第8話 泳ぐ蛙
傍から見れば、何とも愛らしく和む場面ではないだろうか。
萌ゆる葉に囲まれて、向かい合っている二匹の蛙と一羽のオカメインコなんて。
目をとろんとさせた竹葉は、あははうふふとぴょんぴょん飛び跳ねたくなった。
現実逃避?
いいえ、違います。
蛙の生き方を受け入れただけです。
この素晴らしき森の中で、誰に保護されるわけでもなく、自由に、飛び跳ねたり、お花やお葉やお藻やお苔を食べたり、土に潜ったり、木に登ったり、雨に打たれたり、川に飛び込んだり、川の中で泳いだり。
はは。
人間だった時は泳げなかったけど、今は蛙。きっと泳げるはずさ。
ほ~ら。
ダイジャーンプ。
ジャボーン。
流れが緩やかな川です。
深さもそうありません人間だった時の俺の膝より下の深さです楽勝です。
ほ~ら。
スーイスーイスーイ。
両手両足を軽やかに華麗に弧を描くように動かして。
スーイスーイスーイ。
川の流れに沿って。
スーイスーイスーイ。
すごい感激だ水の中がこんなに軽いなんていつもは重さしか感じないのに。
「おい、原符。こやつ、大丈夫か?急に地面の上で泳ぎ始めたぞ」
「………」
「おいこら何を黙ってんだ返事くらいしろ」
「………」
「あ。そうであった。われが黙らせておったんだった」
「………」
(2022.9.29)
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