久しぶりの再会 その1

 アルス一行が検問所を通過し、賑やかな王都の中心街を進むこと30分。


 王都内では大きな通りを進む際、馬車等の乗り物は中央を通り、左右を人々が通る。


 その為、アルス一行が乗る馬車は堂々と中央の道を通り、ある場所を目指していた。


「あれが市民街と貴族街を2分する壁か……」


 アルスが目にしたのは先ほど見た、城門の壁よりもやや高い、貴族街と市民街を隔てる壁であった。



 王都は、合計二つの壁に囲まれている。


 一つ目の壁。通称外壁は、王都と外界を隔てており、高さは約20メートルほどある。


 また、外界から王都内へ進入するには、東西南北に一か所ずつ存在する検問所を通って抜ける必要がある。


 検問所を通るには、王都外からの来訪者はお金を払って入場するが、王国の住民票を持っている者か王国の貴族であれば無償で通過することが出来る。


 ただし、貴族も一般人も、鑑定無しでは入れないため、国外で指名手配されている者はもちろんのこと、犯罪者も入場することが出来ない仕様になっている。


 例外として、犯罪者等の訳ありの者たちが通過できるような裏ルートもあるが、今のところは使う予定が無いので詳しい話はまたの機会にしよう。



 二つ目の壁。通称、内壁は王都の市民街と貴族街を隔てており、こちらの高さは20メートルちょいほどある。


 見た目も似たり寄ったりな外壁と内壁であるが、両者にはある決定的な違いがあった。それは、内壁の方が監視が厳しいという点だ。


 内壁の壁上には侵入者を防ぐ返しや、鉄線等が張り巡らされており、更には監視員と呼ばれる王都兵が壁の上や周りを巡回するといった徹底ぶりだ。


 また、内壁の貴族街へ入る唯一の検問所が北側にしかないため、違法に侵入するのは難しく、内壁の監視警備は万全だと言えるだろう。


 しかも、貴族街へ行くには、王国の貴族の者か来賓として招かれた者。


 例外として、王宮を警備する場合や、緊急時のみ王国兵や王国騎士団が通過できるが、これらに該当しない者は入場することが出来ないようになっている。



~内壁の検問所~


 アルス一行がたどり着いたのは内壁の検問所。


 そこで馬車の足が止まると、検問所から次々に王国兵が現れ、馬車を取り囲み、貴族街へ入る手続きを取り始める。


 アルス一行の鑑定が終わり、問題ないことが確認されると、重厚な門が口を開く。


 こうして貴族街へと通過することが出来たアルス一行。



「市民街も綺麗だなって思ったけど、貴族街はまた別の洗練された美しさがあるな」



 市民街はレンガ造りで趣のある建物ばかりで埋め尽くされていたのに対し、貴族街は一軒一軒が屋敷となっており、大きさは異なるが全ての屋敷に庭が完備されている。


 ただ、貴族街では人の姿があまり見られないので、アルスにとっては少し寂しいと感じられた。


「どこもかしこも豪邸と呼べる屋敷ばっかり……」


 窓が開いたままなのを忘れ、アルスがボソッと呟く。


「アルス様。この辺はまだまだ序の口ですよ。王宮に近づけば近づくほど、王国内で力を持つ貴族の家が増えてきますので、これから益々豪華なお屋敷がお見えになってくるはずです」


 アルスの呟きを偶然聞いていたエバンがそう付け足す。



 この辺にある屋敷でも相当豪華なのに、王宮に近づく程に豪華さが増すって……、流石貴族街と呼ばれるだけあるな。



 そういった考えを持ちながら外の景色を眺めていると、ふと、ある事が頭をよぎる。



 そう言えば、アルザニクス家の屋敷ってどこにあるんだ?


 

 今まで領地から出たことのないアルスは王都に来たのが今回が初めて。


 小さい頃は地方の屋敷から離れたくない。家に引きこもりたいという精神に駆られていたため、王都のアルザニクス家の屋敷の全貌を見るのはこれが初めてだった。


 その為、アルザニクス家の王都の屋敷が貴族街の何処に、どれ程の大きさで存在しているかはまだ知らない。


 これでもアルザニクス家は王国で4本の指に入るほど影響力が大きい貴族だからな。


 まぁ、それなりには大きいんだろう。



 アルスは今、馬車から見える、名も知らぬ貴族の屋敷の1.5倍増しの大きさの屋敷を想像し、どんな所なんだろうと想像を膨らませる。


 そんな時、他の屋敷とは一線を画す、屋敷が目に映る。


「うわ……、でっか」


 つい声が漏れてしまうほどの存在感を放つ、大きく煌びやかで美しい豪邸。


「ここに住んでる人はさぞ金がある人なんだろうな……」


 そんな豪邸を目の当たりにし、つい呆けていると。


「アルス様。到着しました」


 エバンの到着を知らせる声が耳に入る。


「分かった。さて、俺の屋敷はどんなモノか……」


 先ほどの豪邸が頭から離れず、うわの空状態でアルスが馬車の扉を開け、降りると。


「……えっ、ここが俺の屋敷なのか?」


「はい。ここがアルス様の屋敷だそうです。他の貴族様の家よりも豪華で美しい……、アルス様にお似合いの屋敷ですね!」


 アルスの目の前に存在したのはついさっき目にした豪邸であった。


 アルスはその豪邸から目が離れず、呆然としていると。


「……? アルス様? アルス様ー?」


「……あ。あぁ、大丈夫だ」


 エバンに肩を揺すられ、ふと我に戻るアルス。


 そして、アルザニクス家の豪邸から目を離すと、奥の方にあるモノがある事に気が付く。


 

「あれって……」


 前世、嫌と言うほど見た、アルスにとって馴染みのある建物。それは……

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