【機神の錬金術師】〜「無能のあんたが憧れの錬金術師なわけない!」と俺を振った幼馴染の聖女。俺が結婚したかった人だと知り死ぬほど後悔してるがもう遅い。俺の錬金術に惚れ込んだ王女と偽装婚約しちゃったので
45話。幼馴染、ロイからの贈り物で悪魔の猛攻をしのぐ
45話。幼馴染、ロイからの贈り物で悪魔の猛攻をしのぐ
【聖女ティア視点】
ヴォアァアアアアッ――!
天を割る咆哮。漆黒の翼を持った下級悪魔が、次々と姿を現した。
「ひゃあぁあああっ! ちょっとこれ、スゴイ数じゃないの!?」
村のみんなの避難先である村長宅は、すっかり下級悪魔のレッサーデーモンに包囲されていた。
「だ、だだだ大丈夫なのですか、聖女殿!?」
後ろに控える村長が、不安そうに尋ねる。私は村長宅を囲む石壁に神聖結界を被せて、守りを強化していた。
悪魔どもは結界の中に入って来ることができず、結界を壊そうと石壁をぶっ叩いていた。
「大丈夫よ! へーき、へーき! なんてたって、私はAランク冒険者の聖女なんだからね!」
下手なことを言ったら、パニックが起きそうだったので、私は必死に虚勢を張った。
まだ私がDランクに降格したという噂は、この村まで届いていなかった。
内心は冷や汗ダラダラよ。
「火を放て! とにかく連中を近づけさせるな!」
お父さんがみんなを指揮して、油壺と火矢を悪魔の群れに撃ち込んでいる。
油に引火した炎が、悪魔を焼いて多少なりとも足止めにはなっているようだけど……
「やっぱり、聖魔法か聖銀(ミスリル)製の武器じゃなければ効果が薄いみてぇだぞ!」
私の隣で、弓を放つランディが舌打ちした。レッサーデーモンたちは、ほとんどダメージを受けていないみたいだった。
無論、ここにはミスリル製の武器なんて貴重品はないわ。
「聖女殿! れ、連中、結界の一箇所に集中攻撃を開始しましたぞ!」
「おっわぁああああーッ!?」
私は神聖結界を補強すべく、魔力を集中した。
石壁が輝きを増して、レッサーデーモンを弾き返す。
だけど私のMPは、早くも空っぽ寸前だった。
魔力回復薬(マジックポーション)を飲んでMPを回復させるも、高価な魔力回復薬のストックは、もう無い。
ここ最近のランディに対する報酬の支払いで、すっかり貧乏になっていたせいよ。
「ヘルメスが来てくれるまで、みんなで耐えるんだ! いいか、絶対にヘルメスは来てくれるぞ!」
お父さんが村人たちを鼓舞する。
「「おぅ!」」
「それに俺たちにはティアちゃんもいる! 絶対に持ちこたえられるハズだ!」
「ああっ! 聖女ティアちゃんは、俺たちの誇りだぜ!」
「み、みんな……っ!」
私の本当の実力を知らない村人たちが、無邪気な信頼を寄せてきた。
早くも限界が近いなんて、口が裂けても言えないわ。
「ええっと……ッ! みんなの中に、魔力回復薬を持っている人がいたら、出してくれないかしら!?」
「戦いに役立つ武器やアイテムはすべてここに集めたが、魔力回復薬はなかったのう。じゃが、ヘルメス殿が来てくれるまで保てば良いのじゃ……なんとかなんるじゃろう?」
村長がやや不安げに答えた。
「ええっ、そうね……よ、余裕よ!」
ああっ、どうして私はロイを追放するなんてバカなマネをしてしまったのだろう。
私がAランクの聖女だって威張っていられたのは、全部ロイのおかげだったというのに……
もし、ここにロイが居てくれたら、こんな苦戦はしなかったハズよ。
「くっ! コイツら、また性懲りもなく同じことを!」
レッサーデーモンが、再び結界の一箇所を集中攻撃しだした。
このままじゃ、いずれ結界が破られるわ。
「そ、そうだわ。ロイから貰ったもうひとつのアイテムがあったじゃないの!?」
今、私が嵌めている、【ドラウプニルの指輪】。ロイの説明書きによると。『たった一度だけ、魔法効果を5倍にする』消耗品らしかった。
ヘルメス様のスタッフ【クリティオス5】ですら、魔法増幅率250%だというのに。本当だとしたら、アイツはすごい発明をしたことになるわ。
「指輪よ! 神聖結界の効果を5倍にするのよ!」
その瞬間、目も眩むような強い輝きが指輪より放たれた。
石壁を殴りつけていたレッサーデーモンが絶叫と共に、すべて消滅した。壊れかけていた結界がより強固になった上に、悪魔たちに甚大なダメージを与えたのよ。
想像以上の効果に、思わずポカンとしてしまう。
「すげぇ! すげぇぞティアちゃん!」
「おお聖女よ! 暗闇を払う太陽よ!」
村人たちから大歓声が上がり、村長は感激に身を震わせた。
「聖女さんよ。あんた、こんなトンデモナイ聖魔法が使えたんだな。見直したぜ」
ランディが口笛を吹く。
「えっ、ああっ……そうね! もちろんよ!」
私は我に帰る。
生き残っていたレッサーデーモンどもは、私の結界に恐れをなして後ずさっていた。
「さぁ、来るなら来やがれ! こちらには聖女ティアちゃんがいるんだぞ!」
みんながスゴイ盛り上がっているけど、指輪は割れてしまった。
その上、MPも尽きちゃったし……こ、困ったわ。
「ぬぉおおお! 見直したぞティア! ロイがいなくても、ここまでの力が出せたんだな!」
お父さんも、大はしゃぎしている。
次に結界がほころんだら、もうダメだとは口が裂けても言えないわ。
「こ、こら、悪魔ども! 私の聖女の力を見たでしょ!? わかったなら、あきらめてサッサと帰りなさい!」
私は悪魔どもに指を突きつけて叫ぶ。
このまま逃げ帰ってよ。お願いだから……!
「な、なにぃいいい!? アークデーモンだと!?」
その時、森の木々を薙ぎ倒して、ひときわ巨大な悪魔が姿を現した。
上位悪魔のアークデーモンだわ。その恐ろしい姿に、思わずチビリそうになってしまう。
「クククッ、すさまじい力だな聖女よ。お前の血肉をぜひとも貪り食ってみたくなったわ!」
「ひぃやあああああーッ! ちょ、ちょっと、私なんて美味しくないわよ!?」
「そうだ恐怖せよ。高潔なる聖女を恐怖と絶望にまみれさせ、命乞いをさせる瞬間こそ、我が最大の喜びよ!」
「高潔だなんて、誤解だってば!? 私なんて煩悩まみれよ!」
アークデーモンが手にした禍々しい槍を結界に突きこむ。
ドォオオオン、という轟音と共に石壁が吹っ飛び、結界が壊された。
「一撃って、う、嘘でしょう!?」
「ティア! すぐに結界を張り直すんだぁ!」
お父さんが叫ぶが、もうそんな力は残っていないのよ。
「た、たたたた助けてロイ!」
「クハハハハッ。我が力に、もう心が折れたか! さあ聖女よ。地獄の炎で焼いてやるぞ!」
「あっ、あれは……!?」
その時、村人の何人かが、空を指差した。
「お前が焼かれろぉおおおおッ!」
次の瞬間、灼熱の炎の奔流がアークデーモンを飲み込んだ
これはまさか【ドラゴン・ブレス】!?
上空を見上げると、機神ドラグーンが猛スピードで迫ってきていた。
「ヘルメス様ぁあああ!」
私は歓喜の声を上げた。村全体からも、歓声が轟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます