第100話 春なら桜の木の下で
『春なら桜の木の下で』
遠い遠い昔に
まだ少女だったあたしが書いた
淡い恋を詩った言葉
その時のノートは破ってしまって
他の言葉たちは思い出せないけれど
何故か
この言葉だけは覚えている
あの頃の
柔らかくて真っ直ぐな想いを
あたしは何処に置いてきたんだろう
いつの間に
こんなに臆病になってしまったんだろう
好き、と伝えることを
ただ
貴方が好きです、と告げることを
躊躇うあたし
春は目の前にあるのに
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