第4話 因縁…いや、悪縁。
「因縁………いや、悪縁だな」
辰爾が行ったそれを聞くと、その女性は無言で辰爾に襲いかかる。
それは互角の戦いだった。
辰爾は魔法、
世界にたった七柱しかいない龍種と互角なんて、どう考えてもおかしい。パワーバランスが崩れるだろ、おい。
「………邪龍は私が………」
秒速数十回の剣戟を辰爾は受け止めている。
なんで辰爾は反撃しないのか?
「やはり邪龍。簡単にはいかないね。
『
聞いたことのない
彼女がその
焔の角と、氷の角が。
そして、亜空間から、同じ剣をもう一本取り出し、片方に焔、片方に氷を
「マジかよ。 焔と氷を同時に使うなんて、その
辰爾が、驚いてる?
俺だって初めてみた。
「そんなに可笑しいことなのか?」
「当たり前だよ。
炎と氷は属性的に正反対だ。同時に使用なんてしたら相殺して両方とも発動しなくなるから、同時使用なんて出来るわけがない」
「ああ。 だから
この
それに伴い、周りへの影響も強くなっている。
躱された斬撃が周囲の木々を続々と倒している。
「それ、俺たちも危ないんじゃ」
その瞬間、こちらに飛んでくる斬撃を躱そうと俺が後退した─────が、しかし、斬撃の速度に回避行動が間に合わず、俺はそれを諸に受けてしまった。
「マジ………かよ」
その斬撃はパッと見ても秒速30mは優に超えていた。それもその他の斬撃ひとつひとつ全てが、だ。
後退するだけじゃ避けられないな、これ。
俺はその斬撃ごと吹っ飛び、ひとつ木を薙ぎ倒し、地面に叩きつけられた。
意識が朦朧としている中で、聞こえた声がシノンの焦る声。
それと俺が飛んでいったのを見た辰爾が、敵に強力なノックバックを施し、戦闘を放棄して俺のところへ来たことも見える。
ノックバックを施すときの目が、
「どうなってるッ!?回復魔法が効かない」
「バカ、焦るな。シャルルは
シノンに諭され、冷静さを取り戻した辰爾。
「ありがとう。
やっぱりこうなったか。実際、見えていたハズなのに、現実で起こってしまうとどうも慌ててしまうみたいだな。
だが、やることは決めてある」
片側だけにある赤い椛の耳飾りを外し、俺の胸の前に置き詠唱を唱える。
「これで準備は調った。
シノン、シャルルのこと
今まで消していた先程のような強烈なオーラを全開にしたまま再戦に臨む。
周りにあ植物の中でも、魔力に耐性の少ないもの(と言っても迷宮内にあるものだから普通の数十から数百倍は強い筈だけど)から枯れていく。
「本気………出したの?」
「さあ?」
彼女の言葉に、辰爾はいつも通り惚けていた。
その時の辰爾といえば、猛火で錬成された剣を取り出し、それはもう殺す気だったようにも捉えられる雰囲気である。
防御に徹していた姿勢が攻撃に反転され、今度は相手側が防戦一方にも見えた。
これはもう、辰爾の勝ちなんじゃないか?
一方、その頃俺の魂の方はというと。
あれ? なんだこの感覚。
呼吸という概念がない深海に、沈んでいく感触がする。感触といっても例えなんだけどね。
俺って、どうなったんだ?
確か、斬撃に撃たれて、その後は………分かんね。でも、撃たれたってことは死んだか?
ここ、まるでアニメの世界じゃない…………か?
断片的に知らない単語が蘇ってくる。まるで昔から知っていたように文章に馴染む形で。
なんか………ちょっとずつ………眠く………。
《忠告。生命の危機に晒されています。
これよりユニークスキル『
俺の安眠を遮るかのように脳内(今、脳ってあるのかな?)に直接語りかけてきた。
だが、それは不快よりかは母の言葉のように柔らかく心地良く感じられた。
っていうか、『
俺はそんな
そして深海に沈み続ける俺を、姿がはっきりしない何かが掬い上げた。
カタチは、長髪で線が細くて………女か?まあ、それが俺を掬い上げたのだ。
《ユニークスキル『
これ、得な話だよな?
なら、答えはYe───
『Yes』
───s………は?
それを俺が答えるよりも早く、そのカタチの曖昧な存在がYesと答えた。
理解が出来ないっていうか、なんというか………。
言葉が詰まる中で、その天の声的なヤツが記憶の覚醒に挑戦した。
《個体名シャルロット・ランビリスの記憶の覚醒に挑戦します。
…
……
………
成功しました。これより、
それから、頭の中に膨大な情報が入り込んできた。それはまるで、もう一周誰かの人生を歩んでるような感覚だ。けれども、拒絶することなく既視感さえ感じられる記憶。感覚でいうなら、忘れていた記憶を突然思い出したような感覚だった。途切れ途切れで不完全な記憶だがこれは───
───間違いなく俺の記憶だ。
こんなにもしっくり感があるんだからな。
《
そうか。これが俺の記憶か。
今まで断片的で不安定なものしか見たことなかったけど、ここまではっきりクッキリしたものを見ると疑いようがないな。
思わぬ利益だ。
それよりも、今はどうにかして現実に戻らなければ。何か、策は………。こういう時にシノンが居てくれればな。
『生存する確率を演算します』
この声、さっき勝手にYesと言ったやつの声と全く同じだ。
そう、件の謎の存在である。誰だよお前。
『私は、ユニークスキル『
いや!疑問形にしてもわかんねえよ!
だが、ここは異世界。俺の物差しで図るのは良くないよな!うん!
『演算が完了しました。
勝手になんか始めやがった。
《了承しました。個体名シャルロット・ランビリスが獲得条件を満たしている
エクストラスキル『逆鱗』を獲得しました。
エクストラスキル『悪食』を獲得しました。
エクストラスキル『貪欲』を獲得しました。
エクストラスキル『尊大』を獲得しました。
エクストラスキル『怠慢』を獲得しました。
エクストラスキル『淫欲』を獲得しました。
エクストラスキル『羨望』を獲得しました。》
なんか………全部が全部ヤバそうな
んで、これでどうやって現実世界に戻るっていうんだ?
『『貪欲』の能力により、"現実世界"に対する執着性を著しく高めます。よって、多少時間はかかりますが、戻ることが可能です』
ほうほう、そうか。
その発想は無かった。盲点だったな。
『貪欲』を噛み砕いて考えればそういう考え方もあったんだな。
これで少し時間はかかるとしても、戻れる。
俺はこれで八つの
『………え?
え?
『え?』
え?
『え?知らないんですか?
………なら、
あ、えぇっと、じゃあ、Yesで。
『了解しました。保有
コモンスキル…『魔力感知』『複製』『擬態』
エクストラスキル…『魔力感知』『逆鱗』『悪食』『貪欲』『尊大』『怠慢』『淫欲』『羨望』『亜空間生成』
ユニークスキル…『
固有スキル…『発現』『無限覚醒』『限界突破』『レベルアップ』『種族変転』『
え、結構持ってるじゃん。
で、肝心な『
『ユニークスキル『
並列演算・並列思考:独立して演算行為及び思考が可能になる能力。
能力解析:会得した能力を分析し、その本質を理解し使用を可能及び最大限に活用が可能になる能力。
機能修得:現在獲得していない能力を、『
無限学習:無限に新たな事象などを理解する事が出来る能力。
ってところらしい。
それと俺、種族無いのになんで固有スキルがあるんだろうか?
固有も何もないんだから。
『無種族はこの世で最も
………確かに………。
なら有っても違和感ないか………(?)
………っていうかさ、今まで無視してきたけどさ、『
俺の勝手な偏見だけどね、え?知らないんですか?とか
そこんとこ、どうなんでs─────
『現実世界復帰への準備が整いました。
実行しますか?』
コイツ、誤魔化し上がったな。
まあいいや。いつかまた聞けばいいだけんんだし。
それよかその質疑、Yesと答えよう!
『了承しました』
それから、ハッと目が覚めたとき、俺が居たのは迷宮零階層だった。
目の前では、まだ辰爾らが戦っている。
さっきと違うのは、辰爾が剣を握っていることと、俺が何故かその動きを追えるということだ。
どうしてかは知らないね。
でも、俺は確かに強くなったみたいだ!
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