助けてください──────!!────

俺は親友と一緒に下校していた時だった......

「なぁ、見てみろよ!グラウンドの砂場の上に何かいるぜ!」

「なんだ?」

「......確かに何かがいますね」

そこにいたのは小さな女の子であった。

それを見た瞬間、俺たちはすぐに気づいたんだ――

この子、助けを呼ぼうとしているってな。

「おい!!誰かぁ!!!」

「......!!」

その時だ――俺の耳にはっきりと聞こえたんだよ――“お兄ちゃん”、と。

それを聞いた途端、俺はすぐにその子の方へと向かっていった!

「待てぇ~!!!!」

「あっ! お兄ちゃぁぁ~~ん!!!こっちぃぃぃ~~!!!!!!」

そして俺は彼女を抱きかかえると、そのまま走り出した......!

しかしその瞬間だった。突如として謎の光に包まれ始めたのだ!

「――っ!? 一体何が起こっているんだ!?」

「分からないよぉぉーー!!!!???」

俺たちが突然の状況に戸惑っていた直後――

突然、視界が真っ黒になっていきやがった!

それだけじゃねぇ!

周囲の空間までもが大きく歪んでいき始めちまったんだ!

この現象の正体がまったく分からねぇまま、俺たちは意識を失ってしまった......―― 今、どこにいるの......?

目を覚ますとそこは見知らぬ森の中だった。

どうしてこんなところにいるのか分からず困惑する俺......

でも、そんなことよりも......ここはどこなのか?

それにこの子は一体誰なんだろうか?

「うぅ......」

俺がそう思っていた矢先、女の子がゆっくりと目を開けたかと思うといきなり涙を流しながらこう言ったんだ――

「おじちゃん......だれ......?」ってなっ!?

おじさんだとぉ~~~~~!!??

誰がおっさんじゃぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!

俺はまだピチピチの18歳だぞぉぉぉぉぉーーーー!!!!!

......まぁ、そんなことは置いといて......この状況をどうにかしないとなぁ~!

だってこのまま放っておくわけにはいかないだろう!

そう思いつつ周りを見渡してみると、そこには森があった。

しかもかなり広いようでかなりの深さがあるようだった。

こんな場所にいたらいつ迷ってしまうか分からないし......

仕方がない、一旦安全な場所まで移動するしかなさそうだな――

そう思って移動しようとした瞬間のことだった。

「あ~、ようやく見つけたぞ~」

突然どこから声が聞こえてきたのかと思ったら、目の前に一人の男が立っていた。

黒髪に黒色の瞳をしていて身長も180センチ以上はあるであろうその男の顔を見た瞬間、俺とその子はすぐに分かった

――こいつもしかして、この子のお父さn――

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!??」

突然大声をあげる俺のことに対し、その男は驚きながらもこう言ってきたんだ。「......お前さん、何者だ?」

すると俺はすぐに答えた。

「あぁ、悪いねお兄さん。実は俺も何が何だか分からなくて困ってるんだよ」

そう言いつつ俺は男に向かってこう言った。

「ただ一つ言えるのは――」

「目が覚めたら何故か知らない森の中にいたんだよ」

俺の言葉を聞いた途端、目の前の男は不思議そうな表情で俺にこう言った。

「何だそりゃ? 森の中ってのは確かにそうだが、それだったら何でわざわざこんなところまで来たんだい?」

その言葉を聞いた途端、俺は思わずため息をついてこう言った。

「......俺だって自分が何故ここにいるのか分からないから困ってるんだよ。けどそれ以前にまずはここがどこかも分からないからな。だから、今はまずここから出て行かないことにはどうにもできないわけだよねぇ~」

そう言うと、男は納得顔でこう言った。

「なるほどね。要するに迷子ってことかい?」

その言葉に頷いた後、俺は続けてこう言った。

「そういうことだね。というわけで、とりあえず俺はこの先に進んでみる事にするよ」

俺がそう言った時だった――

ぐぅぅぅぅぅ~~

「............」

目の前の腹の虫を鳴らす音が聞こえてきた。

音の発生源は俺じゃなく目の前にいるこの男だったのだが、どうやらそれは図星だったらしく――

『..................』

二人同時に黙り込んでしまったその時――

「......はぁ、仕方ねえな。おい小僧、今晩は俺の家で飯食ってくか?

流石にそのまま見捨てるわけにもいかないしな」

『!!』

いきなり言われたその言葉に驚いたまま固まっていると、

男は少し呆れながらこう言った。

「なんだぁ、お前さんも腹減ってたのかい」

それに対して頷くと、男はこう聞いてきた。

「まぁいいや、それじゃあ早速行くかい?

っとその前に自己紹介がまだだったな。

俺の名前は轟雷(とどろき) 光輝(ひかり)っていうんだが......ってどうした?

名前くらい聞けるだろうに」

不思議そうに聞いてくる男の人に対して俺は慌てて言った。

「いや、普通に知らない人の家に行って良いのかと思ってて......」

その言葉に納得したように頷きながら男の人も口を開いた。

「あ~......そういえばそうだったなぁ......。でもま、別に気にしなくても良いぜ。なんせここは俺の家でもあるんだからな。とりあえず着いて来いよ。腹が減ってるんだったら一緒に料理作って食いたいし」

そう言いながらニッと笑う男の人――

轟雷さんに少しだけ恐怖を感じていた俺がそれに答えようとする前に、後ろから大声が響いてくる。

「あー! またみゃー姉帰ってきてた!」

その声に反応して振り向いた瞬間、そこには一人の女の子が立っていた。

見た感じ小学一年生くらいで、髪は黒色のショートヘアで目は青色。

身長はあまり高くなく、胸の大きさに関してもかなり小さいため、男としてはかなり背が低く見えるが、それよりも目を引くのは女の子らしい綺麗な顔と服装をしていた事だ。

そしてその子の手には一冊のノートがあったのだが、そのノートを開いた瞬間に、その日記帳に書かれていたものを見て背筋が凍った。

a4月△日晴れ

今日からパパと一緒に暮らすことになりました。新しい学校に通うのが楽しみです。

b5月○☆×日晴れ

今日はとても楽しかった。

クラスの男子たちがわたしの事をバカにしてたけど無視した。

だってあいつら全然わかってないんだもん。

わたしはとっても賢いんです。

だからあんな奴等なんかより絶対に頭良いんだ!!

(a3) 7/■★月◎日雨 もう最悪!

せっかく夏休みが始まったと思ったのにぜんぜん遊べなかった!!

今日こそあいつらを見返してやる!!

(b6) 9/□◎日曇り お兄さまが家にいるけど、今はそれどころじゃない。

今わたしがやっている宿題の事がわからない所があって、それをお兄ちゃんに相談したら『勉強を教えてあげる』って言ってくれたの!

やったぁ!! この調子で明日明後日までに終わらせればきっと明日は遊べるよね! よーしやるぞぉ!!

「......このノートは一体なんだよ?」

そんな俺の問いかけを無視して彼女は言葉を続けた。

「今日は学校の友達がうちに遊びに来てくれて、みんなで遊んだりして本当に楽しかった~! それでね! その後友達のお母さんからケーキをもらって食べたらすっごく美味しくてさぁ~♪ あぁ~また食べたいなぁ......」

「おい」

少し強めに声を掛ける俺に対して、彼女は笑いながら答えた。

「あははっ♪ わかってるって! さすがに一人で食べるわけじゃないよ!!」

「いやそうじゃなくてだな......!(あれ? もしかしてコイツ......)」

その時だった。

家のインターホンが突然鳴り響くとそれと同時に玄関の方から母さんの声が聞こえてくる。

「あらあらまぁまぁいらっしゃい♪ ささどうぞ上がって♪」

俺はすぐさま察してしまった......。

多分アイツだ......。

そう思った途端、リビングのドアが開いて母さんが現れた。

「ただいまぁ♪ ごめんね待たせちゃってぇ♪」

彼女の存在に気づいたのか一瞬驚いた表情をしていたがすぐに笑顔になった。

だがそれも束の間――。「お帰りなさいあなた! さあみんな早く入ってちょうだい!」

そう言うと母さんはそのままキッチンへと戻って行った。

彼女がリビングに入った瞬間......。

ドスンッ!!!

「いっっだぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

何かが勢いよくぶつかった様な音が部屋に響いた。

同時に悲鳴のような声が聞こえてきた。

「きゃっ!? ちょっと急に抱きつかないでくれる!!」

そう言って母さんは彼女を叱る。

そう怒られた彼女だがどこ吹く風と言った感じで反省する素振りすら見せず満面の笑みで答える。

「えへへへへへへへっ♪ 別にいいじゃん減るもんじゃなしぃ~!」

その様子を見て俺は頭を押さえながらこう言うしかなかった。

「お前な......。少しは自重しろって言っただろ......?」

すると彼女は笑いながらこう言った。

「だいじょぶだってばぁー! ねぇママ? パパ?」

その言葉を聞いて父さんも笑顔で頷く。

「あぁそうだな。それにあの程度の衝撃で倒れるほどヤワじゃないから大丈夫だよな?」

「うん! わたしもう頑丈だから大丈夫! また遊びましょうねー♪」

そして彼女は手を振りながら去っていった。

それを見送る俺と両親。

「ふふっ♪ また楽しみだなぁ~」

そんな彼女の姿を見ながら母さんは嬉しそうにそう言った。

そんないつも通りの日常を眺めつつ俺もこう呟いた。

「相変わらず騒がしいやつだなぁ......。だけどまぁそれが楽しいんだけどさ」

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