第六話・個性的すぎた

「では私から。

真宮 美麗しんぐう みれいです。司令部の予定です。よろしくお願いします。」



 真宮さんは席を立つと、そう言って俺に向かって礼をした。


 真宮さんは優等生って感じの女の子だ。制服も全く崩されていなくてピシッとされている。多分頭もいいんだろう。俺と真反対だ。


 これは多分、俺に向けてやってもらっている自己紹介だ。ありがたいし、悪気がない事は分かってるけど、ボッチなのを感じて辛い。



 「もしかしなくても優等生?」


 「少なくとも貴方よりは優等生なんじゃないでしょうか?」


 「俺、初対面にして既に馬鹿ということを見抜かれた。どーしよ。」


 「ちょっとー?ウチにもさせてや〜

葉室 葵はむろ あおいです。支援部の予定です、よろしく〜」


 「それじゃ私も自己紹介しますかー

東雲しののめ 月花るかです。医療部の予定らしいです。よろしくしてね〜」



 一列目の右側に座っているのが葉室さんで、フワッとした金髪でショートの子。関西弁で元気にピースしてくれた。

 続いて自己紹介してくれたのが、葉室さんの斜め右後ろ、二列目の一番右に座っている東雲さんで、白髪の片目が隠れてる女の子。


 二人とも明るい系の女の子って感じだ。東雲さんは裏に何か隠してそうな気がして怖いけど。ところで一つ気になる事がある。



 「司令部とか何?俺全く分からん。」


 「え、知らないんですか?天照の部隊の中での役割ですよ。今度授業ですると思いますけど。」



 そんなことも知らないのか、なんて言いそうな勢いで真宮さんが言った。


 俺はおバカポジションになるのかもしれない。別に馬鹿な事は否定しないけど。



 「ふふ……私も自己紹介してもよろしくて?」



 ちょうど東雲さんの隣に座ってる子が優雅に立ち上がった。

 派手すぎない薄ピンクの巻き毛をしていて、お嬢様口調だけど全くウザく思わない。



 「ミアン・ラズリアです。五年間、仲良くしてくださいね!」



 俺に向かって、元気いっぱいにガッツポーズをしてくれた。

 ここまでは順調だ。皆んな仲良く出来そう。個性強そうではあるけど。


 次にラズリアさんの隣の男子二人組の片方が手を挙げた。二人とも詰襟の同じ制服を着ている。同じ中学出身か、羨ましい。



 「次、僕ね。伊桜 叶夢いざくら かなむです。幼馴染のコイツと一緒に来たんだ〜仲良くしてね〜!ほら柚希も!」



 白茶色に白のインナーカラーを入れている髪。少し癖っ毛で髪を一つにまとめている。人形のように整った見た目に、砂糖菓子みたいに甘い声の天使みたいなヤツ。

 コイツ絶対女誑しだ。直感がそう告げる。


 伊桜は自分の名前を名乗ると、隣に座っていた男子の腕をひいて自己紹介を促した。



 「……飛鳥馬あすま 柚希ゆずき。」



 聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソッと話した。少し高くて耳に心地良く響く声だった。

 月白色の髪で寝癖がありらこちらにはねまくっている。俯いていて顔はよく見えない。


 だけど、人間は顔よりも性格とかの内面で見るものだ。そんな感じが悪い訳でもないしきつと良い奴に決まってる。



 「飛鳥馬とかもそうだけどさ、ここの人、珍しい名前多くない?」


 「んー、かもしれないねぇ。」



 二人とも綺麗な髪をしている。美容師の母の影響か、髪をイジるのは結構好きだ。いつかやらせてくれないかな。なんて思った。


 次に三列目の左、ズボンの女子二人が目配せしあい立ち上がった。

 こちらも同じ制服を着ている。

 白藍色の髪をポニーテールにしている子と淡藤色のロングの髪の子の二人組。なんだかおちゃらけてそうな雰囲気の二人だ。



 「俺ね、文月 彗夜ふづき けいや。コイツの双子の兄貴な。よろしく。」


 「僕、文月 藤真ふづき とうま。双子の弟の方ね。仲良くしてねー」


 「え、男?」


 「あ、うん。普通に男。」


 「マジ?ごめん。」



 てっきり、ズボンは別に好きで履いてるのかと思ってた。まさか女の子じゃなかったとは。双子だったことにも驚いた。

 慌てて謝る。間違われることに二人は慣れてるのか、笑って首を振った。



 「全然いーよ。ね、彗士?」


 「ナンパされるよりかはマシ。」


 「私もよろしいでしょうか?」



 彗夜の隣、三列目の一番右に座っているがっしりしている男子が手を挙げた。

 わたくし、と言っているところや佇まいもあり、すごく上品そうな雰囲気で、琥珀色の髪もすごく綺麗。



 「紅林くればやし 和楓かずはです。よろしくお願いいたします。」



 紅林、どこかで名前聞いたことある気がする。なんだろう。喉まで出かかってるんだけど思い出せない。

 紅林が俺の方に手を向けた。



 「黒瀬さん、どうぞ。」


 「え?俺?

あー、黒瀬 糸。よろしく。好きなように呼んで。」



 一谷先生より適当な自己紹介を終える。

 皆んな俺の周りに集まってワイワイ喋り始めた。俺もその輪に入れてもらい喋る。


 伊桜のコミュ力はプレデター並みで、反対に飛鳥馬は超人見知り。ラズリアさんは海外の出身。色んなことを教えてもらった。

 流れで男子は下の名前で呼ばせてもらうことにもなった。


 話してみると、皆んな見た目よりもかなり個性的だった。とりあえずは仲良くなれそうな感じがする。

 話もひと段落ついたとき、真宮さんが皆んなに声をかけた。



 「ここでずっと騒いでてもアレですし、寮の方行きましょうか。」



 その言葉にそれぞれ頷き、続々と教室を出て行く。やっぱりどんな部屋なのかは気になっていたらしい。

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