Lightning Shooter

ゆき

1話 『食物連鎖の頂点争奪戦』

「こちらTHUNDERBOLT alpha小隊のLGun!

チーム『BLACK RABB!T』と『美味しいBOKUSOU』の2チームが施設内で大規模な戦闘を開始した!

他にも東池袋首都高速出入口で、チーム『CHAR』の新型戦車3台を確認、HURRYSON 東池袋三丁目店前の道路にて

チーム『土竜』の装甲車両5台を確認したとの報告も来ている!!

直ちに増援部隊を要請する!」


「了解、BlaboとCharlieを向かわせる。それまで一般市民の避難誘導、

戦闘の様子を監視しておいてくれ。また、違反を犯した者は全員逮捕せよ。」


「了解!!」


チーム『THUNDERBOLT』

世界ランキング1位のチーム、というよりかは軍隊に近い。

Alpha Blabo Charlie の3チームに分かれており、

最近ではチーターや害悪プレイヤーの排除など警察紛いなこともやっているとか。


そして、我々が最優先に潰さねければならないチームでもある。



1話 『食物連鎖の頂点争奪戦』


2023年に正式に運用が開始された、ARサバイバルゲーム『Lightning shooter』

政府公認でお金まで稼げてしまうこのゲームは1ヶ月でプレイヤー数は6万人を突破。

開発技術向上/運動不足解消/若者のニート化防止など、

良いこと尽くしのこのプロジェクトは大成功した。

そして、このLightning shooterの生みの親こそ僕とナッツの2人だ。

始めは趣味で作っていた。完成して友人たちと遊んでいたのだが、このことをSNSにアップしたところ

目をつけた一つの会社が勝手に商標登録してしまい、開発したのは僕たちなのに会社側は自社が開発したと

公の場で発表し、今に至る。そしてこの時、僕とナッツはチームを結成した。

その名も『super sonic』全ては権限の奪還、会社側への復讐。

僕Sizukuは攻撃役、ナッツは作戦指揮とハッキング、装備の開発もしている。

もう一人、攻撃役で楓という友達がいる。遠距離攻撃を得意とする少女だ。


例のTHUNDERBOLTチームのことだが、

なんでもTHUNDERBOLTチームの司令官と運営会社の取締役が裏で繋がっているらしいのだ。

現在、チームランクが世界ランキング1位になったチームには一部の権限が付与されるらしく、

1位のチームを上回るチームが現れた時、現在の1位のチームと権限を巡った『権限争奪戦』を行うことができる。

これに勝てば一部の権限を3ヶ月間使用することができる。そしてTHUNDERBOLTチームはこの権限をもう3年は独占しているのだ。

ということから、THUNDERBOLTを1位の座から引きずり下さなければならない。

そして今日まで、3人とTHUNDERBOLTとの交戦は続いているー。




ー 2026年3月24日 20:30 サンシャインシティにて ー


「こちらTHUNDERBOLT alphaチームのLGunだ!

 チーム『BLACK RABB!T』と『美味しいBOKUSOU』の2チームが施設内で大規模な戦闘を開始した…



ー 2026年3月24日 20:00 自宅にて ー


「これより20:30から開始されるであろう、BLACK RABB!Tと美味しいBOKUSOUによる戦闘への奇襲作戦の計画を

 発表する!拍手!」


ぱちぱちぱちぱち


「よろしい。まず皆わかっていると思うが、今回の戦闘は両チームによる毎年お馴染みの食物連鎖協会主催のお祭りだ。

今年の優勝景品は兎肉と1年分の高級牧草だそうだ。イベントの参加は応募制。制限時間内で最後まで生き残ったチーム 

が優勝という生態ピラミッドの頂点を奪い合う大規模イベントだ。もちろんTHUNDERBOLTも警備で来るはずだ。

そこでだ、まずTHUNDERBOLTの隊員に扮したSizukuがBLACK RABB!Tと美味しいBOKUSOUの戦闘中に両チームに

向けてド派手にぶっ放す。今回THUNDERBOLTは警備として来ているのであってイベント参加チームでは無い。

非参加チームによる攻撃は違反行為として罰が科せられる。 

よってTHUNDERBOLTがイベント参加プレイヤーに発砲すれば違反行為をしたことになる。これにより大規模戦闘が起こるはずだ。

あとは戦闘しているチームとをまとめて一気に潰して、THUNDERBOLTの顔に泥を塗り、ついでに優勝景品も貰ってしまおうという作戦だ!」


相変わらず考えることが悪の組織みたいな考えであるが;

ちなみにナッツは小4であり、学校には通っていない。困ったものだ。


「SizukuはTHUNDERBOLT隊員の改造スーツで出撃。alphaが避難誘導を開始したら隊員に混じって自分のタイミングで攻撃を仕掛けろ。

楓は大規模戦闘開始後、新たに開発した遠距離LMGと対物ライフルを使ってSizukuの援護及び敵装甲車両の破壊。

今回のために特殊弾を用意した。それもバンバン使ってくれ!」


「了解です、」 


「そ、そそそれでは、作戦開始ぃ!!!」




ー 2026年3月24日 20:30 サンシャインシティにて ー


「こちらTHUNDERBOLT alpha小隊のLGunだ!

 チーム『BLACK RABB!T』と『美味しいBOKUSOU』の2チームが施設内で大規模な戦闘を開始した!

 他にも東池袋首都高速出入口で、チーム『CHAR』の新型戦車3台を確認、HURRYSON 東池袋三丁目店前の道路にて

 チーム『土竜』の装甲車両5台を確認したとの報告も来ている!!

 直ちに増援部隊を要請する!」


「了解、BlaboとCharlieを向かわせる。それまで一般市民の避難誘導、

 戦闘の様子を監視しておいてくれ。また、違反を犯した者は全員逮捕せよ。」


「了解!!」


ー 2026年3月24日 20:43 サンシャインシティ内 2階にて ー


「みなさ〜ん、誘導員の指示に従って外へ避難してくださ〜い!走らないで〜!」


まさか俺がスパイだなんて思ってもいないだろう。今のところ全くバレている様子はない。

ちなみにこのスーツは前の作戦で、製造所から奪取したものだ。それをナッツに改良を施してもらったものだ。

主にプレイヤー情報の偽情報表示化、ステルス機能、パワードスーツなどいろいろ付けてもらった。

おかげで足腰への負荷が減ったし、スパイ作戦においてもバレることが少なくなった。

なんだかんだナッツには助けられてばっかりだ。

しかし、1階での戦闘は数分ごとに激しさを増している。

2階への進出を食い止める為、他の参加チームたちが協力してエスカレーター前とエレベーター前を死守してくれているが、

突破されるのも時間の問題だろう。


Alphaの隊長が声をかけてきた。


「おい新人、あそこの1階に取り残されている子供が見えるか? 」


見ると、1階の広間に小さな子供が一人取り残されていた。確かにまずい。このままだと危険だ。

でもこれは攻撃を仕掛けるチャンスかもしれないな。


「救出に行ってくれ。このままだと危険だ。」


「了解であります!」


pu- pu- pu-…

「こちらSizuku、取り残された子供の救助と同時に作戦を決行する。

 楓、戦闘が始まったら援護頼んだぞ。」


「任せてください。無茶はダメですよ!」


エスカレーターで1階に降りると、激しい戦闘の中床に座りこんで泣いている少女がいた。

避難の際に親とはぐれたのであろう。銃声が飛び交う中、声をかけた。


「僕は味方だ。君、大丈夫かい? 立てる?」


しかし少女は泣いたまま首を横に振っている。とくに怪我をした感じもない。

足を触った途端、「いたああああああああああい!!」と泣き叫んだ。

ごめんねと頭を撫でながら、足を見ると足首が青く腫れ上がっていた。


「ナッツ、こちらSizuku。少女は足首を骨折している模様。どうしたらいい?」


ええええぇ; と言いながら、とりあえずこのままだと危険だし作戦が実行できないので鎮痛薬を打てとの指示。

ちょっと我慢してねと声をかけると少女は歯を食いしばった。

注射をすると同時少女はビクッとして泣き出した。でもこれで痛みは少し引くはずだ。

僕は泣いている少女にこの後のことについて簡単に説明する。


「いい? ここはとても危険だから一緒に外に避難しようね。耳栓をして。走るから僕のお腹に掴まって目を瞑っていてね。」


少女は半べそになりながらもちゃんと言うことを聞いてくれた。良い子だ。ナッツにはこの少女を見習って欲しいものだ。

準備ができた。用意していたロケットランチャーを取り出す。これはただのロケランではない。

ロケット部分がクラスター弾になっており火薬の量も最大に調整されている、運営側から使用禁止に指定されている

武器の改造武器である。


「おい、新人何をしている!? 発砲は違反行為だ! 直ちに戻って…それは!!?」


どうやら先ほどのalphaの隊長ことLGunは気付いたらしい。

ちなみに市民の避難はすでに完了している為安心してもらっていい。


「その武器は使用禁止指定のクラスターロケットランチャー…貴様、何をするつもりだ!! やめっ」


しかしもう遅い。


「 ” Fire in the hole〜!! ” 」


プシュ〜という音とともにロケット部分が垂直に飛んで行く。途端、ゴオオオオオオオオという轟音がした。

音により全ての窓が吹き飛び、すごい地響きが起こった。その場にいた敵部隊はほぼ壊滅状態になっていた。急いで戦線を離脱する。

交番まで走って行き警察に少女を引き渡した。警官は少し自分を疑っていたが、怪我をしていることと迷子とのことを伝えると、わかってくれた。

急いでモール内に戻る。帰り際、少女は「ありがとう〜!」と声とともに手を振って見送ってくれた。ちょっと胸が暖かくなった。


「こちら楓。作戦はうまくいきました。Sizukuの攻撃によりTHUNDERBOLTが違反行為をしたとして認識され、

BLACK RABB!Tと美味しいBOKUSOUの2チームは同盟を結びTHUNDERBOLTとの交戦を開始。

また、予定通り戦車、装甲車両もこちらに接近中です。無いとはお思いますが、万が一戦車がモール内に入って来たら厄介です。」


「ナッツだ、了解した。楓は外の車両を迅速に破壊しろ。最低走行不可にするだけでいい。Sizukuは引き続きモール内の敵部隊を掃討せよ。」


「「了解!!」」


モール内の敵は全部で60人近くいる。とりあえず外部からの侵入経路を断つところからだな。

リアルに爆薬を使って爆破するわけにもいかないし改造タレットを設置しようにも外部との侵入経路が

多すぎる為、一人では無理だ。何か方法はないか…何か…


そうだ!


「ナッツ! alphaの隊員全員に偽の作戦指示を流すことはできるか?」


「できるが、何をする気だ?」


「隊長のLGunに成り済まして、各出入り口付近にタレットを配置してもらうように指示を出してくれ。無ければ封鎖しろとな!」


「なるほど、一人が無理なら今いる20人を利用すると…いいだろう。

でも、中にいる敵はどうするつもりだ? 体力が少し心配だが、」


そう、いくら改造スーツとはいえこの量の敵を一人で相手にするのは無理だろう。

先ほどからステルスモードで倒しているが衛生兵が厄介だ。倒しても倒しても復活されてキリがない。

何か、ここにいる約60名の戦闘員をまとめて倒す方法…方法…毒ガス!


「毒ガス!? それはまだ開発段階であって完成してないぞ!」


「スモークだ。緑色のスモークを使う!」


「スモークなんかでどうやって倒すんだ? 頭でも撃たれかw? 」


「そんなわけあるか! 考えがある。」


このLightning shooterにはヘルメット及び、防護服を外したら即失格&ペナルティがつくというルールがある。

また、もしもの事態を考えて本物のガスマスク及び全装備防弾使用になっている。

安全のために作られたルールを利用するのである。

まず、俺が各階にスモークをばら撒く。同時にナッツにHUD操作でガスによる警告とガスマスクの機能不全のウィンドウを出してもらう。

敵部隊は初めてのガスの存在と安全の為に設計され付けられたマスクが役に立たないことにパニックに陥るはずだ。

もちろんスモークなので実際には体力ゲージは減らないし人体には何の害もない。

多分だが全部隊が一時撤退をするはずだ。しかし、出入口には先ほど設置したタレットが待ち構えている。モールから出る事はできない。

あとは上手く一点の場所に誘導できれば敵部隊を掃討できるという事だ。


「なるほどな..お前にしては考えたな。よしっ、それでいこう!!」


「こちら楓、装甲車両と新型戦車の破壊が完了しました。なお、一両だけ戦闘不可状態で留めておきました。鹵獲可能です。」


さすがは楓、優秀である。こちらも負けてられないが、


「よくやった、直ちに回収隊を向かわせる。楓はSizukuのサポートに回ってくれ。」


「了解です」



ー 2026年3月24日 23:23 サンシャインシティ内にて ー


まず二手に分かれてスモークを焚く。元の容器でバレる可能性があるので植木鉢や排気口などに隠して焚くことにした。

ステルスモードで様々な場所にスモークを設置して焚く。


しばらくすると一人の戦闘員が、


「お、おい! なんかガス見たいのが出てるぞ!!!!」


その声に他の隊員たちも慌て出し、


「本当だ! ガスだ! あいつらガスなんか使いやがって、卑怯者め!!!」


しかしそれはウサギと牧草の方も一緒で、


「ガスだ! THUNDERBOLTの奴ら、毒ガスをばら撒いてるぞ!!」


「逃げろ!! 撤退! 撤退だ!!!」


同時にナッツによるHUD操作が行われ、モール内は大パニックに。

マスクを外せばペナルティ&厳罰確定。しかし出入口には自分たちで設置したタレットが目を光らせている。

さらにここでナッツが偽司令官に成り済まし大嘘の命令を下した。


「直ちに戦闘を中止し、池袋駅方面へ退却せよ。Blaboチームが入り口で待機中だ。」


ナッツ、考えたな。この通路には隠れる場所がない為、倒しやすい。

次々と隊員が通路方へと退却して行く。残ったウサギと牧草の始末は楓に頼んだ。

通路を進む隊員たち、助かったと思ったのも束の間。防火シャッターが突如として閉まる。


「おい、何でだよ!! ここを開けろ!!」


隊員たちはいよいよ精神的におかしくなり始めた。

シャッターを開けようとする隊員たちを後ろから、偽装状態の俺は軽機関銃で殴り撃ちにした。

武器は楓に土下座して借りた『改造DP-28軽機関銃』である。特徴的なマガジンで誰もが一度は見たことがあるだろう。

”うわあああああああ”と叫び声が通路に反響しながら訳もわからずバタバタと倒れるTHUNDERBOLT隊員たち。

反撃する者もいたが、それも虚しく…


ー 2026年3月24日 23:45 サンシャインシティ 池袋駅方面の通路にて ー


・THUNDERBOLT alphaチーム 総員20名 撃破完了


ー ほぼ同時刻 サンシャインシティ バスターミナル方面の通路にて ー


・BLACK RABB!T 総員20名 撃破完了


・美味しいBOKUSOU 総員20名 撃破完了


また、『CHAR』と『土竜』の車両チームは撤退した。

及びCHARの開発した新型戦車の鹵獲に成功。

生態ピラミッド頂点争奪戦の優勝チームは我ら『super sonic』で終わった。

もらった景品の牧草は全国各地の農家に配り、肉は作戦成功のお祝いで食べた。


今回のイベントで起きた騒動はのちに『2026年度生態ピラミッド ガス事件』として語り継がれることになった。

というのも、今回の作戦で参加したプレイヤーのほとんどがPTSDなどの障害を引き起こしてしまいLightning shooter 運営責任者は

記者会見を開き謝罪。被害者には賠償金を支払いルール改正や装備の見直しが行われた。

また、THUNDERBOLTのalphaチーム内で自殺者が出てしまったことから、後にalphaの解散を発表。

色々な面に大打撃を与えることができた。が、もちろんネットでは『super sonic』に疑惑の目が向けられた。

でもメンバーたったの3人(戦闘員2人)で4チーム総員100名近くの撃破や撤退させるのは、流石に無理だろうとしてそこまで問題にはならなかった。

また、質問してくる者には適当に「芋っていたら生き残れた!!」と嘘をついておいた。


でもこれで終わりではない。

我々の最終目標は復讐と権利の奪還だ、それまでは戦い続ける。

でも今は…


「今回も作戦成功おつかれさまでした〜!! かんぱ〜い!」


「「乾杯!!」」


次の戦闘に備えて、英気を養おうじゃないか。



ー 終わり ー

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