第98話 甘雨
空はすっきりと青く
ずいぶん春めいてきたのに
その憂い顔
きみの心には
雨が降っているのだろうか
もしも、そうなら
翔んでいって
傘をさしかけてあげたいけれど
僕にはもう
何を言うこともできなくて
きみとの距離を
埋めることも
越えることも
もう
それでも
早く
きみの心を濡らす雨が止みますように
叶わないならば
せめて
きみに降る雨が
暖かな春の雨になりますように
優しい春の雨になりますように
何もできない僕に
ただ、そう祈らせて
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