第5話 自己紹介
そう言えばさ。
にたにた顔を一変させて真剣な顔になった竹職人が、今までの軽薄な口調を封印して重々しく言葉を紡いだので、剣士は知らず生唾を飲んだ(そもそも潰れた喉を回復させる為に生唾をせっせと生成、飲み込み続けていたわけが)。
「わしの名前、
「はい。知っていますけど」
あ、声が出てる。
ちょっと枯れてるけど。
どうやら喉は無事だったようだ。
「あんたの名前、なんてーの?」
「俺、ですか?」
「そう」
「あ。え。俺の名前は、
「植物の竹の葉っぱで、たけは?」
「はいそうです」
「はあはあ」
「はい」
「ふ~ん」
「………」
竹職人の原符に矯めつ眇めつ眺められている下っ端剣士の竹葉は、居心地が悪く視線を右往左往させながらも直立していた。
が。
「竹葉。あんた、竹職人に「ばかものぐあわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
赤色の頬のチーク。
三日月形の頭部の冠羽。
全体の半分を占める長い尻尾。
これらが特徴の鳥であるオカメインコが矢の如く飛び込んで来たかと思えば、その愛らしい四本の細い足の指を丸めて原符の顎を蹴り上げては、家を突き破り遥か空へと飛ばしたのであった。
ぱらぱらと。
豪快に天井と屋根が壊れたにしては少ない落下物に疑問を抱く暇もなく、竹葉は血相を変えて逃げた。
面倒事に巻き込まれたくなかったから。
オカメインコ、いや、魔女に捕まって蛙に変えられたくなかったから。
(2022.9.26)
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