第6話

 エドゥアルトとシャルロッテが縒りを戻したという噂は立ち所に広まった。


 最初は「あの王子と男爵令嬢の恋仲がそう易々と崩れるはずがない」と疑ってかかっていた者たちも、二人がベタベタと親密に寄り添っている姿を直に見て、噂は本当だと認めざるを得なかった。


 そして、学園内のパワーバランスにまたぞろ歪みが生じる。否、今回は元に戻ったと言ったほうが良いのだろうか。

 男爵令嬢派だった者たちも「やはり侯爵令嬢こそ身分も教養も王子に釣り合う正当な婚約者」だと、掌を返して侯爵家の派閥に戻っていった。


 それに比例して、ローゼの立場はぐんと悪くなる。

 元より彼女は「卑しい身分のくせに厚かましくも王子に近付く女」と、特に令嬢たちから快く思われてはいなかった。

 しかし、仮に彼女を刺激して王子の勘気に触れると己の家門の立場が悪くなる。だから令嬢たちはモヤモヤして鬱々とした気持ちを、少しずつ少しずつ胸の中に溜め込んでいたのだ。


 そんな暗澹とした空気のところに、シャルロッテのどんでん返しの大逆転である。これには令嬢たちは歓喜した。

 これで、あの礼儀知らずの男爵令嬢に大きな顔をされずに済む、やはり我が主は侯爵令嬢なのだ……と、シャルロッテの支持はどんどん厚くなって行った。


 令嬢たちは、これまでの鬱憤を晴らすように、ローゼに対して辛く当たるようになった。彼女にとって頼りの王子様も今や婚約者に首ったけだ。


 完全に居場所のなくなった彼女は体調不良を理由に、いつしか学園に来なくなっていた。

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