妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

1章 義妹と書いて偽妹と読む

妹が死んだ

 妹が亡くなったと連絡を受けたのは大学一年の冬のことだった。


 冬休み前で、貯めたバイト代を使って年末はアイドルのライブを見に行こうと胸を躍らせていた矢先。


 涙は流れなかった。


 連絡を受けてから、葬儀の間、妹が骨だけになっても、涙は出てこなかった。


 無論悲しかったし、心にポッカリとした穴が空く訳でもなかった。もう帰省しても、あのウザ絡みして笑う顔がもう見れないのだと、ただただあるがままを受け止めきれてしまったのだ。


 自分には昔から薄情な面があった。


 妹とは血が繋がっていない。


 義母の連れ子が妹だった。


 幼い頃、両親の離婚から流れるように、新しい母と妹を紹介された時も大して驚きもせずにそれを受け入れた。


 感情表現が希薄な俺とは真逆に、妹は感情豊かだった。


 よく笑い、よく泣き、よく理不尽に怒り、そこにいるだけで存在感を示す子だった。そんな妹を俺の父も、義理の母も大層可愛がっていた。最初は義理の母に隠れて俺の様子を伺うような大人しい子だったが、愛情を大量に注がれた妹は良く言えばノビノビ、悪く言えば増長して、俺に対して強く当たるようになった。


 とはいっても他の兄妹も似たようなものだと聞き及んでいたし、堪忍袋の尾が切れるようなものでもなかった。


 十年近く一緒に過ごした妹のことは大切な家族だと思っていた。それでも涙は流れなかった。


 葬儀はつつがなく終わり、火葬を終えて妹だったはずの身体は妹と見分けがつかないものになっても、まだ涙は流れなかった。


 私の分まで泣いてくれた両親は、義理とはいえ家族仲は悪くなかったはずの両親は、涙を一向に流さない私を不気味に思ったらしい。特に義理の母からは大学へ戻る日にヒステリックを起こされ、父からは「母さんが落ち着くまでは帰ってくるな」と拒絶の意思を示された。


 それもまた仕方ないと受け入れてしまった。


 後期の講義を全て終えても帰省することなく、春休みも大学周辺で過ごし、大学二年生になった。


 そろそろアイドルのファン活動を本格的に再開するか検討していた頃、あるメッセージが届いた。


「にーちゃん、ここに来て 愛しの妹より」


 それはとあるアドレスが書かれた死んだはずの妹からのメッセージであった。

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