらいの

愛おしさを



もう、あたしはもて余さないの



ねえ


だって、あたしは

何も後悔していないもの


出逢ったことも

気持ちを近づけて

言葉を交わして

想いを寄せ合ったことも


とても愛おしかったことも


何一つ悔やんでいないよ



離れた今が

淋しさで染まりきるほどに

そう、あたしは

あなたが愛おしい

あの時も今も

あなたをとても愛おしく思うの



だからもう

切なさだけを引き摺っていることは

おしまいにします



この愛おしさを

大切に大切に、この胸に



見えない二日月を思い浮かべて


あなたの優しい瞳の色を想うわ


月の美しさを教えてくれた

あなたのためにも


もう

月を見て

悲しんだりしないからね





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