貧民街に転生した孤児が成り上がり国を興す
三毛猫
第1話1話 プロローグ
ここは、アーム世界のリーガ大陸で大陸には大小様々な国がある。その中でも大きなライガー王国の僻地にある冒険者の街ダビデである。
ダビデ街は冒険者の街として発展し、僻地にありながら今では、ライガー王国で王都に次ぐ2番目に大きな都市なのだ。
大きく発展した理由は、魔獣や魔物が多く魔獣や魔物の持つ魔石が沢山取れるからだ。
魔石は明かりを灯す為や魔道具のエネルギー原になるから需要が多いのだ。
この街には、魔獣や魔物が多く住む広大な深淵の森と、その反対側に面積の小さい黒の森とダンジョンがあるのだ。
深淵の森は広大で人間が入ったのは、三分の一で三分の二未開地なのだ。黒の森は深淵の森の十分の一位だ。
ダンジョンとは不思議な場所で魔獣や魔物が湧き出て、時には宝物も出る。
そんなダビデ街の貧民街を流れるドブ川の橋の下で10歳位の男の子が目を覚ました。
男の子は、目を覚ますと辺りを見渡し。
「此処は何処なんだ?」
と言ったつもりが。
「あうっ、あっうう・・・・・・・・」
言葉を発する事が出来ずに、ドブ川を流れる水の音も聞こえず、自分の両手を叩いても音が聞こえなかった。
自分は確か名前は坂東直也と言い大学の研究室から帰る途中に・・・・・・思い出した。
帰る途中に無差別に刃物で通行人を襲っていた男が白い杖をついていた少女を刃物で突き刺そうとしたのを止めようとして、自分が刺されて意識が無くなったはずなのにどうしてこんな知らない場所にいるのか不思議だった。
それに、28歳で身長も大きかったはずなのに、鏡が無いから分からないが手を見ると子供の手で、耳が聞こえず言葉も話す事が出来なかったのだ。
何が何だか訳が分からず。
「な、何なんだよー!! 一体どうなっているんだ」
叫んだつもりが言葉にならずに。
「うっー! あうー!・・・・・・・」
(お、落ちつけ)自分に言い聞かせてもう一度辺りを見渡すと、自分のいる場所は汚いドブ川の橋の下で、橋の上に行くと崩れかけた煉瓦作りの家や小屋のような家が目に入りまるで廃墟のようだった。
そんな廃墟を歩いていると犬の顔をした老婆が。
「トムじゃないか又、迷子になったのかい」
直也は老婆を見て腰を抜かしそうになった。
(嘘だろう! 犬獣人だ! もしかして俺は死んで異世界にきたのか)
高校生の時にハマって読んでいたラノベ小説を思いだして思ったのです。
犬獣人のお婆さんが。
「全くしょうがないね、婆についておいで。年寄りの園長に心配ばかりかけて・・・・・・」
直也は犬獣人のお婆さんに付いて行き、周囲を見ながら混乱した頭で考えたがやっぱり此処は異世界だと思ったのだ。
教会みたいな建物の前で犬獣人のお婆さんが。
「着いたよ、もう孤児院から一人で出たら駄目だよ、分かったかい」
建物はどうやら孤児院みたいで、入り口で立ち止まっていると犬獣人のお婆さんに背中を押されて中に入ろうとすると、中からドアが開き。
長い耳の兎獣人のお婆さんが出て来て。
「トム! 無事だったの? 朝トムの小屋を見たらいないから今から探しに行こうと下ところよ」
トムと呼ばれた直也は耳が聞こえないので意味が分からず首を傾げていると、犬獣人のお婆さんが。
「園長さん、わたしゃ、此れで失礼するよ」
「ご迷惑かけてすみませんでした」
直也は長い耳の兎獣人の園長に手を引かれて孤児院の庭の奥にある野菜畑の隅にある小屋の中に連れていかれたのです。
小屋の中にはベッドと小さなテーブルに椅子があるだけの部屋で兎獣人の園長が身振りでベッド寝るように言い直也の頭を撫でて出て行った。
ベッドに横になった直也は、急激な変化に付いて行けず疲れて何も考えられずに直ぐに寝てしまい。
目が覚めると不思議な事に此の身体の持ち主の記憶が戻っていたのだ。
此の少年の名はトムと言い、赤ちゃんの時に此の孤児院の前に捨てられていた孤児で、生まれつき耳が聞こえず、その為に言葉を覚えられずに此の孤児院で育ったらしい。
兎獣人のお婆さんが孤児院の園長でトムの面倒を見て育ててくれたが、他の孤児の友達も出来なく馬鹿にされ虐められるので5歳の時にこの小屋を建てて住まわせたのだ。
孤児院は国からの支援はあったがそれだけでは運営出来なく、住民や卒業生の寄付で何とか運営している。
庭の野菜畑も街の老人が善意で面倒を見ていて、トムも5歳の時から手伝っていたが老人が亡くなり今は、トムが1人で畑を管理しているのだ。
トムは少し知恵遅れだが真面目で争いごとが嫌いな子供みたいだ。
直也はトムと前世の記憶があり、前世では一応大学で学んで卒業後は物理学の研究者として大学に残った自称天才科学者だった。2度言うが世間が認めたのでは無くあくまでも自称の天才科学者だ。
物語を進めるに当たって此れからはトムと呼ぶ事にする。
トムがテーブルを見ると寝ている間に用意された、パン、スープがあったので食べてみるとパンは硬くそのままでは食べられずスープに浸して食べた。
勿論、前世のような味では無く塩味だけで不味かったがお腹が空いていたので全部食べたのだ。
ベッドに横になり此れからの事を考えたが耳が聞こえず言葉も話せないので途方に暮れたのであった。
あれから5年の月日が流れトムは、15歳になったが相変わらず、孤児院の小屋住み、野菜畑と孤児院の掃除などをして過ごしていたのです。
この国では15歳で成人になると平民は教会で成人の儀を受けてスキルを授かりスキルに合った職業に就き働き始めるのだ。
スキルには魔法使い、剣士、料理人、鍛冶師、大工、など何十種類もあり、トムの授かったスキルは【写しとる】で教会でも初めて見るスキルで使い方が分からずゴミスキルだと言われたのでした。
15歳になると孤児院を出て働く決まりなのですが耳の聞こえないトムは、孤児院の農園で野菜作りや孤児院の掃除係として孤児院で働いている。
たまに冒険者ギルドから冒険者の荷物運びの仕事を頼まれて小遣い稼ぎで荷物運びをしているのだ。
親切な冒険者がトムを可哀そうだと思い小遣い稼がせる為に仕事を頼む事もあるが、それも月に4~5回で前世の自称天才科学者だったトムには雀の涙だった。
トムはもう生きて行くのが苦痛だった。転生してからの5年で希望も無く、孤児院の片隅の小屋で此のまま死ぬまで過ごすのかと思うと、神様がいてその神様が自分を此の世界に転生させたのなら何の為に転生させたのかと怒鳴りたかったのである。
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