第677話16年ぶり

僕は園芸研究家。

チューリップから蘭、月下美人まで手掛け、中学生の頃は、松などの盆栽ではなく、カポックやボケなどを盆栽仕立てにして楽しんだ。

きっかけは、小学1年生の時のアサガオの栽培。

ツボミが膨らみ、咲くまでを夜中まで観察していて、咲いた時の感動は忘れられない。

始めて育てたのは、サニーレタス。

それから、夏野菜を中心に栽培し、10歳の時にアサガオの緑のカーテンを作った。

アサガオ栽培は28歳まで、18年間育てた。

ある日、午前中しか花がないアサガオが勿体ないと、夕方楽しめる夕顔を育て始めたのは16歳の時。

夕顔は、普通に種を蒔いても発芽しにくい。

だから、種にキズを付けるのだ。

そして、一晩水に浸け、翌日膨らんだ種だけを蒔く。 


名古屋に住んでからは、実家に帰った時に夕顔を蒔いていた。

しかし、仕事が忙しく種まきシーズンに帰れなくなり、28歳で種まきは終了した。


今年、あの夕顔の芳香が懐かしく感じ、5月に種を蒔いた。

そして、今夜、咲いたのだ。

16年ぶりの芳香に歓喜した。

今、1輪紙コップに水を入れて浸けている。

テーブルの周りが芳香に包まれる。

懐かしい思い出が浮かび上がる。

今夜は、16年ぶりの芳香を楽しみながら、ビールを飲む事にする。


本日の読み切りエッセイ、これまで!

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