第12話 王子様を探しに行きます

ネリカは侍従長に引き続き王様にも王子を探しに行くと告げた。

「王子を探しに行くと?」

ネリカはうなずいた。

「・・そうか」

国王はネリカがサーニの死を受け入れられないと不憫ふびんに思う。

其方そなたはそれほどまでに王子の事を・・・」

「王子さまを探しに行くのをお許しください」

「外は危険だ。魔物の脅威は其方そなたも分かっているだろ」

「はい・・でも・・・」

ネリカの深刻な顔を見ていると王様は何も言えなくなった。


「お前がそこまで言うのなら止めはしないが・・・誰か兵士を付き添わせよう」

「いいえ・・大丈夫です」

ネリカは兵士の付き添いを断り謁見えっけんの間を出た。

「ネリカがあんなにも心配しているというのに・・王子は本当に死んだのか?」

ネリカが生きていると信じているのだから国王も王子が生きていると思うようにしたが、ネリカの事が心配でもある。

「あのを一人で行かせて大丈夫なのか?王子は何をしているのだ!」

「帰って来たら強く叱ってやらないといかんな」

「王様、叱るのもほどほどにしてくださいよ」

「そうですよ、あなた」

「無事であの子が帰ってくれば良いではありませんか」

「大丈夫と思っているからあのは一人で行くと言っているのでしょう。ネリカは何も考えずに行動を起こすではありませんよ。」

国王は宰相さいしょうのナムスときさきたしなめられた。


ネリカはサーニに王様の許可をもらったことを言った。

「本当に行くの?」

「当り前です」

あまりにもお気楽すぎる王子にネリカはあきれてしまう。

「王子さま、今のあなたは私以外からは見えないのですよ」

「誰からも、王様からも気にされなくてよいのですか?」

「ネリカは僕以上に僕の事を考えてるね。」

「王子さまが考えなさすぎなんです!」

王子様の事になると気迫がすごいネリカだが、どうしてそんなに真剣なのかサーニには分からない。


「すぐに出発します」

「え?もう少しゆっくりして行こうよ」

自分が今、おかれている現状が分かっていないサーニにネリカはあきれるばかり。

「すぐに旅・だ・ち・ま・す!!」

ネリカの力強い言葉にお気楽な王子様も「うん」というだけだった。


「ネリカ」

「何ですか?」

サーニはふと思いついた疑問をぶつけた。

「その服で行くの?」

ネリカは侍女服のままなのだ。

「何か問題でも?」

「ううん、いいんだけど動きにくくない?」

「大丈夫です。」

「大丈夫ならよいけど」

「では、行きましょう」


「そうだネリカ。国から出たら危険だってわかっているよね」

「はい」

「僕はこんな姿だから戦えない」

「はい」

「だから僕の代わりに戦ってね」

一瞬の沈黙の後

「えええええ~っ」と城中に響き渡るような大きな声をあげるネリカだった。


ネリカにとって”たたかう”という選択肢はなかったから今になって震え出した。サーニが危険なのは間違いないが、自分も危険という事も認識したネリカだった。

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