透明人間は見えない

獅子亀

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 明治時代。

 それは、日本の開国により欧米文化が急速に浸透した時代。

 子どもは学校へ行き、大人は新聞を読むようになった時代。

 電気、ガス、鉄道が日本中に普及していった──そんな時代。


 人里離れた山奥に、とある華族かぞく一家の屋敷があった。

 およそ1年ほど前の火事によって全焼したその屋敷はひと月前に、焼ける以前と全く同じ姿で再建された。


 屋敷は1年ぶりに華族一家を迎え入れる。


 そんな屋敷にはとある噂が立っていた。


「あの屋敷、再建されたんだって」

「ああ。透明人間が住んでるっていう、あの屋敷のことだろ?」

「バカバカしい。村の産婆さんばが広めたホラ話だろうが」


 屋敷が再建されたと聞き、山のふもとにある村の住人たちはその噂を再び口にする。


「あの屋敷の奥さん、火事で亡くなったんでしょう?」

「行方不明になった息子が火を点けたって聞いたぜ──」

「──た、大変だっ!?」


 そんな村人たちの会話を中断させたのは、噂の屋敷の主が殺害されるという、事件の知らせだった──。


 屋敷の主、メナシ家当主であるメナシトーヤが死亡したのは昨晩のことだった。


 その時間屋敷にいた者は「当主の息子」、「娘」、そして「使用人見習いの少女」の3人。


 誰が、何のためにトーヤを殺害したのか。

 それとも、3人の他にも容疑者がいたのか。


 そして、村に流れる「透明人間の噂」の真実とは──。

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