第34話 いっぱいいっぱい
わかっている。
わかっているさ。
この焦燥感は緊張感は強迫感は自分が勝手に創り出したものだって。
決して。
決して後方から力強く追って来る国王が意識的に無意識に放っているものではないって。
わかっているのに、
(いいいいいやあああああぁぁぁ!!!早く!!!秘密の竹林を見つけ出さないと!!!)
国王が秘密の竹林に行く仲間となり、竹葉は錯乱状態に陥っていた。
早く見つけろ早く見つけないと剣士の任命を取り消すぞ蛙に変化させるぞ。
など。
国王が強迫したわけでは決してない。
それどころか。
竹職人ではないおまえが秘密の竹林を見つけ出すのは困難なことだと重々承知しているので、時間はいくらかかっても構わない。
と。
優しく仰って下さったのだ。
が。
(いいいいいやあああああぁぁぁ!!!早く!!!秘密の竹林を見つけ出さないと!!!)
ハヤクハヤクハヤク。
国王に何かあったらと考えると否、考えずとも心臓のバクバクが治まらないのだから国王を早く城に安全な場所にお帰りになってもらわないといけないのだから早く秘密の竹林を見つけ出さないといけないの。
竹葉の全神経は尖りに尖っていた。
秘密の竹林の探索と国王の安全の確保。
この二点にのみ、全身全心を注いでいると言っても過言ではなく。
自分の食料水分確保や用を足す行為もそっちのけで国王に時間と物を捧げまくった結果。
自分が居たら竹葉の利にならないと察した国王は言ったのだ。
こっそりついて行くから安心しろ、と。
ものすごい速度で片目を瞬かせながら。
そして、竹葉の言葉を待つことなく、姿を消したのであった。
「いいいいいやあああああぁぁぁ!!!」
カムバーック国王!!!
確かに傍に居られると頭も身体も心もいっぱいいっぱいでとてつもなくしんどいけれども、姿が見えない場所からついて来られてもそれはそれでとてつもなくしんどいですだから本当は秘密の竹林に一緒に行くと言ってついて来ないで。
ゴ―ホーム―国王!!!
魔女の道具を使って城まで送りますから!!!
(2022.10.16)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます