5・さよならと再会
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佳奈はそんな風に思っていたが、それだけが原因ではなかったようだ。
一志との友人関係を終えたのち、しばらくはぽっかりと心に穴の開いた状態が続いていた。
佳奈は、趣味について深く話せる相手とは、単なる恋愛感情を持つよりも喪失感が高いことを知る。
そんな時、佳奈に声をかけて来た者がいた。
強い喪失感を抱える佳奈にとって、その出会いは心を埋めるのに最適であったが、再び価値観という壁が立ちはだかる。
趣味を通して出逢った二人は、意気投合し仲良くなったのだが……。
「良い人だったんだけどな」
佳奈はぎゅっと膝を引き寄せ、額を乗せる。
彼はとても気の良い遊び友達であった。二人の間に溝が出来てしまったのには理由がある。
長くその趣味に携わってきた佳奈に対し、彼は始めたばかりの初心者であった。真面目な彼は、佳奈に追いつきたいと同じく始めたばかりの仲間とばかり遊ぶようになったのだ。
ただただ待っているだけの日々は、佳奈を憂鬱にさせる。それでも佳奈は一年以上我慢し続けた。
ついに佳奈は、事実上の束縛に耐えられなくなる。
────他の人と遊ぶなと束縛するのはいい。
だったら一緒に遊ぼうよ。
時間の無駄。
それが佳奈の本音であった。人と会うのがダメだというのなら、SNSで会話をするくらいはいいだろうと佳奈はSNSを始めることにする。
「あれが地獄の始まりだったんだ」
────始めて数か月後、一志との再会。
あれが意図的だなんて、誰が想像できたというのだろう?
コンタクトを取ってきたのは一志の方だった。
たまたまSNSで佳奈を見かけ、声をかけたという。実際のところ一志は、佳奈が始めてすぐの頃に見つけずっと張っていたのだが、佳奈はそのことを知る由もない。
”もしかして、一志?”
一志は、佳奈が自分のことを忘れていると思っていたらしく初めてのようなふりをして話しかけてきた。
しかし佳奈にとっては忘れるはずもない。
今が辛いからこそ、美化して思い出される楽しかった日々。
SNSを通してではあるが、また趣味の話で盛り上がれるのではないかと期待してしまっていた。
だがすぐに、それは大きな間違いだと気づかされることとなる。
”なんだ、俺のことわすれちゃったかと思ってた”
”覚えてるよ。彼女とは上手くいってるの?”
佳奈は自分が一志から離れたことで、少なくともトラブルが一つ消えるものだと思っていた。
「どうして同情なんてしてしまったのだろう?」
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