使い魔です!
みお
出会い
第1話
今日、僕は人のパートナーになった。名前はテンだ。パートナーとは―人間たち、魔物つかい以外の人が付けた呼び名だが―使い魔のことだ。
その使い魔が暮らす魔物村で生まれ、風狼のお父さんと雷狼のお母さんと兄弟たちと暮らしていた。僕は風と雷の属性を持っているのでいつでもふわふわに広がっている。
僕のお父さんは、ここでお母さんと結婚する前は人のパートナーとなって冒険していたらしい。そのパートナーが死んで引退してここで暮らしている。その話を聞いて育った僕はいつか人間のパートナーとなって冒険に行きたいと思っていた。
ある日、魔物つかいの洗礼を受けた子どもたちが魔物村にやってきた。僕はまだ幼体なので、この中にはパートナーはいない。使い魔になることを希望する者たちが子どもたちに挨拶をしていた。僕は遠くからそれを見ているだけのはずだった。
ドキっ
一人の女の子と目が合った。お互いに目が離せないでいる。
あの子が僕のパートナーだ。
女の子が近付いてきた。
「この子が良い!」
女の子が一緒にいる大人に言っている。
「でもあの子は見るからに幼体だから無理だよ。」
そうだ。僕はまだまだ幼体だ。生まれて一年もたっていない。悲しくなり下を向く。きっとあの子は別の大人の魔物を連れて行ってしまうんだ。
目の前に影ができた。前を向くときれいな氷狼のお姉さんだった。
「あなた、あの子のパートナーになる気はない?」
「でも、僕まだ幼体で。」
「私が責任もって面倒見るわ。どうかしら、お母さん、お父さん」
お姉さんが、僕の両親に聞いてくれた。
「あの子なのかい?」
お父さんが言う。
「うん。」
「お前が選んだパートナーなら、他に取られる前に捕まえないと。」
僕は顔をあげた。
「お願いします!」
僕は氷狼のお姉さんに頭を下げた。
「はい。」
「お父さん、お母さん、僕、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
お母さんが僕の顔を優しく舐める。兄弟たちと鼻を合わせてしばらくの別れを交わす。お父さんと目を合わしうなずき合った。
そして、その女の子―リアーの方に向かって、僕は走り出したのだった。
今日、僕はテンという名前になった。
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