43話。幼馴染、ロイに助けを求める
【聖女ティア視点】
「悪魔の群れですって? そんな上位モンスターが、なんでこんなへんぴな村を襲うのよ!?」
「おそらく、例のA級ダンジョンから湧き出してきたんだろうな。ちっ! 考えうる限り、最悪の展開だぜ」
部屋に飛び込んできたランディは、忌々しげに舌打ちした。
「悪魔は聖剣のような特別な武器か、さもなけりゃ聖女の使う聖魔法でしか、まともにダメージを与えられねぇ。どうする、とっととずらかるか?」
「そ、そんなことできる訳ないでしょ! ここは私の故郷なのよ。なにしに来たと思っているの!?」
ここにはお父さんやお母さんだけでなく、昔からの知り合いも、たくさんいる。彼らが無惨に殺されると思うと、ゾッとした。
「だが、実力がDランクそこそこのアンタの手に負える数じゃねぇぞ。何か策はあるのか? 無ければ、悪いが俺は一足先にトンズラさせてもらうぜ」
「ぐっ……そ、そうね」
私は考え込むも、対策はひとつしか思い浮かばない。
ああーっ! この手は使いたくなかったんだけど……
もうプライドにこだわったり、手段を選んでいる場合じゃないわ。
「お父さんがレナ王女にダンジョン攻略を依頼したみたいだから、彼女が近くにいるハズよ。連絡して、助けに来てもらうのよ!」
私は【クリティオス】を取り出して、レナ王女に連絡を取ろうとした。だけど……
「なっ!? ブロックされている!?」
レナ王女の端末から通話を拒否された。「おかけになった端末をお呼びしましたがお出になりません」とのメッセージが表示される。
「まぁ、繋がらねぇだろうな。アレだけのことをやらかせば……」
「ぐわぁああああッ! 心の狭い王女様ね!」
「あんたが、図々し過ぎるんだよ」
ま、まだあきらめるのは、早いわ。
ロイはレナ王女のパーティメンバーだわ。ロイから彼女に連絡をつけてもらうのよ。
さっそくロイの端末にコールをかける。
お願い、出てよロイ……今度こそ、ちゃんと今までのことを全部謝るから。
祈るような気持ちでいたけど、ロイはすぐに通話に出てくれた。
「ロイ、お願い助けて! ラクス村に悪魔の群れが押し寄せてきていて、私たちだけじゃ、どうにもできないの!」
『なんだって……!?』
「レナ王女がダンジョン攻略に来ているんでしょ!? すぐに彼女に村に来てくれるように頼んで!」
ロイはそこで一瞬考えるためか、間が空いた。
『実はレナ王女とは別行動をしていて、彼女がどこにいるか把握してないんだ。もしかしたら、間に合わないかも知れない。だから、もっと強力な助っ人を呼ぼうと思う』
「えっ? もっと強力な助っ人って?」
『ヘルメスだ。レナ王女から彼に連絡してもらって、機神ドラグーンで向かってもらおうと思う』
あまりにも意外な展開に、私は度肝を抜かれた。
「ヘルメス様が!? えっ、でもここは何にも無いド田舎村なのよ。ヘルメス様が、王国最高の戦力が来てくれるわけが……!」
『悪魔は通常の手段では倒しにくい上に、放置していたらドンドン人を殺す。きっと、ヘルメスは動いてくれるハズだ』
「あ、ありがとうロイ!」
私は歓喜に身を震わせた。
『だから、ヘルメスが到着するまで、絶対に無理に戦おうとしたら駄目だ。みんなを村長宅に集めて、そこに聖なる結界を張って耐えるんだ』
ロ、ロイったら、頼りになるじゃない。
村長宅はいざという時の避難場所になっていた。敷地は魔物や山賊に対抗するための高い防壁で囲まれている。そこに神聖結界を張れば、即席の砦になるわ。
「わかったわ! ヘルメス様が到着するまで、私が聖女の力で、みんなを守るわ!」
『頼んだぞ。ティア』
ロイから通話が切られた。
私は最後に、今までの謝罪を口にしようとしたけど、機会を失ってしまった。
………だけど、ボヤボヤしてはいられないわ。
さっそく行動を開始するわよ。
「ヘルメスを動かすだと……?」
ランディが何やら訝しげな顔をしていた。
「ほらっ! ランディもロイの言う通りみんなを村長宅に避難させるのを手伝ってよ!」
「……おい、なぜアンタは今の話を鵜呑みにできるんだ? 本気でヘルメスがここに来ると思っているのか? もし来なかったら、どうするつもりだ? 確実に全滅するぞ」
「えっ、それは……っ!」
ロイは嘘をつくようなヤツじゃないからよ。
思えば、あいつはいつだって私を助けてくれていた。
今回だって、必死になんとかしてくれようとしているのが、声から伝わってきた。
ロイがなんとかするというなら、きっとなんとかしてくれるハズよ。
だけど、その感覚を他人に説明するのは難しいわ。
なにより、ロイが正直者であるなら、ロイの正体はやっぱりヘルメス様ということに……
その考えを吹き飛ばしたくて、私は尊大に胸を反らしてまくし立てた。
「ヘルメス様は新兵器【聖竜機バハムート】を開発しているのよ! 聖竜機よ! 聖竜機! 名前からして、聖女である私しか動かせないに決まっているわ! ヘルメス様は私を必要としてくれているのよ! だから絶対に来てくれるわ!」
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