第36話 悪役は思う存分、悪役になることを決意する②
みんなに作戦を話した後。俺は、男子側の部屋と女子側の部屋の境目となる廊下を真っ直ぐ進んたところにある、自動販売機に1人いた。
ポケットに入れたスマホを取り出し、先ほど連絡先を交換した田嶋にメッセージを送る。
雄二:【田嶋。例のメッセージ、彼女に送る準備はできているか?】
田嶋:【できている】
即返信がきた。
「じゃ、俺も気合いを入れて……」
そう意気込みながらスマホを閉じようとした時、またピロンと着信音が鳴った。
田嶋:【本当にあの作戦でいいのか? 下手したらお前、ますます……】
どうやら俺の心配をしてくれているようだ。最初は俺のこと、散々見た目で決めつけていたのになー。
でも、俺が悪いやつじゃないって理解してもらえたことは嬉しい。
雄二:【俺のことを心配する暇があったら、自分のことを心配しろ。今回の作戦は田嶋もやりにくいだろ。相手は、お前がりいなに惚れて、別れ話した彼女なんだから】
田嶋:【そ、その話は今しなくていいじゃないか!!】
雄二:【悪い悪い。余計な心配はいらない。俺が伝えた通りに動いてくれ。あとのことは俺が勝手にやることなんだから、どんな結果になろうと田嶋は気にするな】
………………。
………………………。
「笠島もこう言ってくれているし……や、やるしかないよなっ」
田嶋は、彼女である理沙にあらかじめ書き溜めていたメッセージを……恐る恐る送信ボタンを押して送った。
「ああ、送っちまった………」
田嶋はスマホをテーブルに置き、頭を抱える。
――ピロン
「ひいっ!?」
すぐさま理沙から返信がきた。
田嶋はスマホ画面を眺めて……ゴクリと唾を飲む。
その文面をスクショし、雄二にすぐさま送信。
「俺も緊張してるが……。笠島……マジで大丈夫かな……」
落ち着かないのか、田嶋はメッセージを見返した。
田嶋:【ちょっと話があるからさ……俺の部屋に来てくれない? りいなちゃんも一緒なんだ】
理沙:【分かった】
◆
理沙は田嶋の部屋を訪れた。不満そうな表情で。
「アンタと話すことなんてないんだけど? 他の女に惚れたとか言ってアタシを捨てようとしているこのクズ男っ」
「……す、すいません」
「それで? 澄乃りいながいないんだけど? なに? 嘘?」
「りいなちゃんは今から来る……。あっ、電話きたからちょっと部屋出てくるわ」
「ふーん。いってら」
田嶋はスマホを耳に当て、部屋を出た。そのことを確認した理沙は、ジャージのポケットから……プレゼント代が入った封筒を取り出した。
「笠島とかいう男……私の作戦が台無しじゃないッ。邪魔しやがって……」
不満そうに舌打ちをした。
雄二の思ったとおり、プレゼント代を盗んだのは理沙だった。
そして理由は……
「アイツも真っ先にクソビッチを疑えよッ。……今回はダメだったけど、澄乃りいなには何かかしないと気が収まらない……っ。人の男に色目使いやがって……」
りいなに恨みを持っていたからだった。
愚痴を漏らしつつ、持っていてももう意味がない、プレゼント代が入った封筒を田嶋のボストンバッグに入れようとしたが……理沙は閃いた。
「ベッドの下なら……田嶋のミスだったことにできて収まるじゃん。アタシ天才〜w」
話の途中で田嶋に「プレゼント代。ベッドの下にでもあるんじゃない〜?」となんとなく言えば、探し足りなかったということで騒動は何事もなかったように収まる。
理沙はベットの下に封筒を置こうと、身を屈めた。――部屋のドアが少し空いていたと知らず。
「ん、よいしょ……」
封筒をベッドの隙間に入れた時だった。
――カシャ。カシャカシャ
「っ!? 誰っ!?」
突然のシャッター音。
慌てて顔を上げた理沙は目の前にいる人物を見てさらに驚く。
「よぉ、田嶋の……彼女だっけ? お前、人のベッドの下でなにやってるんだ?」
目の前にいたのは、彼氏の田嶋ではなく……作戦を邪魔した、笠島雄二だった。
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