第19話 RPGあるある その4

「一体! 全体! どうやって!」


 客室のベッドの横に気がついたら立っていた私は、頭を抱え絶叫した。


 よくある木製のシングルベッドに私と推しと鶏がどうやって寝たのー!?


「いやー、狭かったけど良く眠れたなー」


 隣に立っていた推しが、伸びをした。


 狭かった!? やっぱり一緒に寝たの!? このベッドに!?


「テテテ、テイオスさん」


「おう、おはようっ、ココちゃん」


「あ、はい。おはようございます。じゃなくてですね! こ、こ、このベッドに、い、い、一緒に寝たんですか?」


「ああ、エンウーは鶏だから外に出されていたけどな」


 あの短いBGMの中で、そんな事があったのか。


「ココちゃん寝相悪いから、落ちないように抱き止めとくの大変だったなー」


「すいません……」


 わははっと笑われて、なんだか申し訳なかった。が、ちょっと待って?



『ココちゃん寝相悪いから、落ちないように抱き止めとくの大変だったなー』



 抱き止めた!? 抱き!? 止めた!?


「テッ、テッ、テイオスさん。ど、ど、どうやって私を……」


「んー? そりゃーこうやって」


 推しは両手を広げ、自分の腕を抱き締めた。


「……」


 それってめっちゃハグーン!

 あの、テレレレレッテテーの間に! 抱き締められていた! 時間短い! 何も堪能していない! クソウンエーめぇ!


 はっ! そして、そうだ!


「私たち宿屋に泊まったけど、アルマスはどうしているんでしょうか!? まさかもう、お城に行って次の場所へ!?」


「いや、さっき隣の部屋から出て来たぞ」


「そうですか、よかったー」


「じゃあ、フロントに挨拶して、エンウーを呼びに行くか」


「はいっ」




 フロントにて。


 コマンド選択。


 はなす


『※「ゆうべは お楽しみでしたね」』


「…………」


 何が!? それってさ、男主人公が姫を助けた時に、ウッフンアッハンをしたと思わせるセリフじゃないの!?


 私、女ですけどー! 主人公ですらないですけどー!


 いや、もしかしてあれか!? 推しとクリスマスデートをしていた夢を見たことか!? あなた夢魔なんですかー!? 夢の中に入れるんですかー!?


『※「では また どうぞ」』


 また来ても、次の日はもう話しかけんわー!





 宿屋の外。


「ココさん! 寒かったコケー!」


 エンウーがパタパタとやって来た。


「そんだけ羽毛あんだから、大丈夫だろ」


「そんなことないコケー! ガクガクコケー!」


「そんな事より、アルマスは? もうお城に向かった?」


「ココさん、酷いコケ……。そんな事って……」


「アルマスは!? お城に向かった!?」


 わざと大きな声で言った。しつこいから。


「……向かってるコケ。ほら」


 エンウーが翼で差した方向を見ると、ゆっくりと主人公アルマスがお城へ向かっていた。


「よし! テイオスさんっ、こっそり後をつけましょう!」


「おうよ!」




 カリール城、グレーがかった白壁で赤茶屋根の立派な城だ。

 その中の、赤い絨毯広がる豪華な謁見室。


『カリール王「おお! アルマス! 勇者の血をひきしものよ! よくぞ参った!」』


 主人公アルマスはカリール王とお話中。それを、堂々と後ろで見る私たち。

 だって、謁見室は長い! 奥行きが! ウィンドウ出るから会話はわかるけどさ!

 それに、いいんだ、会話中は一点集中で、こちらに気づかない。


 そして、ここでまたあるあるが。それは。


「なぁ、ココちゃん」


 推しが小さな声で話しかけてきた。内緒話感があってドキドキするー!


「はい、どうしました? テイオスさん」


「カリール王は面会の約束してねーのに、会えたけどよ。もしかして、王様ってみんな急に来ても会ってくれんのか? 王様って暇なのか?」


「…………」


 全世界の皆さーん! 聞いてましたかー!? 推しが全プレイヤーの声を代弁してくれましたよー!


 でも、これもあるあるなんですよ、テイオスさん。


 RPGあるある、その4。


 アポなしで会える王様。


 なんですよー! って言えたら、どんなに楽か。


「……きっと、たまたまですよ、たまたまっ。たまたま運が良かったんですよ、アルマスはっ」


「あー、なるほどなー。勇者の末裔で王に呼ばれるくらいだもんなー」


「そうです!」


 そういう事にしておいてください!


 それに、あれですよ? 

 大臣とか、王様の部下なるキャラが現れて。

 「お待ちください! 王! そんな簡単に信じてはいけません。勇者の末裔を名乗る偽者かもしれません。姫様を助けるのに、相応しいかどうか、試練を与えましょう!」

 なーんて、言われずにサクッと会えるんだから。良いあるあるなんですよー。


『???「お待ちください! 王!」』


「ん?」


 何かいきなり奥からやってきた。どうやって来たん? っていうか、こんなキャラいた? 誰このハゲチャビン。


『大臣「そんな簡単に 信じてはいけません 勇者のまつえいを名乗る 偽者かもしれません」』


「…………」


 隣のエンウーを見た。


「プシュフフップー」


 外方そっぽを向き、いつものダサいくちばしぶえを吹いた。


「……」


 こっの! くされ鶏がー! 私の心の中を完コピしやがったなー!


−−−−−−


 あとがき。


 クリスマスに間に合わなかった(泣)


−−−−−−


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