第16話 森を出よう。



     〇



 二つほどの季節が過ぎた。

 狩りも戦いも、時折、ひどいケガを負うこともあったが、それでも生き抜いた。

 その間に大いに学びの時間を得ることができ、ある程度の言葉や文字なら理解することができるようになった。

 おかげで冒険者たちの目的を知ることができた。

 どうやら目的は俺そのもののようであった。

 つまるところ、珍しい個体だから影響を出る前に殺そう、ということらしい。

 既にの彼女と共に生きている姿を見られている。

 ゴブリンが他種族と共存していることはあり得ないそうだ。

 俺は、俺たちは、ただ物珍しいということだけで殺されそうになっている。


 真っ平ごめんだ。


 黙って殺されるつもりもない。

 言語を理解したおかげで、一つの目途が立った。

 本来であれば、この森で強くなり続ける予定だった。

 ひたすらに冒険者たちと戦い続ける日々を送っていたのかもしれない。

 だが、今の俺にはアルラウネの彼女がいる。

 日が過ぎるごとに送られてくる冒険者の質が上がってきている。

 このままでは間違いなく、殺される寸前まで至るだろう。


 森を出よう。


 そして、新たな地を見つけなくては。

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