深淵の幼なじみ(行ってはいけない廃別荘)

みゃー

第1話再会

あんなに五月蝿かった蝉達の声

が、自宅の回りでしなくなってきた。


それは、至(いたる)の高校生初の夏休みが、そろそろ終わろうとしている合図でもあった。


しかし、今こうやって、自宅から少し離れた郊外の、真昼の田園風景の中を一人歩いていると、遠くからツクツクボウシの鳴き声だけがする。


そして、額からは汗が滲むが、たまに涼しさを含んだ風と赤とんぼが、至に秋が近い事を教えてくれた。


今、至は、ある山合いの寺の墓地に向かっていた。


丁度、今から4年前の8月の暑い盛りに

、突然亡くなった幼馴染のお墓にお参りに行く為だった。


幼馴染の名前は、僚。


僚とは、幼稚園、小学校の6年間、昨今の少子化もあってクラスも少ないためか

、僚の双子の弟の葵と共にずっと同じクラスに当たった。


僚は子供ながらに、ちょっと妖しい雰囲気のあるキレイ系イケメンで頭も良くて、スポーツも万能。


まだ、恋愛や結婚がよく分かっていなかった幼稚園の頃…


至は、同じ男同士だったが、僚、葵の二人に、将来結婚しようと双子同時にプロポーズした事もあった。


僚と葵の答えは、同じ声、同じタイミングで、即、イエスだった。


(流石に…男の双子両方と結婚って、ヤバいし出来る訳ないじゃん…ホント、俺ってバカだったよな…まぁ…今もマジバカだけど…)


至は、自分の幼き黒歴史に内心苦笑する


そんな僚が、12歳の夏休み、父方の祖父母の田舎へ遊びに行った時、川で溺れた葵を助けて自分が身代わりで亡くなった。


葵は、それから学校に来なくなってしまい、葵は、家族以外では至だけとしか会わなくなった。


至は心配で、毎日葵に会いに、自宅の裏の葵の家に放課後行った。


葵も、僚と瓜二つのキレイ系で、勉強もスポーツも出来たが、俺様系で活発な僚と違い、やはり妖しい雰囲気のある物静か系だった。


それから、僚が亡くなり1年後、あんなに仲の良かったはずの僚と葵の両親は離婚。


葵は、母親に付いて引っ越して行き、それきり至とは音信不通になった。


至には未だ、僚にもだが、葵にも心残りがあった。


母親に付いて父親の元を葵が出て行く直前から、葵は、何かにかなり怯えていた


至ですら、葵の指すら触る事も、逆に葵から至に触る事も出来なくなっていた…


怖れていると言ったら良いか?


それは、尋常では無い感じだった。


ただ、その怯えの理由を、葵は、どんなに尋ねても最後まで至にも教えてはくれなかった。


(なぁ…僚…教えてくれ!葵…元気かな?もう…泣いてないか?)


道すがら、至がそう尋ねた瞬間…


まだ少し離れた、僚の墓の前に、一人の男の姿が見えた。


男は気配に気付いたのか、至の方を向き

、ハッとした表情を浮かべた。


でもそれは、至もだった。


かなり背が高くなって体もがっちりしていたが、顔が…その美しさが葵に似ていたからだ…


だが、その男の左手には、痛々しい包帯が巻かれていた。



















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