勝てない騎士~1~

赤目

人狼

「んんっ、」

目を覚ますと周りには白い壁で囲われて俺と同じように7人が目を覚ました。


「どこ?ここ?」

高校生が中学生だろうか?女の子が声を出す。

「おーい!誰かいねぇーか!」

そしてムキムキのスポーツ少年が助けを求める。


「おい、なんだそれ?」

俺はスポーツ少年に声をかける。

そのにはピンクに薄く光る黒い首輪がされてあった。


「なんだよこれ、」

スポーツ少年は首輪に手をかけ外そうとする。

よく見ると他の6人そして俺にも付いていた。


【おはようございます。初めまして。そして今からデスゲームです。】


どこからか声が聞こえてくる。でも人の声ではない、こう言うのを機械音と言うのだろうか?


「は?デスゲーム?どぉ言うこったよ!」

大学生ぐらいのチャラ男が恐怖のワードをリピートする。


俺を含めた8人は混乱と動揺で頭がいっぱいになり、何もないこの白い部屋にもその空気は充満していた。


【今から皆さんにやってもらうのは『リアル人狼』です。】


「話を聞けよ!」

チャラ男はみんなが声を出せずにいるにも関わらず、意見を述べた。


【皆さんには首輪とスマホを用意しました。】


「ほんとだ、何これ?」

肌を黒く染めたギャルが慣れた手つきでスマホを起動する。俺の右ポケットにも同じものが入っていた。


【スマホで投票、選択、通話、行動などをしてもらいます。首輪は処刑と襲撃の時作動します。】


「おい!話聞けって!」

チャラ男はまだ怒鳴っている。

「そこら辺にしといた方がいいですよ。」

メガネをかけた真面目を真ん中を行く黒髪青年が止めに入る。


「じゃあどうすんだよ?」

チャラ男が声を荒げて威嚇する。

「どうもできないから何もしないんです。」

そう言ってメガネ君は人数分用意された席に座る。


【ではルール説明をします。ルールは至って簡単ただの人狼です。デスゲームですから死にますけどね。】


煽り口調で高みの見物をする機械音は嘲笑っているように見えた。


【特殊役職は

 [能ある人狼 1] [占い師 1]

 [共犯 1] [騎士 1]

 です。

      残りは通常役職になります。】


「どう言うこと?、、」

最初に声を出した少女はまだ現状を把握できていないのだ。

と言ってもこの中で現状を把握している人はいないだろう。


【スマホの画面に役職が写っているでしょう。それがあなたの役職です。】


配布されたスマホを見ると画面には

[騎士] と大々的書かれていた。


【役職には能力がありますが、皆さん人狼ゲームと馴染み深い人たちを集めたので役職の特性については理解しているでしょう。】


【どの役職にも普通の人狼ゲームにはない特殊能力を追加しました。その能力を使うにはポイントを使用します。】


スマホの右上を見ると10Pと表示されていた。


【現在皆さんには10Pあります。夜のターン行動しない場合は1日2P追加されます。】


【特殊能力の説明に移ります。

占い師は一度だけゲーム中に白か黒だけでなくその役職も占うことができます。


騎士は襲撃が成功しなかった日、襲撃しなかったのか、護衛が成功したのかが分かります。


共犯は1人を選びその人の占い結果を真逆にすることができます。


市民はスマホでの会話機能のポイントが必要ありません。


人狼も同じく、人狼同士での電話のポイントがいりません。】


「難しいな。」

スポーツ少年は顎に手を置き少し俯き加減で考えている。


【簡単に役職のできることについて説明します。


能ある人狼は、夜のターンに襲撃か潜伏かを選べます。


占い師は、夜のターン1人、白か黒か見ることができます。


騎士は、夜のターン1人を選び護衛します。護衛された人への襲撃は失敗します。


共犯は、占われた場合白と出る黒陣営です。人狼陣営も共犯も互いの役職を知りません。】


【4時に1日目の投票を開始します。処刑は5回のみスキップできます。そして自分のスマホの画面を見せるとその首輪が作動します。説明は以上です。】

プツッ、


その音の後部屋の中は混乱で爆発した。


「ねぇ!どう言うことよ!帰りたい!」

とギャルは叫び、無口少女は泣いている。

スポーツ少年は無口少女を宥め、チャラ男は当たりを探索し始めた。


俺はと言うとそれをただただ混乱しながら見ていた。


「みんな、一回落ち着いて席に座らないかい?」

メガネ君が落ち着いた口調でそういい、全員とりあえず席に着いた。


「よしみんな。まず自己紹介しようか。」

スポーツ少年が全員をまとめようとしてくれている。


「じゃあ俺から、一川 健斗、大学生だがもう2回留年してる。」

チャラ男が先陣を切り自己紹介をした。

「僕は、二宮 和樹、高2。」

メガネ君が先陣に続く。


「私、三島 奏、同じく高2!」

ギャルが無理やりテンションを上げる。

「俺は四田 光、高1。」

俺が自己紹介をした。ギャルが上げてくれたテンションを無駄にしてしまったがしょうがない。


「俺、五海 渉、よろしくね。」

大学1年生だろうか?まだよく分からないので不明さんと名付けた。

「私、六月 環奈って言います。中学2年です。」

最初にしゃべっていた無言少女だ。


「私七瀬 蕾って言います。高3、よろしくね。」

明るい髪色のポニーテール。ポニーテール先輩だ。

「俺最後か、八谷 勇気、仲良くしようってのは無理かも知れないけど頑張ろう。」

スポーツ少年が最後を締めくくり、自己紹介は幕を閉じた。


「提案あるんだけどいい?」

自己紹介の後の凍った空気を溶かしたのはポニーテール先輩だ。


「どうしたんだい?」

それに反応できたのはスポーツ少年だけだった。俺もだが誰も現実を受け入れられてないのだ。


「もう1日目の投票が30分後にある。

でもさ、処刑はスキップ出来るって言ってたじゃん。能ある人狼ってのも襲撃をスキップ出来るんだったら今はスキップし続けるのがいいと思うんだけどどうかな?」

容姿に見合った平和で優しい女性という感じの提案だった。


「それは難しいかも知れない。スキップは5回まで、あの声の奴は俺たちに人狼ゲームをすることを強制してる。」

希望を打ち砕いたメガネ君。

確かに間違ったことは言ってないし、全員が生き残ってここから帰るってのは本当に難しいと思う。


「たしかに、、そう、だよね、、、」

また空気が凍る。


スマホや財布などの荷物は全て無かった。ここにくる前の記憶といえば冬休みに友達と遊び呆けてそのあと家のベットで寝たのが最後。そしてこれが夢でないことは空気と感覚で嫌なほど分かった。


【投票ターイム!今からスマホで誰を処刑するか投票してね!時間は5分!】


「ちょっと!スキップしたいんですけど!」

ギャルがスピーカーらしき箱に話しかける。

「あれだろ?処刑はスキップ出来るけど投票はスキップ出来ない的な?」

チャラ男が俺たちの疑問をしっかり解決してくれた。


「そんなの選べないよ。」

ポニテ先輩が顔を押さえる。

そうだ、誰が死んで欲しいなんて決めれるはずがない。


【あと制限時間は3分だよ。ちなみに投票しなかった場合死んじゃうから気を付けてね。】


耳に入ってきた言葉に背筋が凍る。

「みんな、俺に投票してくれ。」

スポーツ少年が急に驚くことを言い出した。

「何言ってんだよ。そんなことできるわけないだろ。」

不明さんが少しキレ気味に話す。

「別に死のうって事じゃない。スキップすればいいだろ?」


その後俺を含めた7人はスポーツ少年に投票し、スポーツ少年は許可を取った後不明さんに投票した。


【じゃあ処刑候補は、八谷勇気だよ。スキップするか選んでね。】


もちろん全員がスキップを選び1日目の処刑はスキップとなった。


【今日の処刑はなし!残り人数8人!後ろのドアから出て自分の名前が書かれた部屋を自由に使っていいよ。】


ガチャっと言う音の後、後ろのドアが開いた。

館のような廊下に続いていた。

その廊下には全員分の部屋と食糧庫があった。


「じゃあまた明日。」

「はい、」

俺は、ポニテ先輩のお隣さん。逆は食糧庫となった。部屋はとても広く大豪邸の一部屋と言っても嘘にならないほどだった。


俺は食欲も湧かないので[騎士]と言うスマホの画面を見ながら、考え事をしていた。

{守る  消費ポイント  4ポイント}

{特殊能力 

  自信が守った日の死体なしの理由が

  襲撃が起きなかったからなのか

  護衛の成功だったからなのかわかる }


こんな強いであろう能力がなぜ俺に来たのだろうか?

と言うか人狼を引いた人は可哀想だな。


なんて考えていたら寝てしまっていたようだ。起きた時にはスマホは4時を表していて、右上の数字が12Pとなっていた。


もう少し寝るかと思ったが、なかなか寝付けなかった。その後は無意味にベットに大の字で寝転がり時間を潰した。6時半になると流石に小腹も減ってきて、隣の食糧庫に向かった。


食糧庫のドアを開けると食事場と言った方がいいほどの広さがあった。

4人ほどが座れるテーブルとキッチン、でも基本缶詰やカップラーメン。レンジで温める系のものがほとんどだった。


適当に缶詰を漁っていると後ろのドアが開いた。

「びっくりしたー。」

そこにはギャルとポニテ先輩が立っていた。


「おはようございます。」

「おはよう。光君も朝ごはん?」

ポニテ先輩が話しかけてくる。それよりよく名前覚えてるな。俺正直スポーツ少年の名前が八谷 なんとかだったことしか覚えてない。


「そんな感じです。」

「一緒に食わんか少年?」

「それいいじゃん!一緒に食べよ!」


ポニテ先輩とギャルに誘われ女性陣とご飯を食べることになった。ポニテ先輩が目玉焼きを作ってくれた。ギャルも意外に料理できるようで朝は目玉焼きとベーコンにレタスと言うなんともデスゲーム中とは思えないご飯を食べることができた。


「お?みんなしていいの食ってんじゃん!」

ドアからチャラ男が出てきた。

「一川さんも一緒の食べますか?作りますよ?」

「大丈夫大丈夫、俺は缶詰でいいよ。」

そう言ってツナ缶とサバ缶を取り部屋から出ていった。てか下呼びなの俺だけかよ。


その後はギャル達にお礼を言い部屋に帰った。

スマホの画面が10の数字を映し出した時だった。


【みんなーおっはよぉ〜、最初の部屋に集まってね!】


急に爆音で命令が流れ、自分の部屋から出る。

廊下を歩いていると不明さんに話しかけられた。

「何かあったのかな?」

「まぁ、あいつらが呼び出ししたんだからいいことではないだろうな。」


2人で部屋に入るとそこにはメガネ君、無口少女、ポニテ先輩が先に席に座っていた。

「あと3人か、」

不明さんがポロッと声を漏らす。俺たちも空いてる席に座る。


「あれ?ウチら最後じゃないん?」

そう言ってギャルとチャラ男が部屋に入ってきた。


【じゃあ昨日お亡くなりになった人を発表します。残念ながら八谷 勇気君は死んだよ。】


その発表にそれぞれ目を合わせる。

チャラ男が今入ってきたドアからすぐ出る。そのまま走っていく姿だけが見えた。

後ろにいたギャルはそれを追う、俺たちも席を立ちその後を追う。


確かスポーツ少年の部屋はポニテ先輩の正面だったはずだ。

廊下を走り、自分の部屋まで来たあたりでチャラ男が廊下に尻餅をつき倒れ、ギャルがドアの前で立ち尽くしているのを目にした。


俺はそれを避けて部屋の中を見る。そこには無惨に胴体から引きちぎれた首が、ベットのすぐ近くに転がっている光景があった。


「は?、、」

俺に続いて他の人もその光景を目にする。不明さんは声を漏らし、無口少女はギャルと同じく立ち尽くす。


「ヴッ、オェェ」

ポニテ先輩すごく汚い音を出しながらゲロっていた。メガネ君は目を逸らし深呼吸していた。


その後は7人で白い部屋に戻り席に座る。誰も喋る気にならず時間だけが過ぎていく。


「なぁ、人狼が八谷を殺した理由ってなんだ?」

チャラ男が口を開く。

「多分、話の進行役だったからだと思う。」

それに答えたのは無口少女。


人狼に親しみがあるメンバーが集められたと言っていたがそう言うことか。人狼ゲームのルールや傾向を理解してる人が集められたってことだ。


スポーツ少年が殺された理由はみんなをまとめている役って事だ。つまり人狼側は話の進みを悪くするために殺したってことだ。


「ってことは次殺される可能性が高いのも話をまとめている人ってこと?」

ポニテ先輩はあまり人狼が得意ではないのだろうか?


「違いますよ。進行役を殺すのは議論を進ませないようにするからで、次人狼側が殺したい人間は騎士や占い師でしょう。」

俺は基本の人狼ゲームの進み方を教えた。


「へー。」

ポニテ先輩はやけに納得した顔を見せた。

「ごめんね。本当に申し訳ないんだけどさ、

人狼の人名乗り出てくれたりしない?」

ポニテ先輩が発言したこの言葉は市民側全員が思っていることだった。


「今の人数は7人、能ある人狼が1人。だったらさ人狼1人死ぬだけ。お願い。」

「そんなんで出てきたら苦労しねぇよ。それする気がないから襲撃したんだ。」

またメガネ君がポニテ先輩の案を否定した。


「でもいくら特殊な人狼とは言え人狼1人と狂人1人だろ?勝ち目なくないか?」

これはチャラ男だけでなく誰もが思ったことだろう。


「だから多分狂人の特殊能力なんだと思う。」

無口少女が続ける。

「狂人の能力は確か、占い結果を逆にするってことだったでしょ。あれって白に使っても黒に使ってもメリットしかないの。」


確かにそうだ。もし白に使うと濡れ衣になり、黒に使うと白が確定する。人狼において残りの人数と役職の数は知っておかないといけない。

それを有耶無耶にできるのは最強だ。


「これってさ。人狼が宣戦布告してきたって事だよな。」

「そうなりますね。」

チャラ男とメガネ君が現実を突きつける。


「じゃあ本気で人狼を探ししないといけないわけ?」

ギャルは昨日のような覇気も、周りへの気遣いもできる余裕はなさそうだった。


「占い結果もないんだから難しくないか?」

「どう言う事?」

ポニテ先輩は俺の質問に質問で返した。

「昨日の投票はほぼ無意味、占い結果もないから判断材料がないって事。」


つまり今日もスキップを選択するのが最善の策という事だ。


みんな理解したらしく、その日の投票は各々が右隣に投票し、スキップとなった。


その夜俺は1人で怯えていた。今日は守るのが適切だろうが、誰を守るか、失敗すれば誰かが死ぬ。俺は人の命がかかった選択をしなければならない。


役職が全く透けてない今、噛まれそうな候補は3人だ。

まずメガネ君、冷静な判断力がある分脅威になる。正直俺が人狼ならスポーツ少年より先に噛むだろう。

次に無口少女。あまり喋らないが、人狼の知識はあの中じゃ1番ありそうだった。

最後にポニテ先輩だ。メガネ君に否定こそされているが、人狼ゲームで提案をするのはヘイトを買いやすい。


選ぶならこの3人だ。正直1番噛まれやすそうなメガネ君を守りたいが、それは人狼も読む可能性がある。だから俺は無口少女を護衛することにした。


その夜はあまり眠れなかった。俺の選択ミスで誰か死んだらしないのか。昨日スポーツ少年を守っていたら死ぬことはなかったのではないだろうか。そんな意味のないことを考えていると朝日が登ってしまったから。


正直食欲も湧かないが、何か食べないといけないので6時半に食糧庫に向かった。


「奇遇だな。一緒に飯食うか?」

そこにはメガネ君とチャラ男と言う意外な組み合わせが一緒にカップラーメンを食べていた。


「ではお言葉に甘えて、それよりあまり2人は気が合うようには見えませんけど。」

カップラーメンにお湯を注ぎ時計の秒針を記憶する。


「僕は無理やりですよ。」

「こいつがカレー味より醤油の方がうまいって言うから一緒に比べてたんだ。」

「一言も言ってないんですが。」

「チャ、、一川さんらしいですね。」


何とか名前の出てきた俺にびっくりした。不明さんの名前とかはマジで出てこない。

「じゃあ!無事今日という日を迎えられたことにかんぱーい!」

まだ3分経ってないカップラーメンを食べかけのカップラーメン2つと合わせる。


「あれ?意外な組み合わせだ。」

今日はギャルが1人で食糧庫に来たので少し焦ったが、「安心しろ、少年。七瀬ちゃんはまだ寝てるって。」っとすぐ教えてくれた。


よかったー。これでポニテ先輩が噛まれていると俺は正直自信を失うとか言うレベルじゃない。そういえば忘れてたが、候補だったメガネ君も生きてるな。


「えーっとこれはカップラーメン愛好会ですね。」

「は?」

メガネ君とギャルが声を合わせる。

「それより3分経ったぞ四田。」

「ありがと。」


少しびっくりした。時計を確認するとちょうど3分だったのだ。脅威の体感時計だ。


ご飯を済ませ部屋に戻る。この部屋に戻った時の孤独感がとても嫌いだ。急に恐怖が自分を支配し、責任と不安がそれにのしかかる。


手の震え、息の乱れ、脈拍の不安定。どれを取っても今の俺は冷静とはいえなかった。部屋の隅に座りながら、1人で自分の震える手を握っていた。


【みんなー!2日目が始まったよ!最初の部屋に集まってね!】


聞きたくない声が心と脳内まで響く。俺は恐る恐るドアを開けた。


「ねぇ!光君!ちょっと歩くの手伝ってもらっていいかな?」

振り向くと足元がおぼつかないポニテ先輩の姿があった。もちろん肩を貸してやり、ゆっくり歩く。女性が不安がってるのに何言ってんだって話だが、いい匂いだ。


そのまま最初の部屋に入る。そして恐る恐る顔を上げたが、そこには昨日と変わらない5人が席についていた。


「よかったー。」

7人のうち何人かが一気に安堵のため息を漏らす。

「ちょっと話しいいかな?」


【今日の死体は無かったよ!】


ギャルとスピーカーとのタイミングが被った。

「私もお話が。」


ギャルとポニテ先輩が話があると言う。

ポニテ先輩を席まで運び、俺も席に着く。


「私、人狼わかっちゃった。」

「え?、私も。」


ギャルの言葉の後にポニテ先輩も続く。

「ちょっと待って、僕がが話を進めていいですか?」

メガネ君が進行役になり話が進む。


「まず誰を占ったか同時に指を指して下さい。」

「セーノっっ、」

2人の指は同じ方向に向けられた。その方向はまさかのメガネ君だった。

「は?」


この時、メガネ君は完璧に黒になったのだ。この状況を簡単に説明すると、ポニテ先輩とギャルが対抗位置と言うことになる。つまりどちらかが狂人で、どちらかが真の占い師と言うことになる。そしてどちらにせよ2人から黒出しされたと言うことは真の占い師も黒出ししたと言うことだ。


「おい!ちょっと待て!俺は人狼じゃない!頼む!信じてくれ!」

メガネ君が今まで見たことないほど取り乱していた。大声で、怒鳴りつけるように主張していた。


「すまん、、信じられん。」

チャラ男がそう言う。確率的にも俺は少しメガネ君を疑っていた。俺なら真っ先に噛みに行くのがメガネ君。いくらなんでも2日もスルーは怪しい。


「ちょっと待って、」

無口少女が立ち上がる。

「狂人の仕業ってことはない?だって私が狂人ならそうする。私は1番二宮君が怪しいと思う。だから占い師も疑って占う。そこに漬け込んだ可能性はない?」


いい推理ではある。でも、でもだ、確率的に言うと、狂人も疑惑の占い師2人もメガネ君を選ぶ確率は6の3乗で216分の1なのだ。百分率だと約0.5%正直ありえない。


「僕はそうとしかいえませんが、確率的には0.5%に足りません。」

「0.5%、、、、」

不明さんが呟く。


でも大切なのはそこじゃない。この後の不確定占い師2人の対応だ。普通の狂人ならここで黒出しを黒本人にしてしまったとあわて、釣りを回避させるはずだ。でももし狂人が自分で黒を作り、その人を黒だと言っているのならそんな行動はしない。つまり今日の投票で真の占い師か、メガネ君の陣営がわかるのだ。


「頼むよ。本当に人狼じゃないんだ!」

「じゃあ何なんだよ!」

チャラ男が怒鳴る。見たくもない光景だ。

「それは、言えない。」


メガネ君これは市民だな。

その理由はこうだ。そりゃ人狼や狂人は市民と言うだろう。しかし市民は他の役職を人狼たちに絞らせないために言わないのだ。そして「言えない」と言うことで騎士と匂わせることもできる。


特に占い師2人に動きはないな。

そしてその後は話も碌にまとまらず、取り敢えず3時半まで各々の部屋で待機となった。


部屋に帰ってわかった。

スマホには[護衛成功]の文字が書かれており、それは無口少女の人狼ではないことを表していた。そしてほとんどの確率で市民だろう。


俺が昨日守ったのは無口少女。そしてその無口少女が襲撃を受けた。人狼ゲームは自分を襲撃できない。当たり前だ。何がしたいか分からない。そして残る役職は狂人か占い師か市民か騎士だが、俺が騎士で占い師は2人のどちらか、もう1人は狂人だから消去法で市民だ。


それもだが、能ある人狼ってのはなかなか強敵だ。普通はメガネ君を噛みたいところを守られることを考慮して無口少女を襲撃したのだろう。今回はそこまで読んだが、油断はできない。


恐怖と責任で、怯えていると時間が来た。

部屋に向かうともう会議は始められていたのだろうか?声が聞こえる


「本当に俺じゃないんだ。多分どちらかが狂人で俺を黒にした後黒って言ったんだよ!」

流石メガネ君。自分が1番ピンチな時でも自分目線では1番確率が高くなる事を冷静に分析できている。


「それはおかしいだろ。だって狂人は占い結果を逆にするだけで、それが何になったかは分からないんだろ?」

確かにそうだ。俺はそこを見落としていた。いよいよ分からなくなったぞ。チャラ男の言葉が確かなら投票で確認しなければいけないことがある。


その後続々と人数が増えたが、ポニテ先輩が来なかったので、みんなで呼びに行くと、部屋のトイレでゲロっていた。


ギャルは「嘘くさいし臭い。」と対抗心むき出しで部屋に戻っていった。部屋に戻った時にはもう4時で投票が開始された。


【では3日目の投票を始めるよ。スマホで処刑する人を選んでね。】


投票結果はこうなった。


  チャラ男→メガネ君

  メガネ君→チャラ男

   ギャル→メガネ君

     俺→不明さん

  不明さん→メガネ君

  無口少女→ギャル

 ポニテ先輩→メガネ君


「マジで信じてくれって!」

メガネ君の意見も虚しく、過半数になってしまった。 


【スキップするか選択してね。】


「ちょっといいか、三島さんも六月さんもメガネ君に投票しました。ってことは狂人に占い結果を変えられた可能性が高い。結果が黒から白だろうと、白から黒に変わったのだろうと、どちらも狂人は引かないのだから多分白で間違いないです。」


要約すると白から黒に変わったのならそのまま投票したら1人は確実に減らせるのだ。逆に黒から白になったのなら真の占い師の占い結果は白になるだろう。そして、もし黒がドンピシャで当たったのなら狂人は真占い師から白が出ているのだからメガネ君に投票はしないはずだ。


【残り30秒だよ。】


スピーカーがみんなを急かす。そりゃそうだ、システム側も投票時間切れで殺されるなんて得がないはずだ。


【結果は処刑ありだね。二宮 和樹君の処刑を実行するよ。】


「は?」

俺は心の声が漏れる。6人の視線がメガネ君に向かう。


「なん、、、で、、、、、」

その声と同時に薄かったピンクの光が強くなった。


パシャァ!


あたりに赤い液体が飛び散る。何もない白い部屋にメガネ君の体が赤い海を作った。


ボトッ、、


みんなが目を開けた時、そこにはもう首のつながっていないメガネ君の姿があった。


「ヴッ、、」

その場にいた全員が出しそうになるのを必死で押さえている。女性陣は耐えれなかったのだろう。3人とも口から汚物を吐き出す。


俺はその光景を見てまだ理解できずにいた。血で汚れたスマホの画面を見る。そこにはこう映されていた。


  一川→処刑

  二宮→スキップ

  三島→処刑

  四田→スキップ

  五海→処刑

  六月→スキップ

  七瀬→処刑


俺は床に座りながら壁にもたれているチャラ男の胸ぐらを掴む。


「おい!話聞いてたのか!一緒に飯も食ったろ!なんで処刑選ぶんだよ!」

「これとそれは関係ないだろ、、命に関わんだよ、、。」

返事からは精気が全く感じられなかった。


次は不明さんだ。

「俺の話、聞いてたろ。なんで処刑に投票した?」

「俺の自由だろ。」

「お前の自由で人の自由奪ってんだよ!」

俺でもわかる。自分が冷静じゃないことぐらい。でも落ち着いてなんていられなかった。


「じゃあ何だ?お前は俺に投票したろ?それは良いのかよ。」

「あの状態じゃ二宮が1番票数が多いのは変わらなかった。でも俺の考えじゃあいつは白だ。間違いないだからお前に投票した。」

「正当化じゃないか。その一票で俺の自由を奪う可能性もあったってのに。」

「それ、本気で言ってんのか?」

「人狼ゲームってのは本来そう言うゲームだろ。」


俺は1人で自分の部屋に帰った。

俺はもう一度簡単に状況を整理した。残り生きているのが6人。占い師候補が2人。騎士が俺。

人狼がメガネ君でない場合を考えると可能性はチャラ男、不明さん、のどちらかが人狼と考えるのが普通か。


今日の護衛は一応するが、また駆け引きの要素が強くなった。人狼は連続で無口少女を噛むかもしれないし、能ある人狼は無口少女が騎士でないとわかったので、残り3人の内誰かを襲撃する可能性も高い。逆に占い師のどちらかは狂人の可能性があるので噛まないだろう。

 

俺は誰を守るのが正解なんだ?そもそも人狼はメガネ君だったんじゃないか?確率的に考えるとその可能性の方が圧倒的に高いのだ。


俺が噛まれる可能性も高くなってきた。もし人狼が不明さんなら容赦なく俺を噛みにきそうだ。俺はその日も無口少女を護衛し眠りについた。


「んんんっ、」

今日も俺は選ばれなかったようだ。

昨日の投票の後何も食べずに寝たのでお腹が空いて起きる。今は5時過ぎだ。食糧庫に向かう。そこにはヤツレ顔のチャラ男と不明さんが話し合っていた。


「おはようございます。」

「あぁ、おはよう。」

「おはよう。」

一度時間を空け頭を冷やしたからだろうか。全く怒りは湧いてこず、逆に案外普通に喋っていることに驚いたほどだ。


「なぁ光、お前は誰が怪しいと思う?」

チャラ男が質問をする。

怪しいのは絶賛君たち2人だ。と心の中で呟き、閉じ込める。

「僕は人狼が二宮さんであることを願うばかりです。」


「そりゃ俺らもそうさ。そっちじゃなくて狂人だよ。」

「そうですね。判断材料が少ないですが、先出しの分ギャ、、、」

誰だ?そうだ三島さんだ。

「三島さんが占い師なんじゃないかと思います。」

「やっぱそうだよな。」


「俺それより気になることがあるんですけど2日目の犠牲者がいなかったのは騎士のおかげなんでしょうか?」

「分からん。誰が騎士なのか、そもそも能ある人狼が殺さなかっただけって可能性の方が高そうだが。」

「そうですね。」


2人で話を完結させたが、間違いである。俺は本来の目的の食事をとりながら2人の会話に耳を傾ける。


「頼むからメガネ君が人狼であって欲しいが考えれば考えるだけ違う気がしてくる。」

チャラ男は頭のキレるとこがあるから変な勘違いはしていなさそうだ。


「そもそも人狼が死んだならそこでゲーム終了じゃないのか?」

俺が朝飯を食い終わり、部屋に戻ろうとした時、無言だった空気を壊すようにチャラ男が言った。


「違うと思いますけどね。能ある人狼が人狼陣営なのと、ルールが機械音で説明なところからして、必ず勝負がつくまでは出られないような気がします。」

「確かに人が死んですぐゲームクリアなら運営は何がしたいか分からんな。」


2人の意見には賛同だ。まだ終わっていないのかは分からんが、多分ゲームは終わらない。答え合わせも含めてまだ少し続く可能性は高い。


【おはよう!最初の部屋に集まってね!】


今日は少し命令が早いと思ったが特にそんなこともなかったようだ。スマホはしっかり10:00を映し出していた。

3人で白い部屋に向かう。そこには取っ組み合っているギャルとポニテ先輩の姿があった。


「ちょっ、何してんのって。」

髪の毛を引っ張りあっている2人の間に入ったのはチャラ男だ。

「だってコイツ!」

「狂人は三島さんでしょ!」


【今日の死体はなかったよ!】


俺はバレないようにスマホを見る。そこには

[襲撃はなかった]

と表示されていた。俺は1人で安堵のため息をつく。もう人狼は死んだのだと、そう思っていた。


ポニテ先輩が叫ぶ!

「昨日占ったのよ!一川さん!あなたが人狼よ!」

その瞬間その部屋の時間が止まった。俺は後ろにいる無口少女に気づかなかった。

その言葉を全員が耳にした。


「何言ってるの!ありえないわよ!占いをするためのポイントは7も使うのよ!」

これは言っても大丈夫なのだろうか。チャラ男は何も言わずに掴んでいた2人の腕を離した。


「お前、何言ってんだ?昨日は二宮が人狼って、、、、?」

「多分狂人に変えられたか、あなたが変えられているかよ。」

「なら俺は変えられている。だって俺、いや、、やめとく。」


は、?どう言うことだよ。何で占った?どっちが本物?チャラ男が人狼なのか?いやそれは難しいだろ。2回連続で人狼当てる確率なんて6×4で24分の1で、ギリギリ5%だぞ?あり得んのかよ。しかもそれに狂人が変えていた奴と同じ奴を占う可能性までかけると1%にも満たないはずだ。俺は人狼で確率をアテにするのは嫌いだが、命がかかっているのだからしょうがない。


落ち着け、考えろ。おそらくポニテ先輩は狂人だろう。これは確率的な話だ。と言うよりなぜそれなら特殊能力を使わなかった?使う必要がないのか。人狼がいるかどうかの確かめだしな。


話が逸れていく。本当に一川が人狼なのか?いや違うだろ。だって今日襲撃は起きてない。

でも待て、ポニテ先輩の黒出しより先にスピーカーが今日の死体が無かったことを伝えたはずだ。それならポニテ先輩は黙っておくべきでは?


「違う違う!占うには7ポイントいるの!最初の1日を入れて12ポイント!2日連続は占えない!」

「デタラメ言わないで!占いは6ポイント、12ポイントだからちょうど占えるわ!」

「もうわかってるの!あんたが狂人で頭数減らすために適当に黒出ししてるんでしょ!」

「そんなわけないでしょ!こんな人数で黒出しを適当にしたらリスキーよ!」

「もう人狼とコンタクト取り合ってるかも知れないじゃない!」

「どうやって?私とあなたの1回目の占い結果は同じよ?」


「2人で言い争っても意味がないだろ?!!」

つい叫んでしまった。

考え事をしている最中にずっと発展性のない話をされていては集中できない。


「落ち着いて光くん。」

無口少女が肩を掴む。

「あぁ、ごめん。悪かった。」

みんな、各々や席に着いた。人数は昨日の夜から減っていないのに現状が驚くほど変わっている。


「提案あるんだけどさ。ロラしない?」

無口少女の提案。俺もやりたくは無いが、生き残るための最善の方法だ。


「ロラ」狂人などの黒陣営がいそうな立ち位置をまとめて順に処刑していく方法だ。


「私はそれでも良い。でもそれならコイツから処刑して?それの方がいいでしょ?もうコイツは占いを使えない。私は今5ポイントから2ポイント増えてちょうど7ポイント占うことができる。」

「それがいいと思います。」

「俺もだ。」

「俺もそれでいい。」


恐る恐るポニテ先輩の顔を見る。涙が流れていた。こんな早く、まだ正午にすらなっていない。でも後4時間後に殺される。と、宣言されたのだから。


不明さんとチャラ男、無口少女が席を立ち、自分の部屋に帰っていった。俺も後に続こうと、席を立つ、


「光くん。待って、」

名前を呼ばれるのはこれで3回目だ。

「どうしたんですか?」

「ちょっといい?」


ギャルが席を立ち、「票集め頑張って、」と捨て台詞を吐いて出ていった。


「私、もういいんだ。これ以上人の死に様を見たくない。でも光くんは生きてね。」

そう言ってポニテ先輩は立ち上がり、部屋に帰っていった。


昨日のメガネ君の死体は綺麗さっぱり無くなっていた。誰かが片づけたのだろう。でも床はまだ赤く、この部屋は血生臭い。この部屋に取り残された俺は、吐き気と罪悪感で、死にたくなった。


少ししたら部屋に戻る。もう2時だ。隣の部屋からはずっと泣き声が聞こえてくる。本当にとことん投票しにくい。情に訴えかけるのはやめてほしい。誰も死んでほしいなんて思っていないのだから。


【みんな!最初の部屋に集まってね!投票を開始するよ!】


白い部屋に全員が集まり席に座る。もう自分の席は決まっているようなもので、俺は毎度ながらメガネ君の席の隣に座った。もういないのだけれど。


「みんな、もう一度言う。私は占い師。一川さんが黒って出たわ、もしかしたら狂人の能力かもしれない。」


【次はスキップするか選んでね。】


そして、その場の全員が、処刑を選んだ。

そう、ポニテ先輩までもが。


【処刑される人は七瀬 蕾だよ】


ピカッ---!


部屋全体が一瞬ピンクの光に照らされ、すぐにその色は赤黒くなる。


ベチャ、、


ポニテ先輩の胴体は椅子に座ったままだが、首から上はテーブルの上に転がった。死ぬ直前に見たポニテ先輩は俺に向かって笑いかけていたように見えた。


「マジで、やめてくれ、、、」


テーブルの上にある顔の目は光りを全く反射せず、こちらを見ている。そんなおぞましい光景に全員唾を飲んだ。


その後俺は走って部屋に戻った。

何度も何度も吐いた。昨日は一度も吐かなかったのに、もう俺の心に体力は残っていないのだろう。守り慣れた人を守り、俺はベットに潜った。


ハッ!ハァ、ハァ、ハァ、

時計は9:40分ちょうどに伸びており、周りを見渡すと今ではもう自分の部屋となった牢屋だった。10時に集まることが体に染み付いたのだろうか。俺は早めにあの部屋に向かう。


その部屋にはまだポニテ先輩の胴体が座っていた。

そうか、メガネ君の死体も片づけたのはポニテ先輩だったんだな。本当にいい人だった。


俺はお姫様抱っこし、ポニテ先輩を腹に頭を乗せる、恐怖でしかない光景に、嫌気がさす。

俺は気づいていた、死体の収納場所。俺はポニテ先輩の正面の部屋のドアを開け、ベットに寝かせた。そこには首の繋がっていない3人の死体が川の字で寝ていた。


「どうか安らかにお眠りください。」

俺は手を合わせ、スポーツ少年達に敬意を払う。


【みんな!最初の部屋に来てね!】


俺は空腹も満たせないまま、地獄の部屋へと向かった。


空気は重かった。過去1番だろう。もう慣れてしまったはずのこの白い部屋も、全てにおいて居心地が悪かった。


【今日の死体はなかったよ!】


5人の顔はそれを聞いても暗いままだった。俺はわかっていた。防衛は成功し、特に話すことなくギャルが処刑されると。


「占い結果、言っていいかな?」

「……」

「光くんが白。」


俺は少し驚いた。もうロラするのだからどちらが真だろうとほとんど関係ない。勝負は全て明日の昼に決まると思っていたから。


「そうか、光は白か、」

不明さんがいつも通り呟く、メガネ君が死んでから、チャラ男はずっと静かだ。もともと明るさなんてさほどなかったが、今は微塵もない。


無口少女はあだ名通り無口を通した。俺は適当に返事をした後、朝の集まりは終わった。俺はそのまま直で食糧庫に入った。すると俺の後を追うようにしてギャルも入ってきた。


「何ですか?」

俺は白出ししてくれたのにも関わらず、ツナ缶の蓋をこじ開けながら無愛想に聞く。


「あんた騎士でしょ。」

「え?」

「占い師の特殊能力忘れた?」


俺はツナを食う手が止まる。ギャルが真の占い師だと言うことは分かっていた。でもロラは止められない。俺が言うと騎士であることがばれ、それは完璧な負けに直結するから。


「そうか、合ってる。でも処刑を止めることはできないよ。」

「知ってる。昨日あの後何言われたか知んないけど、信じてくれてよかったよ。」


俺はメガネ君の処刑を止めようとする時人狼と狂人がコンタクトを取っていれば俺が騎士だと知られてしまう発言をした。

だから完全に信じるわけにもいかない。


俺は残りのツナを一気に食べ、食糧庫を出てすぐ俺の部屋に入った。その後は考えることをやめ、眠りについた。俺は責任を投げ捨てた。


【みんな!投票を始めるよ!最初の部屋に集まってね!】


大嫌いな声で目を覚ます。軽く伸びをし例の部屋に向かう。とても重い足取りで、俺は今から白だとわかっている人を処刑しなければならない。


【じゃあ処刑する人を投票してね】


ギャルも含め全員がギャルに投票する。


【スキップするか選んでね】


全員が処刑を選択する。


【今日の処刑は三島 奏だよ。】


ピンクの光が部屋を包む。同じように赤い液体はそのまま重力に従い面積を増やす。誰もが想像し、誰もが望まなかった結果だ。どこから間違えたかも分からない。俺達の心はもう完璧に壊れたのだ。


俺も含め誰も死体を見ず、部屋を出る。一言も言葉を交わさず。俺は部屋に入るとゴミ箱に吐いた。限界だった。もう体力的にも限界なんだ。これ以上は何も出来ない。無理だ早く守るやつ決めて寝ないと。そう思いスマホを見る。


右上には0Pと表示されていた。  


・・・?


完全に忘れていた。今日は4日目、1日目以外は守り続けたからちょうど0、明日すら能力を使えない。


俺は現実逃避するように夢の中へ逃げ込んだ。今日死ぬのが俺ならそれはそれでいい。



【みんな!最初の部屋に集まってね!】


恐怖の声で目を覚ます。俺はもう目覚めることはないと思っていた。薄暗い部屋の中、俺は一度ゴミ箱に吐いた後呪いの部屋に向かった。


部屋に入る。そこにはチャラ男、不明さんが座っていた。


【今日の犠牲者は六月 環奈さんだよ】


「・・・」

全て予想していた展開かもしれない。いつからか、それは分からない。でもこの光景はずっと前から決まっていた気がした。


「なぁ光、、、」

「あぁ、分かってるよ。」

チャラ男が全て言うまでに被せた。もう全部わかっている。俺はギャルを背負い、死体部屋に運ぶ、そのまま無口少女の部屋に向かい、それを運ぶ。


時間は少しずつ、でもあっという間に流れた。俺の負けだ。ポイントを0にしてしまった時点で。俺は[勝てない騎士]だ。だからせめて、勝負には勝とうと、地獄の部屋の席に着く。


「ねぇ、四田、俺人狼じゃないんだ。七瀬さんも言ってただろ?一川が人狼だって。」

「分かってるよ。」


【誰を処刑するか投票してね】


  チャラ男→不明さん

     俺→不明さん

  不明さん→チャラ男



「ねぇ!何やってるの!ねぇってば!」

不明さんが喚き立てる。

「簡単な話だ。俺は騎士だ。それを三島は言い当てた。だから偽占い師は七瀬、それだけだ。」


【処刑するか選んでね。】


こいつの声を聞くのも最後になるだろう。

部屋はピンクの光に包まれる。俺の近くにいた不明さんの顔がぶっ飛ぶ。胴体は俺の方に倒れ、顔は端の方に転がっていった。


俺は血だらけになった状態で、チャラ男と抱き合う。泣きながら、時には鼻を啜り、いい年した2留大学生と勝てない騎士は声を上げて泣きじゃくった。生きた喜びと、守れなかった悔しさを胸に抱き、


何分泣いただろう?その後は不明さんを死体部屋に運び床に寝かせる。3人でベットはいっぱいだ。


「俺は、お前らの分まで生きるから。」

チャラ男が手を合わせて泣きながら言う。

俺も隣で手を合わせる。本当にダメな騎士でごめんなさい。


俺達は始まりの部屋に向かう。


【勝負が決まったね。明日の朝にはこの部屋が出口になってるからそこから出てね。

バイバー、、


俺とチャラ男がスピーカーを叩き割る。壊れた後も何度も何度も叩いた。


そして次の日、、



俺には次の日は来なかった。

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