第529話老婆

いつもの三嶋屋で瓶ビールを飲んでいる。

今、3本目だ。

僕以外に客は、じいさんとばあさんだ。

じいさんは、スポーツ新聞を読みながら、味噌煮込みうどんを食べている。

17時ちょうどに、老婆が入ってきた。

このばあさん、いつも1人でうどんを食べながら、瓶ビールの小瓶を飲んでいる。

僕はこの老婆を見ると、いつも悲しくなる。

どういう家庭状況か知らないが、いつも1人でうどんを食べ、ビールを飲んでいる。

これが、母だったら可哀想でしょうがない。

この、老婆に一度声を掛けて、一緒に飲みたいが、そこまでこの老婆は寂しい状況ではないかもしれないので、いつも遠目で見守っている。


僕もいつも1人だが、たまには母や、千茶、この前は弟家族をこの店に連れてきた。

冷やっこと味噌カツで瓶ビール3本飲んだ。

〆に親子丼を注文した。

じいさんは、食べ終わるとさっさと帰り、老婆はうどんと格闘している。

横顔を見ると、寂しそうだ。

いつものテーブルで、いつもの注文。

現代社会は、どうしてこんなに非情なのか?

僕は痛む左わき腹を押さえながら、ビールを飲んでいる。


本日の読み切りエッセイ、これまで!

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